第167話 時間と空間の魔宮

 ダンジョンは誰が作ったのか。

古の賢者達が研究を重ねていたが、結局謎は謎のまま。


 しかし、共通する部分がある。

ダンジョンの階層は其々異なるが、最奥には必ず秘宝が眠っており、それを護るダンジョンボスが存在している。


 ダンジョンボスを倒すと、祭壇に浮かんでいるコアの様な結晶体が砕け散り、秘宝を手にする事が出来る。


 勿論、秘宝はダンジョンの難易度が上がれば比例して価値は上がるとされる。


 秘宝は最低難度のダンジョンであれば、ただの魔石の様なクズもあるが、S級ダンジョンであれば魔法の威力を2倍に上昇させる宝具も存在する。


 人々は夢を見て、人生をダンジョンに賭ける者も多いが彼らは知らない。


 ダンジョンとは

外なる神の暇つぶしと同時に、彼らと対する為の秘宝を隠す為に存在している事を。


 『支配者の苦楽園』

それがダンジョンの別名である。


          ✳︎


 「ここが……。成程、面白そうだね」


 目がおかしくなるほどにダンジョン内の景色、様相が歪み、空間、時間感覚が狂うのが分かる。


 星の様に輝く光があちらこちらに見え、同時に夜空の様に暗く、金時計の様な物が存在する。


 「これはただの人では気が狂うか。いや、心が壊れるねぇ」


 人では攻略は以ての外、立っているだけで体感時間が狂わされる。


 急に引き伸ばされたり、縮められる体感時間に体と精神は着いて行けず、簡単に心が疲労し壊れてしまうだろう。


 カチッカチッと規則的に鳴る金時計の長針の音が空間に何か作用しているのかもしれない。


 『超次元転移』を使おうとしたが、このスキルは何故か発動しなかった。


 「外なる神……本当に気に入らない。やっぱ俺くんがギッタンギッタンのボッコンボッコンにしてやる」


 地団駄を踏み、某ジャイ○ン的なムーブを披露するヴァルトメア。


 「時間の概念には闇ちゃんの力も役立たずと………」


(ヴァルくん、役立たずってひどいお)


 「ごめんて闇ちゃん。言い方間違えた。闇ちゃんの力はあんまり都合が良くないねって……」


 (その言い方もひどいおー)


 「まぁ似た様な意味だしね。じゃあどうしようかねぇ。これしかないか」


 『超時空結界』を発動するヴァルトメア。

今回はすんなり発動できた様だ。


 結界を体に張り付かせ、外界からの干渉を遮断した。


 「おぉ! 感覚が戻ったよ。これなら気分良く冒険出来るってもんだぜぇ。冒険者メアいっきまーーっす」


 何処までも続く夜空の中をテクテクと歩いていると、先ほどまでは何も無かった場所に、片目義眼の執事然とした老いたゴブリンがいた。


 「初めての攻略者デスネ。最奥にてお待ちしておりますよ」


 お辞儀をして転移する執事ゴブリン。


 「なんだあのゴブリン。ゴブリン亜種? 希少種? 是非とも討伐してみたいもんだねぇ」


 そのまま更に奥に進むと光の階段が見えた。

地下へと降る為の真っ白い光で造られた階段。


 下を見ると何やら蠢く黒い蛇の様な化け物が見えた。


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【這い寄る黒】[SSS]

レベル:25,000

戦闘力: 9,000,000

HP: 19,000,000/19,000,000

MP: 9,000,000/9,000,000

ATK:5,000,000/5,000,000

DEF:8,000,000/8,000,000

INT:2,000,000/2,000,000

RES:45,000,000/45,000,000

SPD:999,000,000/999,000,000


【SSS級スキル】

『神速』『絶牙』『暴食』『黒死毒』『万眼』

『蠢く醜態』『愚王の威圧』『死麻痺毒』『毒の王』『毒完全無効』『這い寄る闇』


【神魔法】

『闇属性魔法』[第十三位階]


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 「これは人では倒せないね。最初からEXダンジョンは人には攻略出来ないように作られている?」


 (外なる神の嫌らしい所ね。異形の神なんてそんなものよ。旧神もその嫌らしさに苦戦したのかしら)


 「かもねぇ。とりあえずやっちまうかぁ」

 

 神光属性第十八位階魔法

『神ノ十字剣』


 巨大で美しい光の十字剣が十本。

ゆっくりと回転し漂っている。


 「行け」


 蠢く黒い何かに突き刺さると同時に、物凄い光に怪物は叫び声をあげる。


 浄化の光に、こうかはばつぐんだ。


 蠢く黒は消え、二階層は攻略となった。


 「そういえばコウくんはまだ眠ってんだね。いつ起きるんかね」

 

 (それはわかんないお。私が起きたからシンパシーで起きるはずなんだけどね。ヴァルくん嫌われてんじゃない?)


 「え? ナニソレやだ。…まぁいいか」


 切り替えの早さが売りのヴァルトメアは瞬時に思考を切り替えると、次なる光の階段を降りて行った。

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