第145話 魂食樹霊
バレリアは怪しくも樹国の幹部である謎の女性に着いていく。人の恐怖心を煽る様な暗く深い樹海をひたすらに歩いていく。
ただただ広い。すると前を歩くゴスロリ衣装の女性(ヘル)が立ち止まる。
「ん。ここからは少し危険。私と居れば大丈夫だけど、離れたら魂を吸い取られる」
「えぇ? 魂? そんな化け物みたいな魔物はダンジョンにも居ないけれど……」
周囲を目で確認しても、気配察知スキルを使用しても何も感じない。
「い、い、一体何がい、いるのですかぁあああ?」
またしても震えて上手く話せないアリアナ。
顔は真っ青になり、帰りたい雰囲気満々。
「ん。彼等の名前は『
「そ、その『
「ん。彼等は主人の闇の魔力と植物の力が混ざり合って出来たバケモノ。際限の無い食欲と異常な攻撃性が特徴。貴方達では彼等の食べ物になって終わり」
「ふん。私らだって人間として最強クラスよ? 戦えば分からないじゃない」
「ん。貴女は彼等の力を知らないから言える。闇の世界の住人である彼等は私達でさえ少し相手をするのは面倒くさい」
バレリアはヘルとの力量差を理解している。
逆立しても敵わない。奇跡が起きようともなす術なく殺されるのは明白。
そんな彼女が面倒くさがる相手。
しかも彼等と言っている事から、一体では無く、複数。下手したら………。
「ど、どれ程の数がいるの?」
「ん。それは分からない。彼等はまだ増え続ける」
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『
•ヴァルトメアが闇の魔力と植物の力を勇者の遺体と掛け合わせて創造した全身漆黒の霊型の化け物。人々の魂を喰らい、糧にし、増殖していく。実体は無く、不思議な存在。
膨れ上がった性欲が食欲に変換されたようだ。
最終的にヴァルトメアの経験値となるように仕組まれている。
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「ん。彼等は勇者の成れの果て。それだけは教えてあげる」
「勇者……それは「ん。もうすぐ転移する」」
何かしらの準備が終わったのか、歩くのはここまでの様だった。
景色が一瞬で入れ替わる様に、不思議な体験をした二人。
「ぐ、グラつくな。これが転移。最高難度の魔法」
「も、もっと、帰れなくなっちゃいましたよぉおおお」
泣き顔のアリアナ、困惑するバレリア。
二人が見た景色は今までの風景とは全く違う物だった。
エルフがそこら中に居る。
皆の背中には白い翼が生えており、まるで天使族の様な見た目だが、本当にエルフに翼が生えているだけという感じだ。
ダークエルフもまた黒い翼が生えており、彼女らもまた同じようだ。
そして大きなウッドゴーレムがあくせく働いており、街は美化され、自然に囲まれたこの都市は最高峰の癒しの空間となっている。
色々な植物が生え、美味しそうな果実が実っており、鳥や動物がそこら中に住み着いている。
「天国かここは。なんと美しい街なのだ。エルフ同士で商いも行っているのか。肉は………魔物の肉か。いや、これはドラゴンの肉?」
露店で売られているのは竜種の肉。
祖国でも滅多にお目にかかれない高級品。
バレリア自身が狩りにいくしか食べられる方法が無い。そんな高級肉に涎が溢れてくる。
「えぇ!? こんな最高級品種が何故ここに?」
「ん。竜種は家畜化してる。龍穴と実力があれば簡単。卵を産ませて龍穴から出てきた龍気を浴びせるだけの仕事」
「それは難易度Sだろう。そんな日雇いの仕事みたいな言われ方しても納得出来ないんだけど、マジ何なの樹国」
「ん。他にも貴女達の国には無いような珍しい果実や薬、鉱石や燃料だってある。これも全て主人のお陰」
「は、ははは。対立しなくて正解だったわね。こんなの冒険者ギルドなんて要らないじゃない。何が支部を作ろう…よ。強みにすらならない悪手な提案ね」
「ん。着いた。ここは天空樹のお膝元。地上の楽園を管轄する場所『システム:ゼロ』」
大いなる神樹。
ここに神気と龍気を地上に巡らせている龍穴があり、その制御を行なっているのがエルフと神樹、通称『ゼロ』。
(魔王と邪神に寄生した植物の集合体)
もちろん、邪神と龍の残り滓がここに捕らわれており、上手く活用されている。
「膨大な力を感じるな。もはやここだけでも世界の何カ国かのエネルギーを賄えるだろう」
「ん。ここの魔力は無限に出る。でも龍気と神気は別。貴女達にはこれを見せた。これを見て歯向かう気が無くなるから。と主人が言ってた」
困り顔のバレリア。白目を向くアリアナ。
「そ、そうね。流石に勝てそうに無いかな。ってかマジオーバーキルでしょ。もう辞めてお願いだから」
システム:ゼロの一室に入る三人。
かなり広くて豪華絢爛な内装に少しビクつくアリアナ。
「ん。そろそろ主人(最後の分体)が来るから椅子に座って待ってて」
広いテーブル、椅子に腰掛け待っているとヴァルトメア王がやって来た。
「やぁ君が冒険国の王だね。あそこは楽しい所だねぇ。俺くんは『ヴァルトメア』。それで何をしに来たのかな?」
鋭い目で二人を見ると、アリアナは泡を吹き倒れた。
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