《Rüstung-Sword》

バールのようなもの

騎士団起動編

第1話 転生と出会いとヒーローに憧れた人

俺はプラモデルが好きだ。

初っ端からこんなことを言った俺を変人と思うかもしれない。しかし、プラモデルというのは確実に俺の人生に多大な影響を及ぼし、生きる希望になったことだろう。

プラモデルに目覚めたのはいつ頃だろうか、いや、そんなことどうでもいい。とにかく俺はプラモデルが好きなのだ。

俺にとってプラモデルという存在は、皆が思い浮かべるあのまっすぐな道ではなく、多種多様で立体的なあれなのだ。

あの、プラスチックでどこまでも自由に作れる、創造性。あのまっすぐだったり、曲がったりしている、ランナー。俺はそれが好きなのだ。

しかし、ここまでプラモデルやらプラスチックやら連呼してたら、相手も、もうそろそろ用事を思い出しして帰って行くことだろう


だが、最後に言わせて欲しい、俺は自分の作ったプラモデルを動かすことが出来るなら、何でもしよう


その時の俺は、その願いが沢山の面倒事共に叶えられるとは思っていなかった


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季節が秋から移り変わり、だんだんと寒く、そして吐息も白くなっていく頃の暗く、星が輝く夜空。その中を1人歩いている男がいた。

その男の名は佐藤晴人。

現在絶賛仕事中の、ブラック企業に入社してしまった社畜だ。

こんな会社に出会わなければいい会社に入れたかもしれないのに。

もし彼がなろう系主人公だった場合、ここで無双しまくるのだろうが、そのような能力悲しいかな彼には無いし、ましてやなろう系主人公でもない

 そして、なぜ彼が外にいるのかと言うと、ストックのエナドリが切れたので、自販機に買いに行っていたのだ。もし、ここにいるのが悪い人だった場合、そそくさと仕事をバックれ(実際、10日間家に帰っていないので、めちゃくちゃ家に帰りたい)家に帰るところだろう

 しかし、彼はいい子なので、そんなことはしない。

余談だが、彼の家にはたくさんのプラモデルがある、ちなみに大半が作られていない。標準的なプラモデラーだったのだ。

「さて、戻るか」

彼はそうつぶやく。

道路の横に作られた、歩道を歩き、信号を少し待つ。

信号が青になると同時に、俺は歩き出す

彼はふと、横を見る。

そこには、二つの光があった。幻想的であり、機械的。そんな光がこちらに迫ってきている

否。それは、車のヘッドライトだった

そこから導き出される結論は、ただ一つ。車が、猛スピード迫ってきている。止まる気配もなく。

「.....嘘だろ」

彼がそれを理解するまでにかかった時間は、3秒。

その3秒は、車が彼に接近するのには十分だったらしく、次の瞬間には、一際大きなエンジン音と共に、晴人の目の前にあった

ドン

何かがぶつかるような音と、重く鋭い衝撃

彼は、自分に車が衝突したのだと自覚する前に、意識が漂白されていく

意識がなくなる中、彼が最期に思ったのは、仕事などではなく、家に残した、自分が作ったプラモデルたちのことだった


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異世界。それは、日本などという国もなく、一つ一つの国が完全に独立し、自由に国交を結んでいる世界線。その中でも、グレスグル王国という国に、晴人はいた

日本があった世界線のはるか先の技術を持っていながらも、どこか現代(日本があった世界線)よりも遅れている世界において、人類が空を差し置いて、宇宙へ進出した。その際に、人々は「そうだ!宇宙に住もう!」などといった馬鹿げた思考を持ち、人口爆発など起きてないのにも関わらず、宇宙に住み始めた。

