第20話 4度目のクリスマス・イヴ⑥

 にゅぷ、にゅぷぷ――


 締め付けが激しくなる度に、僕は頭がおかしくなりそうになった。


「うっ……あっ!」


 壁際に追いやられたまま、竜胆に唇を奪われた。


「んっ♡ ちゅ♡」


 舌を強引に入れられた僕。彼女の唾液を無理矢理飲まされると、ツーッと涎の橋が出来る。


「どう? 私の唾液ブリッジ♡」


 ……キメェ名前だと思う。


 口には出さなかったが、竜胆は表情から何か勘付いたのだろう。


「ふぅん」


 目を細めた彼女の腰遣いが、より一層激しくなった。


 左回転、右回転の後、ピストン運動――


 ぱちゅ、ぱちゅっ。と、ヤらしい音とともに、右側頭部に「サワサワ」する感覚が起きる。


――アッ、やばっ……。


 例のあれが、火山の噴火みたいなもんで、我慢出来なくなってきたのだ。


「竜胆、やばい、やばい、やばいっ!」


 彼女に離れるよう促すが、竜胆はニヤリと笑いながら、宣言した。


「嫌だッ!」

「なぁ、頼むから! ど……ウッ!」


――アァァァァァァッ!!!


「きたっ、キタキタキタキタキタキタキタキタァァァァァァ! 春一の! 春一のが、アァァァァァァァ♡」


 懇願もむなしく、竜胆の腰が浮くことはなかった。


 というよりむしろ、僕の肌とより密着する形を彼女はとった。


 ××無し。しかも、ナカ。


 これで危険な日だったら、目も当てられない。


「竜胆――おまえっ!」

「春一♡ まだおっきしてるの? すごいね♡ そんなに赤ちゃん欲しいんだね♡ いいよ♡ じゃあ、今度は本気だすねっ♡」

「むごっ……!」


 ねっとりと、絡みつくように、またキスが始まる。


 蜘蛛みたいな格好でまたがる竜胆は、カリカリと僕の乳首を擦る。


「うっ……はっ!」

「春一、愛してる♡ 愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる――」


 愛してる。という言葉の数だけ行われるピストンの最中のこと。


 メッセージを受信したんだろう。スマホが、「ピコンッ!」と音を立てた。


「なに?」


 竜胆の動きが止まる。


――た、助かった。


 暴発を避けることができたのは、僥倖だった。


 しかし、そこで新しい問題が起こる。


「春一のスマホだよね? 確か、ズボンの中に入れてたっけ? 私が代わりに見てあげるね♡」

「は? なんでだよ?」

「その体勢でスマホ取れるの?」

「離れてくれたらなっ!」

「ん~。それは、ム・リ♡」


 だから、代わりに見るね。


 跨がったまま、彼女は右斜め後ろに捨て置かれたズボンを手に取った。


 ぬちゃぁ。


「ウッ」


 彼女が動くと、先端が擦れる。


 思わず発射しそうになるのを堪えると、竜胆は「えっ……」と、声を漏らした。


 何が書かれていたのかは分からない。


 ただ、竜胆が憤慨していることだけは、分かった。


「チッ……。さいあく」 

「竜胆? どうしたんだよ?」


 舌打ちし、爪を噛む竜胆。しかし、彼女はすぐに取り繕う様を見せた。


「ううん♡ なんでもないよ♡ でも、ちょっとを展開しようかなって♡」

「方針って……?」

「こっちの話だよ♡ ちょっとだけ、退くね♡」


 ぬぷぷっ♡


「あっ……♡」


 肌の密着が解かれると、軽くイってしまう。


 ポタポタと、竜胆の下半身からは、液体が垂れていた。だが、彼女はそれを無視し、すぐさま机の前へと立った。


 僕はというと、ただそれをボーッと眺めることしかできない。


 流石に、これだけ長時間我慢していると、体力的にも精神的にも辛い。


 てか、腰が痛くて、思うように動けん……。


 腰をいたわっていると、竜胆が「大丈夫?」と僕に声をかけた。


「ん? あぁ……だいじょ――」


 首筋にひんやりとした感触が当たる。それが金属の冷たさだと気付いたと同時、激痛が起き、脳味噌がグラリと揺れた。


 バチチチチチッ!!!


――ごがっ……。


 視界が暗転し、僕の意識はそこで途絶えた。


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