謎の石板のせいで見知らぬ土地に転移したらしい
牙野 木奥
第1話 神隠し?
今日も授業を終え、これから帰るというところで友人が話しかけてきた。
「なぁなぁ、ヒビキ! コレ見てくれよ!」
「なんだようっさいな。……なんこれ」
【速報! また神隠しか!?】
『10月14日更新』
またコイツは変な記事ばっか見せてくる……。
「いやー、さっき授業中に見つけたんだけどよ? 気にならね?」
「ならねぇ。大体『神隠し』なんてただの行方不明だろ?」
てか授業中にスマホ使ってんじゃねぇよマサヒコ。サボるな。テスト大丈夫か?
正門を出て歩道を歩く。
「違うんだな〜これが!」
「何がどのようにどう違うってんの?」
「フッフッフ……」
「はよ言えや」
今ので半分以上興味がなくなり、横を通る車を横目にただ歩く。
「実はこの『神隠し』事件はな……解決した事件がひとつも無いんだ!」
「いや、行方不明事件ってそういうもんじゃねぇの?」
「まだあるぞ!」
「聞けよ」
「現場には毎回同じ『謎の石板』の目撃情報がある! ちなみに写真これね」
「まさかのオカルト!? てか何だその…石板? 信憑性ねぇだろ……」
はぁー、ねみー。
「信じてないなさては〜」
「当たり前だ。『神隠し』なんてナイナイ」
「えぇ〜……じゃあ最近見つかったっていうオーパーツの話する?」
「オカルトマニアか? 科学の話はしねぇの?」
「ポ○モンの話でもする?」
「それならする」
◆
友人と途中で別れ、海をバックに鼻歌を歌いながら一人で帰る。
「〜♪ 〜〜♪」
さっきゲームの話をしたからかな。早く家に帰ってゲームがしたくなってきた。
自然と歩みが早くなる。
……そういえば、オーパーツがどうとか言ってたな。
そんなもんあるのかね? まぁいうて、五重塔の真ん中の柱みたいな感じだろうな。あれすげぇよな。
ふと違和感を覚える。
普段に比べて人が少ないように感じて振り返る。
誰もいない、か。
珍しいこともあるもんだな……なんか不気味だけど。
そして再び前を向いたときに、それは現れた。
コンクリートを貫通して、地面から鉛色のプレートが生えていた。
マサヒコが見せてくれた写真の石板……!? さっきまで無かったよな!? 一体全体どうなってやがる……。
てかデカイなコレ。オレの身長より高いし、ちょうど2メートルか? いやでも、地面から生えてんのかコレ? だったらもっとあるか……。
普段ならスルーして帰るようなところだが、マサヒコの話に出てきたモノが目の前に現れた事で興味が湧いた。
とりあえず写真撮るか、とカバンからスマホを取り出してカメラを構える。
─パシャ!
…ピントズレた。
もう一度撮ろうとしたところで、スマホが手から落ちた。
「あちょっ…!」
コンクリートはヤバい!
咄嗟にキャッチしようとしたが、手は届かなかったため足でどうにかしようとした。
その結果、石板の近くに蹴っ飛ばしてしまった。液晶画面は割れた。
うーわ、最悪。
そうして落ちたスマホを拾うために、石板に手をついた……ところまでは覚えている。
◇
全身に掛かる激痛で意識を無理やり覚醒された。
「ぐあぁぁぁ!?? あッ…うぐぅぅォォあ!?」
痛い痛い痛い! 死ぬ死ぬ死ぬって!!
どういう状況なの今!? 麻酔無しの手術でもしてんの!? 目もよく見えないし!
「痛いッ…! 誰かッ…!!」
なんなんだよコレ!? 体の内側が痛い! 骨か!? それとも筋肉か!?
自分の身に何が起こっているのか理解できないまま、10分程が経過しただろうか。
ようやく痛みが引いてきて、周りを見る余裕が出てきた。
「ゴホッゴホッ!! おえ……森? てかなんか声高くねェか?」
女の子みてェな声になっちまったな……。喉やられたか? 普通はあんだけ叫んだら喉潰れて低くなりそうなもんだけどな。
近くの木に背を預け根に座り、呼吸を整える。
…て、そうじゃねェ。周りがどう見ても森だ。どこだよココ。ウチの近くの森…か? いやわかんねェけど。
うわ、土と草で服めっちゃ汚れて─
「うッ…!?」
あ、頭が痛てェ……。
な、なんだ? 『回復』…? 『浄化』…? 『収納』? ゲームみたいにスキルか魔法? 今のオレはそれらを使えるみてェだが…?
あーもう意味わかんねェ! 知らない情報を頭に流しこまれてんのか? これは。気持ち悪ィなァ。存在しない記憶ってやつか?
「はァ…はァ…! イラつく…!」
くそッ、今日は厄日だな。なんだかヤバいことに巻き込まれた気がする。警察と救急だなこりゃ。いや遭難としてレスキューか?
ま、どちらにせよスマホスマホ……カバンが
『現場には毎回同じ『謎の石板』の目撃情報がある! ちなみに写真これね』
…………いや、まさかな。
『神隠し』なんてのはただの行方不明事件のはずで……そんなオカルト染みた事なんて……。
いやだが……なら、この『回復』とかの情報はなんなんだ?
…落ち着くか。深呼吸。
「……ふー」
まだ頭痛ェけど、とりあえず『浄化』とやらを学生服にでも使ってみるか。
成功したら万々歳、失敗したら厨二病乙ってとこか。もしくは精神科。
使い方は流し込まれたからな。『浄化』、と。
……マジかァ。
右手が触れている土だらけのズボンから、土だけが地面に落ちて綺麗になった。
ファンタジーもしくはオカルト。大穴でSFってところか。
非日常って、意外と近くにあるもんだなァ。
近すぎてちィと怖ェけどな。
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