『剪芽梨刑事シリーズ③千里眼・・・ストーカー』

138億年から来た人間

面割り

「きっかけは、あの男が私を痴漢から救ってくれた事でした。」



剪芽梨は、ストーカー被害を受けた女性に男の人相など詳しい事情を聞いていた。




1999年、3月1日。


大阪銀神町ぎんかみまちの公園トイレ裏で、男の変死体が見つかった。


撲殺だった。


警察は、この死体男性の素性を掴み、大阪のたこ焼きチェーン店チュー蛸店長、|浮


うきのうえロイドというアメリカ人だと分かった。


浮上は、警察データから、ある女性のストーカーであることが分かり、被害女性、|


蜜島みつしまうららに事情を確認していた。


「すると、2日前あなたは、東京の男友達のマンションに泊っていたという事ですね。」


「はい、私たち結婚する事になっていて、式場の予約やら、引き出物選びとかで到底大阪に帰れる状況ではなかったんです。本当です。」


「あっ、嫌々、疑っている訳ではありませんので。」


剪芽梨班は、彼女を星とは見ていない。


だが、何かしらストーカー事件に関連があるのではないかと睨んでいる。






「剪芽梨さん、あの女がってことはないでしょうか?ストーカー行為に腹を立て、その結婚相手と共謀して・・・」


「うむ、考えられなくはないが、蜜島うららの眼は、真実を語っていた。」


剪芽梨の、人の心理を読む感は、全国の警察組織の中でも定評がある。


「犯人は、がたいのいいアメリカ人を撲殺している。しかもあれは素手だ。厄介な星になりそうだな。」





1999年、3月3日。


銀神町の公園周辺をとしているホームレスから目撃情報を得た。


「見たんだな。本当に。」


「間違いねぇ、あの男の顔は忘れようがねぇ。」


ホームレスの男は、剪芽梨班、寺等而の聴取に悔しそうな顔で答えた。


「こっちが謝っても、容赦なく殴りやがった。あいつが犯人だ。あの顔は一度も忘れたことはねぇ。」


浮上ロイドが殺された前日、同じ公園で酷く殴られたという。


発端は、女性と歩いていたその男の前で、ホームレスの男が唾を吐いたからだった。


「違う!喧嘩売ったわけじゃねぇ。常夜灯に集ってくる小さな虫が口に入ってあわてて唾を吐き出しただけだ。」


殴った男は、言い訳するホームレスに馬乗りになって殴り続けたという事だった。


「面割り、協力してくれるな。」


寺等而はホームレスから許可を受け、次の日大阪府警に来てくれるよう頼んだ。






1999年、3月4日。


大阪府警に、ホームレスの男が訪れた。


手等而は、すぐさま男に詳しい事情を聞き直し、面割りと呼ばれる写真による顔認証


を行った。


「この中でお前さんを殴った人物がいるか?」


大阪府警察署内の応接室で、手等而は、被疑者と思われる男の割り出しを行ってい


た。


「こいつはどうだ。」


「違うなぁ。」


手等而は、鑑識から提出された犯罪者写真を次々にホームレスの男に見せていった。


「ちょっとでも似てると思ったら言ってくれ。写真は過去のものだ。容貌が変わっている可能性もあるからな。」


「あいつの顔は間違わねぇよ。あのつらは死んでも忘れねぇからな。」


ホームレスの男は、よほどの屈辱を受けたのか、自信満々に言い切った。

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