第23話 魔王:邪龍ヴリトラ

 我は今代の魔王である邪龍ヴリトラ。

魔力が濃く、数々の強者が生まれるこの樹海で最強の存在である。


 龍としてこの世に生まれ、そして生まれた瞬間から最も強い者としての運命が決まっていた。


 全ての生き物は我に跪き、へつらい、その生涯を以て尽くすのだ。


 ついこの間も我の力を感じ取れない愚かで醜い弱き者が楯突きよった。


 真なる強者である我のブレスによってこの世から消してやったがな。


 強き者とは退屈なものだ。

何せ敵が居ない。そして我に見合うだけの優秀で美しい雌もおらん。


 退屈な日常を過ごし、早くも千年の時を刻んだ。


 その間も弱き者の相手をしその存在ごと喰らい尽くした。

 我の相手になるとしたら東の巨狼、北の不死鳥、南の大陸亀くらいのものだろう。


 我が思いつく限りはその三体のみ。


 まぁいずれこの樹海から出て、下等な人の国も魔物共も殺戮し尽くすがな。


 その前に少しだけここの魔物共で暇つぶしでもしていよう。


 と思っていた。


 奴が現れるまで。


 奴はこの我からしても、異質、異常。

強さもこの我より遥か高みにおると見えた。


 この我がこの様な醜態を晒すとはこの時はゆめゆめ思ってもいなかった。


 奴は掌に胡桃ほどの大きさの植物の種子を大量に作り出し、地面へと落とした。


 その瞬間に種子は発芽しみるみると成長した。


 訳も分からない程の成長速度に目を疑ったがまさかたかが植物が我をこの様な存在へと変えるとは思わなんだ。


 我の生涯は奴の為に存在し、奴に死ぬまで利用され続けるのか。


 屈辱的な仕打ちに怒りが湧き起こるが、もはや手も足も出せない。


 誰か奴を殺してくれ。


 我が理解不能のままこの様な苦痛極まりない状態にする奴を倒せる者など存在せぬか。


 どうすればこの地獄から助かる事が出来るのか。


 考えても考えても良い案は浮かばない。


 我の龍生は終わりを告げた。



 


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