一章 「華」

第1話 募る不安

どんな花が好きか。

この問いである程度の人柄が想像できる。

例えば「薔薇」と答えたとすればその人は少し考えが足りていない。薔薇には様々な種類・色があり、数によっても花言葉が変わる特殊な花だ。もちろん、一般的には赤色を想像するだろうがそれにしてもだ。愛という不確定な要素を信じ、それには棘がついている。なんとも救われない可哀想な人だろう。

もちろんこれらは僕の持論で納得出来ない人もいるのだろう。だが、僕の中では深い意味を持つ。僕のような人がいることを努努忘れないでいただきたい。

* * *

青く広がるはずの空には割と水分の多い雲が陰らしている。折角の高校デビューの初日から湿気が多く、気分が上がらない。

原因は他にもある。

ー 男女比率だ。

家の近くの進学校に入学したのは良いものの、なぜか男子が少ない。大体1:6か7くらいには差が生まれている。これではこの先の学校生活に不安が生じる。所謂ラブコメ的展開が好きな男子は羨むかもしれないが。

女三人寄らば姦しいというが、既にある程度のグループを作っているらしく、何かと騒がしい。僕が救われたのは席が後ろの方だということだけ。左側は元々前後で仲が良いらしく、最初の方に「またあんたと同じクラスなの!?」と、聞こえた気がしなくもない。

右には活発そうな運動部女子って感じの人がいる。左と仲良くなったら板挟みでつらいな。前方には人形を沢山抱えている人がいる。少し怖いと思ってしまったのはきっと僕だけではないだろう。

高校初日からハードモード。無事にやっていけるのだろうか。

ー この後担任らしい人が来て入学式の概要が説明された。立つべき時に立ち、座るべき時に座る。なんともわかりやすい大雑把な説明だった。

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