その時作られたのが、人口惑星「オルト」。オルトは、宇宙という無限の大きさを誇る広大な土地と相性がよく、様々な大きさ、機能、場所をもつものが作られた。

さて、ここで魔力や魔法といった基本事項の説明をしておこう

この世界は基本的に魔力で動いている。原初の4元素ではなく、原初の1元素。その1元素というのが魔力である

その魔力というのは、自然や人、動物に元来から備わっている力だ

魔力は、自然の干渉により、地球において、4元素と呼ばれた炎、風、水、土に変化させることが出来る

これにより、雷や発火、突風などの自然現象は起こっており、地上の形状、山なども作られている

そして、魔力の存在を知った人類は、そのメカニズムを言語化した。それが「魔法構成プログラム」である。

そのプログラムは、人類にどんどん浸透していき、プログラムの定型ができていく、それが魔法である

人々は魔法が使えるようになり、研究をし尽くした

具体的には1日30時間くらい

それにより、先の4元素だけでなく、鉄、木、プラスチックなどを創造することをプログラムをいじることで可能にした

これにより、人類は最強生物、究極生命体になれたと思われた。しかし、人々に仇なす生物が表れた

その名は魔法生物「マリウス」

マリウスは、人類が持つ高度な魔法は持たないが、それを遥かに超越する元素攻撃を持っていた

人類はそれに圧倒的に蹂躙されるだけだった

だが、物語は起承転結。転が終わっていない

そう、人類は新たなる剣を手に入れた

魔力を媒介として機械を動かす方法を見つけたのだ

そして、1人の科学者が言った。そうだ、ロボットを作ろうと

そんな案によって生まれた、マリウスに対抗する手段。それが、ARである


そして、時は流れ

「よく死ななかったな」

「そうですね」

上空400mから落ちても無事だった謎の男の体を見る

その男こそが、佐藤晴人その人だった

医師たちが、発展してから500年以上たち、それなりに発展した技術を持ってしても解き明かすことの出来ない謎にたいし、もはや匙を壁にめり込ませる勢い投げる。

(それにしても、ここは一体どこなのだろうか)

いつの間にか、目が覚めていた晴人はそんなことをふと思う

彼が居る場所は、白い壁に、殺風景な部屋、病院を思い出すような作りをしている。

そこにいる医師たちは、ケモ耳がついた看護師や、耳が長いエルフのような人たち。だが、異世界のようなファンタジーではなく、SFのような近未来的なデザイン。そこが、ある意味異質だと言えた

そんな中、彼はこう考えた

(ならば、ここは、異世界なのだろう。うん。そう考えるのが楽だ。)

人はそれを考えるのをやめたと言う

(そうか、ここは異世界か)

清々しいほどの適当さだ

もしかしたら、ここまでの適応力がないと生き延びることのできない職場だったのかもしれない

異世界ならば、もう少し情報を集めたいところ

彼はそう思う

都合のいいことに彼の隣には、何も無い......。何も無かった。

仕方ないので、彼は己の記憶のみを頼りに、会話から、なにか得れないかを探してみる。

(思い出せ、佐藤晴人、何かあるはずだろう。ダメだ、クソ企業のことしか思い出せない)

悲しいかな、彼はいくら経っても、善良企業くそきぎょうのことしか思い出せなかった

(あの会社は、俺にとって大事な存在だったのか!?よくわかったよ、亡くなって初めてわかる大切さ。もう、二度とゴメンだけど)

「しかし、なぜARアルミュールと一緒に落ちてきたんだ?」

「さあ、あんな金属室のロボットと一緒に天空空落ちてくるやつなんてそうそういませんよ。バズーが空から女の子が!って叫びたくなるも頷けますよ」

彼は、医師から盗み聞き…..もとい、聞き

この世界には、アルミュールと呼ばれる、ロボットがあると知った

 (ロボットがいるのか、面白そうだな。

 ロボットが、いる

 ロボットが

 ロボット…….)

「最高じゃねえか!」

彼は思わず、飛び起きた

「!……起きてたんですか…….!」

医師が驚いた様子で、彼に問いかける

 (その不審者を見るような目は)

当たり前である

これまで意識がない状態で、急に飛び起きたら不審な目を向けない方がおかしい。しかし、この時の晴人はそんなこと微塵も思っていないようだ。だめだこいつもう手遅れかもしれない

「すいません」

「はぁ…..。と、とりあえず、あなたの容体から」

「はい」

「いいですか、落ち着いて聞いてください」

「はい」

「あなたは、ずっと昏睡状態でした」

「ええ、ええ、分かってます」

「どのくらいの長さか?あなたが眠っていたのは……..三日間です」

「………..」

(まさか、3日も眠っていたなんて)

