第42話 【幸太】幸せのかたち
人前で泣いたのなんて、小2のとき、母さんが倒れて救急搬送されて以来だ。
あのまま、ひなのしたいようにさせてやれば、また元通りでいられたかもしれない。
でも、晴翔の顔がどうしても浮かんできて、そんな気分になれなかった。
晴翔にも、同じことしてたんだもんな。
どんな顔して、晴翔に抱かれていたんだろう。
誘いにのらなかったせいで、ひなをさらに泣かせてしまった。
あのあと、ずっと布団にくるまって泣いている。
俺は、ひなを幸せにする資格があるんだろうか。
晴翔のほうが、俺よりもずっと、ひなを幸せにしてやれそうだし、いい父親になりそうだ。
俺は丸くなったひなを、ふとんの上から撫でた。
「今日はもう遅いから、泊まってけよ。明日の朝送ってくから。」
泊まってけだなんて、お互いに酷だが、泣いているひなを帰らせるわけにもいかない。
「コータはもう、私のこと好きじゃないんだ。。。」
ひなは泣きはらした声で、俺に言った。
「そういうわけじゃないんだけど、どうしても気持ちがのらなくて。。。」
「嘘じゃん!さっきその気になってたじゃん!なのにしないとか、やっぱり私のこと嫌いになったんじゃん。」
ひなは子どもみたいに怒っている。
こんな状況で、なんで俺が怒られなきゃなんないんだ。
怒りたいのはこっちだ。
俺はやるせなくなった。
「ひな、もう今日は寝よう。顔すごいことになってるぞ。美人が台無しだ。」
「好きでもないのに、美人とかいわないでよ!!」
ひなは大声で怒り出した。
もう何を言ってもだめだ。
俺は電気を消して、ひなの横に寝そべると、丸まったひなの布団を、トントンと優しくたたいた。
ひなは布団から出てくると、全身で俺に抱きつき、首筋のあちこちを唇で強く吸いはじめた。
「ひな。。。」
俺にはもう、どうしていいかわからない。
少しして、泣き疲れたひなは、すーすーと寝息をたてて眠りについた。
安心した俺は、そっと布団から出て、焼酎をお湯で割った。
どうせ今日は眠れないから、朝まで飲むとするか。
テレビをつけると、芸人たちが楽しそうに会話を繰り広げている。
幸せってなんなんだろう。
俺は、今眠っているひなを見て、安心したし、幸せだと感じる。
でも、この先、ひなを前みたいに抱ける自信はない。
そもそも俺は、幸せな家庭を築けるのかどうか自信がない。
晴翔にはあんなこといってしまったが、俺より晴翔のほうが先だったんだし、むしろ俺がひなを晴翔に託せばよかったのかもしれない。
あの様子なら、真剣に付き合ってくれていただろうし。
ひなを幸せにしたい。
でもきっとそれができるのは、俺じゃない。
俺は美波の言葉を思い出した。
〜〜〜
年下とか無理だよ
私と一緒であんた
メンタル弱いから
支えてあげらんないよ
〜〜〜
‥‥その通りかもな。
あんなに怒って泣いていたのに、すやすやとと穏やかな表情で眠っている陽奈。
俺は連絡先をスクロールして
アイツに電話をかけようと外に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます