第20話 王国ラルシェル
樹海より遥か東。
聖皇国の隣国、小国である王国ラルシェル。
つい最近まで聖皇国と宗教戦争をしていた国であり、飢餓と病で疲弊し切っている国である。
王室。
国王であるルーク・オルク・ラルシェルは、頭を悩ませていた。
曰く、樹海へ行ったS級冒険者パーティが樹海での冒険から命からがら逃げ帰ってきたとそして、死生樹アダムの果実を採取する依頼を達成できなかったとの報告があった。
王の見込みではアダムの果実を食べ、不老となり、永久にこの国の民を導く。
そんな夢物語を思い描いていた。
良い女を抱き、王という最高の地位が約束され、のうのうと楽に生きていく。
王というのは重大な責任を伴うある種、ハズレくじの様なモノ。
平民や貴族は自分を守る為、養う為の道具に過ぎないと考えている愚王そのものである。
導く民を蔑ろにし、導いているつもりの勝手極まりないクズ中のクズ。
それが今代の王である。
しかし、そんな王も冒険者ギルドという国際的な組織の前では萎縮せざるを得ない。
S級冒険者パーティといえば、冒険者ギルドのエリート中のエリートである。
依頼の失敗に関して、咎めるべきか許すべきか己の保身を賭け、絶賛悩み中である。
「王よ。そんな簡単な依頼もこなせない冒険者なんて死刑で宜しいのではないかと愚考します。」
愚王には愚かな宰相が付きものである。
「宰相、そうはいかんのだ。冒険者ギルドをこんな小国が勝手をして、王国内の冒険者ギルドが撤退してはどうするのだ。」
「そんなもの我が国の兵どもにやらせれば宜しいのでは?」
「聖皇国との戦争でかなりの人口が減った末、兵も碌に増えておらんのだ。冒険者まで居なくなったとあらば、兵では魔物の討伐は追いつかないであろう。」
「王よ、王国の周辺の魔物はそこまで強くありません。平民共を安い金で雇い国を守らせるのはどうでしょうか。」
「それだ!!宰相すぐにその様に手配を。冒険者ギルドは運営費を寄越せと煩いだけの存在となる。即刻、この国から追い出し、例の冒険者パーティを死刑にせよ。」
ラルシェルの最期は刻一刻と近づいている。
「死生樹アダムの実は我が騎士に採りに行かせよう。騎士団長を呼べ。」
10分後。
「騎士団団長アグナス。御身の前に。」
「おぉやっと来たか。早速だが、遥か西の樹海へ死生樹アダムの実を騎士団団長自ら採りに行ってきて欲しいのだ。」
「アダムの実ですか…。我が王の命とあらば。支度が終わり次第。騎士団を率い行って参ります。」
「おぉ。行ってくれるか。期待しておるぞ。国の守りは残りの騎士団と我に任せよ。」
「はっ!!では行って参ります。」
この瞬間、馬鹿な聖皇国と馬鹿な王国の滅亡が確定した瞬間だった。
騎士団30万を率い、樹海へと向かった。
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