新魔王は男色好き〜勇者のオレが男ハーレムのリーダー?〜

楠本恵士

第1話・なぜか召喚?新魔王に気に入られてベッドイン

 オレの名前は『男神おがみ 勇者』……ラノベ好きな親から、勇者と名づけられてしまったが。

 特別に正義感が強いワケでもなく、幽霊部員でバスケをやっている、普通の男子高校生だ。


 特に親友でもなかった、勝手に親友のフリをしていたヤツが学校の階段を三階から一階まで転げ落ちて、首の骨を折って死んだ事故の葬儀も終った三週間後の今朝──オレのスマホに、死んだそいつからのラストメールが届いた。


『やぁ、勇者くん元気か……はははっ、オレは死んでしまったけれど。すこぶる元気だよ……学校で女子生徒の背後から承諾を得ないで、いきなりランバダダンスをして怒った女子生徒から「なに、背後から抱きついて腰を密着させているのよ! この変態!」そう怒鳴られて、突き飛ばされて階段を転げ落ちて首の骨を折って死んだオレは、異世界に転生しちまったよ……神さまに頼んで最後のメールを勇者くんに送ったよ。異世界の神がどんな姿かと言うと、ハゲで陰気で貧乏くさい服を……』


 メールの文章はそこから先は、文字化けしていて読めなかった。

 ランバダというのは、検索してみればヒットするけれど南米の官能的なエロい男女のダンスで学校では禁止されている。

 女性の背後から腰を密着させたり、対面で股の間に足を入れたりする踊りが校内の風紀を乱すというのが、禁止の理由だった……まぁ、そんなコトはどうでもいいけれど。


 オレは異世界転生した、親友でもないヤツに「おまえの、かーちゃん。おまえの葬式で一晩中泣き続けて、両目を腫らしていたぞ」とメールしたが、宛て先不明で送信できなかった。


「まぁ、死んでお気楽な異世界転生した、ヤツのコトなんてどうでもいいか」

 オレは、友だちでもないヤツの迷惑メールをさっさと削除すると、普通に学校に向かった。

 普通に授業をうけて、普通にシャワールームに入って裸で温水を浴びる。


 オレの学校では運動部に所属さえしていれば特権で、誰でも自由にシャワールームを使用するコトができた。

(異世界転生は一度、死亡しないといけないから痛くて苦しそうだな……転生しても赤ん坊からスタートで、前世の記憶が一生甦らない転生者もいるんだろうな……異世界に行くなら、苦しい転生よりも転移だな)


 そんなコトを考えながら、シャワーを浴びていたオレの耳に間近で奇妙な声が聞こえた。

「来たれ勇者よ、男ハーレムのリーダーになる素質の者」


 突然、温水が無くなったのにオレは気づく。

(あれ? なんか変な感覚……持っていたシャワーヘッドが無いぞ?)

 目を開けたオレは、見知らぬ石積み壁の部屋の中に裸で立っていた。

 壁には見たこともない、目の模様をした国旗が掲げられている。


「どこだ、ここは?」

 オレの足の下には、変な円形の模様が白い石筆で描かれている。

「なんだ、この円形の模様?」

 背中側に視線を感じで振り向いたオレは、仰天した。


 後方の玉座に座っている、美形男がオレの尻を笑みを浮かべながら眺めていた。

 牛の角が生えた動物の頭蓋骨を、膝の上に乗せて頬杖をした。

 金刺繍ししゅうが施された豪華な衣服を着た、その男がオレに向かって言った。


「ほう、わたしの前に堂々と裸で現れるとは……気に入った、見どころがある勇者だ」

 男の近くには、魔導士のような格好をした男たちが、数名立っているのが見えた。

 金刺繍の服を着た、男が角が生えた頭蓋骨を頭にかぶって、王の椅子から立ち上がって裸のオレに近づいてきた。


 男がオレに言った。

「わたしの名前は『シャルルーズ』この城の新魔王だ……ようこそ異世界に……どれ、品定めを」

 新魔王シャルルーズは、オレの体を上から下までじっくり眺めてから体に触れてきた。

 男に体をタッチされて、思わずオレの口から変な声が出た。

「ひゃあぁ」


「尻の形は申し分ない、ではさっそく……ベッドに運んで勇者の味見を」

 魔王シャルルーズは、オレの体をヒョイとプリンセス抱っこすると、そのまま隣部屋の寝室へと裸のオレを運び、ベッドの上にオレを下ろした。

(ひぇぇぇぇ!)

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