第22話 【奏多】主役の座

昨日はさんざんだった。

せっかく陽奈とのデートにこぎつけて、自慢のダーツの腕前を披露していたというのに、途中から神山部長が乱入してきたせいで、全てが台無しになってしまった。


主役の座は、完全に部長。

おごったのも、部長。

ダーツの腕前も、俺よりはるか上。

ひなのみならず、店の客まで盛り上げるノリ。


完全に部長にもっていかれた。


まぁ、陽奈と遊べた事自体は楽しかったし、苦手だった神山部長が面白い人だとわかって話しやすくなったことはよかったけど、なんだか、どうしてこうも色々とうまくいかないんだろう。ついてないなぁ、おれ。



それにしても、陽奈は意外と男っぽいというか、なんか俺が最初に思ってたイメージとはちょっと違うな。


もっとなんか女の子らしいゆるふわキャラな感じを想像していたんだけど、どちらかというと体育会系というか、ノリがいいよな。



そんなことを考えていると、バーベキューで口説いてしまった山本主任からLINEがきた。

あの日以来頻繁にLINEがくるようになって困っているのだが、直属ではないにしろ上司なので、ないがしろにはできない。

なにせ、自分でまいてしまったタネである。


アイコン自撮りの「miki」からのLINEを、少しげんなりしながら開いた。


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藤原くん、おはよー。

私は今日も普通に仕事いくんだけど、藤原くんは会社くる予定ある?

昨日の夜、おかず作り過ぎちゃって、よかったら藤原くんの分もお弁当作ろうか?笑

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土日でも当然のように仕事の連絡や出勤の話がでるブラックなうちの会社。


気づかないふりをしたいところだが、弁当を作るか作らないかという、差し迫った内容なので、仕方なくすぐに返事をした。


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おはようございます。お気遣いありがとうございます。


本日は、先週も休出だったので、お休みを頂いてます。

休出お疲れ様です。頑張ってください。

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この仕事も長いので今更だが、土日なのになぜ俺は休暇の連絡をせねばならぬのだ。

おかしな話だ。



さ、今日は休みだし、掃除でもするか。


潔癖の俺は、コロコロが必需品である。

髪の毛や小さいゴミを見つけたら、コロコロせずにはいられない。

ドラム式洗濯機をまわし、掃除機をかける。ベランダを開けると、初夏のじわりとした暑さが家の中に広がった。

換気しようと思ったが、暑いからやめにしてエアコンをつけた。


掃除にはやっぱりBGMだ。俺はひなと2人きりでダーツをしたわずかな楽しい時間を思い出すべく、アレクサを起動した。



「Alexa、エルヴィスプレスリーの音楽をかけて。」


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