ブラック・ヒストリー

一ノ瀬 夜月

後悔Max

 「へぇ~、カクヨムの八周年を記念して、色々なイベントを実施するのね。」


 スマホでカクヨム運営からのお知らせを眺めながら、私は独り言をつぶやいた。


 次に、イベントの中でも一際目を引いた、【黒歴史放出祭】に関して思案しあんする。


 (黒歴史......ね。思い出したくもないけれど、正直、いくつもあるわ。


 軽いものだと、幼さゆえの子供じみた言動が挙げられるわね。


 逆に、重いものだど、思い返すだけで吐き気をもよおす出来事まであるのよね。


 けれど、不特定多数が閲覧えつらん出来るカクヨムで、どの程度のことまで言って良いのかしら?)


 「軽すぎると印象に残らないし、重すぎると読者の皆様に引かれてしまう......塩梅あんばいが難しいわ。」


 しばらくく思い悩んだ末に、私は、人生で三番目に酷い黒歴史を暴露することに決めた。


 一番目は、信頼できるごく一部の人にしか言わない内容であり、二番目は、自身の写真を提示し、説明することが必要であった為、除外せざるを得なかったのだ。


 (お題も決まった事だし、早速、始めるわよ。私の黒歴史暴露会を......)



        ◆◇◆◇◆   


  

 「あれは......六年前のことだったかしら?」


 (三月の暖かな陽気につつまれた日に、私が通っていた小学校の卒業式が開催されたわ。


 当時の私は、同じクラスに友達が居なかった為、教室が居心地の悪い場所だったの。

  

 だから、卒業式が終わって、皆が談笑だんしょうしている空間から少しでも早く抜け出したくて、即刻そっこく帰宅したのよね。)


 その結果、卒アルの最後の方にある寄せ書きスペースがほぼ白紙という、悲惨な事件が発生した。


 「マズいわ。もある寄せ書き欄の内、一ページ目の下部と、二ページ目の上部しか埋まっていない状態よ。」


 (しかも、コメントを書いてくれた子は、本当に仲が良かった訳ではなくて、先生から言われてお情けでグループに入れてくれていた子と、今では顔も覚えていない位、接点の薄い子のなのよね。

 

 これは、完全なる白紙であることよりも精神的ダメージが大きかったわ。)


 記憶がおぼろげではあるが、当時、卒アルを眺めながら、泣いていたかもしれない。



◇卒業式の日の夜


 (このまま卒アルを放置すると、将来親が見た時に、心配するかもしれないわね。)


 私は、悲惨な状態の卒アルを眺めながら、で、打開策を思案していた。


 「良いことを思いついたわ!白紙なら、自分で書き足せばいいのよ。」


 (そうと決まれば、早速開始ね。)


・中学別れるけどがんばって!!

・中学はきっとハッピー!

・犬、猫、某クマキャラの絵 etc......


 当時の私は、とにかく空白を埋める事に全力を尽くした。


 卒アルに対するコメントとして書かれていそうなことや、自身を鼓舞する様な内容。


 最後にはネタが尽きて、絵でスペースを埋め尽くした。


 (今思い返すと、本当に馬鹿よね。自分の筆跡なんて、一目見るだけでも分かってしまうものだし、絵が下手なのにも関わらず、スペースを埋める為、でっかく絵を描いたのよ?


 出来栄えはお察しの通り、元々大ダメージを負っていた卒アルが、完全に息絶えたわ。)



        ◆◇◆◇◆

 

 もし、当時に戻れるならば、私は、どの様な行動をとるべきだっただろうか?


 (正攻法を用いるなら、他クラスの友達や近所に住んでいる子に、メッセージを書いて貰いに行けば良かったかもしれないわ。)


 ※ただし、友達は三、四人しか居らず、近所の子を合わせても、七人にも満たない......


 「そもそも、正攻法でどうにかなる程、人脈が広くないわね。


 はぁ、小学校には六年間通っていて、中高と比べて倍長いのに、この有り様なんて......自身のていたらくが情けないわ。」


 (だとすると、卒アルを誰にも見られない場所へ隠すか、ひそかに捨てることが最適解......よね。)


 しかし、今の私がどんなに試行錯誤しようが、時すでに遅し。何せ、これらの出来事は、に起こったのだから......


                                    end!!


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