 自分自身、激しく動揺しているのがわかる

「まずい!」

(冷静になろう。逆に考えるんだ。三日間眠っていただけだって)

彼は冷静になった。素数を数えて冷静になった。

というか、なぜ高度400mから落ちてそれを無視できるのだろうか

「平常になった……..」

「とりあえず、他は?」

彼は医師に聞く

医師は、少し動揺しながらも質問に答える

「えっと、上空約1200mから落ちて骨に少しヒビは入りましたが、それ以外は大丈夫です。この結果には、私たちも驚いています」

(なるほど、無傷、かどうなってんだよ俺の体)

やっとそこに行き着いたか

「まあ、あまり無理せず、休んでください」

「はい」

「それと、あなたと一緒に、ARが落ちてきたんですけど、心当たりは?」

「ないです。」

「なるほど。しかし、あの機体は、どこにも情報がないので、あなたの所有物ということになりますがよろしいですか。放棄することも……」

「いえ、大丈夫です!」

晴人これまで決して出たことのないような大きな声で、間髪入れず、ハキハキいった

「そうですか」

「あの、多少動くのに問題はない状態で?」

「ええ」

「なら、その期待というのを見せてくれません?」

「え?いいですけど……..」

大丈夫か?という目をしている

だが、そんなものは一切関係ない。

晴人にとって、ロボットを観れるというのならそれが本望であり、自分の体はどうでもいいのだ。

「お願いします!」

「わかりました」

晴人は医師の方に頼み込み、見せてもらえることになった

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晴人は、それをみた瞬間、“自分のものであり、自分のものではない“という感覚に陥った

もっと簡単に表現すると、自分のものになる、という感覚だろうか


そこには、一つの紅い機体があった。

腕と脚は赤く、白い装甲が、鎧のように配置されている。胴体は黒く、ところどころに赤い装甲が見えている。

頭にはニ本のツノがあり、目は二つツインアイ。マスクにスリットはない

 (まさに俺好み。ツノが四本だったらパーフェクト。だが、これがいい)

晴人にとって、少しでも自分で改造できる点が増えただけで嬉しいのだ

「素晴らしいな」

「そうですか?私にはよくわかりません」

「それでいいよ」

「はぁ」

「うっ」

ズキッと、こめかみが痛む

「大丈夫ですか!?」

「ああ、大丈夫だ。問題ない」

「ですが…..」

「大丈夫だから」

「わかりました」

ヴーーーーヴーーーー

「なに!?」

「ダニィ!?」

医師が叫んだので、晴人も叫ぶ

「一体なにが…..!?」

「どうしたんですか?」

「襲撃のようです」

「はぁ!?」

「せめて明日なら……」

「どういうことだ?」

「今は、全ての軍が、周りの地形調査で出払っておりまして……。戦える人がいないのであります」

「嘘だろ…….」

「なぜ今日なのだ……?」

 (どうすればいいのか。俺になにができる?なにもできないだろう?

 いや、その理屈はおかしい

 考えろ、俺。何か、手が)

「あった」

この状況を打破するための唯一とも言える策を思いつく。だが、それはあまりにも無茶で無謀で無計画すぎた

だが、今の彼にその手段を躊躇する思考はなかった

「へ?」

「この機体、使ってもいいか?」

「いいですけど、なにに使うんですか?」

「俺が乗る。迎撃する」

「!無茶です!あなたは動かせないでしょう?それに、出撃するには軍の許可が必要です」

「この国の危機なんだろう?それなら、とやかくいっている場合じゃない」

「ですが!」

「俺が、どうにかする。できるか?じゃない。やるんだ」

晴人は、はっきりとそう言う

彼には、この国を助けるなどという義理はない。だが、彼は昔からヒーローに憧れていた。そして、いつしかそうなりたいと願っていた。

だからこそ、彼はこの国を助けるという、義務を負えたのだ

「わかりました。この機体、使ってください。ただし、条件があります。」

医師は彼の覚悟が伝わったように、頷く

「どんな条件でも呑む」

「絶対に死ぬな」

「善処する」

そう答え、彼はその機体に乗り込む。

「さあ、いくぞ!」

壁を無理やり破り、半ば強制的に初出撃を遂げた

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