第99話 絶滅カウントダウン-5
時は遡る。
帝国の首都には帝国十二聖将五名が守護する。
人族の中では傑出した実力を持ち、国民からは信頼されている。
「おー、アルマよぉ。どうよ調子は」
ニコニコと近づいてくる男の名は『黒血』パルス・フルール。
スキル『血王』を使いこなす聖将の一人。
「パルスさん、久しぶりですね。まぁボチボチですよ。というか持ち場はどうしたんです? 皇帝陛下に叱られますよ」
ポリポリと頬をかくパルス。
「いやまぁ敵が来る気配ないじゃん? 暇なのよ。どうせ俺らなら蛮族相手なら余裕だろ」
「そんな隙だらけだと民達を護れませんよ。僕らの任務はこの都市の守護です。僕らの力を見せる事で国民に安心してもらうのが目的ですよ」
「全くお堅いな。真面目過ぎ」
「パルスさんが不真面目過ぎなんですよ。とにかく持ち場に戻ってください」
辟易とした表情のパルス。
「はいはい。分かりましたよ〜。ったくそんな真面目で息が詰まるっての」
「パ、パルスさん」
「あ? なんだよアルマ、もしかして本当は俺と話したいとか?」
返事がない。
アルマの顔を見ると恐怖に染められ、その小さな体からは汗が噴き出ている。
「空が…」
振り向くパルスの目に衝撃の光景が映る。
「なんだよアレ…意味わかんねぇよ」
二人が見た空には巨大な真紅の炎玉が無数に浮かび、まるで流星群の様に帝国首都上空に今にも降り注がんとしている。
「アルマ!!戦闘態勢!!」
「はい!!生半可な魔法やスキルでは対処出来ませんよ!!初手から全力でお願いします!!」
「おうよ!!スキル『血王』、俺に力を与えろ!!」
パルスの全身を魔力、闘気、生気、聖気がめぐる。生きとし生けるものに力を与えるそれらはパルスの身体能力、抗体、防御力を格段に底上げする。皮膚は荒れ狂う血脈に黒く変貌していく。
湯気が全身からまるで機関車の様に立ち上り、心臓が強く激しく鼓動する。
「秘技『黒血』。アルマぁ!!俺はこのまま炎玉を叩き潰す。サポートを頼むぜ」
「『虹才』の名にかけてやりますよ。支援属性第七位階魔法『能力全上昇』」
全てのステータスを上昇させる魔法を発動し、自身にもかける。
「殴り飛ばすぜ。血王武技『
圧倒的身体能力で空に飛び上がり、空中にて連続して拳を放つとその威力によって爆発力を生み、凄まじい威力の空気圧が炎玉を破壊するに至った。
「まだまだァ!!オラオラオラオラァ!!」
「水属性第七位階魔法『水竜』」
空にあった無数の炎玉が二人の力により、次第に数を減らしていく。民はその光景を見て絶望から反転、希望を見出し、二人を応援し始めた。
「がんばれパルス様ぁ!!アルマ様ぁ!!」
「負けないでぇ!!」「流石だぜぇ!!」「神が遣わした使徒様だ」「ありがたやぁありがたやぁ」
「力になるぜ!!これで最後だ!!オラぁ!!」
最後の炎玉を消し飛ばすと、安堵の空気に包まれる。
「さっきのは魔法か? アルマ何か分かるか?」
「えぇ恐らく火属性魔法の高位。僕達じゃなければ対処不可でしょうね。けれどまだ犯人は殺してはいないですよ。恐らく近くに居ます。油断しないでください」
「あぁ分かってる。だがこのレベルの敵なら何とかなる」
「えぇ。一応支援魔法は重ねがけしておきます」
周囲を油断せず見渡す二人。
民は逃げる事もせず、二人に羨望の眼差しを向ける。
「えー。焼き死んだと思ったのに。僕の魔法の中でもかなり弱いとは言え人間なんかには防げないと思ったんだけどなぁ」
「狼…」
白毛の巨狼が近づいてくる。
その圧倒的な存在感に二人は視線を外す事は出来ない。
「殲滅が命令だからね。大人しく死んでね」
巨狼は口を開けると、口の中には白き極小の炎が圧縮に圧縮を重ね、暴走寸前。
「いくよ。『白炎の世界』」
放たれた白炎は彼等や国民の前まで進んでいく。あまりにも遅くて逃げる事も可能だったが、そんな速度の魔法が強いわけがないと思ってしまった。
ポワポワと浮かぶそれはやがて大きな振動を呼ぶ。圧倒的な高温は圧倒的な振動を生む。
ギュイイィイインと物凄い爆音と共に、小さな炎の塊は音速を超え、広範囲に拡がっていく。
一瞬の出来事。
アルマもパルスも帝国民、帝国兵諸共、首都の四分の一を灰すら残さず焼き尽くした。
「あっ。いっけない。植物は燃やしちゃだめだったんだ」
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