第20話 何かは何かになりたがってる

「……そういえば、さっきも吸血鬼とか言ってたよな……人狼に聞くのもヘンだけど、吸血鬼って実在するのか?」


「する。伝承が広まっている物は、必ず存在する。世の中には何かが溢れている。だから『何かは何かになりたがってる』。近いモノがそれになる。だから居る」


 と、不意に話が途切れる。今思いつく疑問が打ち止めになってしまったのだ。


 かなかな言ってる口調について尋ねてみたものの、「わからん。たぶん口癖だ」の一言で済まされてしまった。


 ねばつくような視線を感じる。舌なめずりの音がした。


「よし、じゃあさっそく交……」


「ま、待った。おれを選んだ理由があんたを見えるからなら、他に見える男が居たら、乗り換えるってことだろ?」


「ふむ。それは確かに。自分が見えるという点を除けば、そんなに魅力的でもない、かな」


 否定してくれないあたり、おれはハーレム漫画の主人公ではないらしい。


「心配するな。見える人間なんて億に一人程度。まず出会いやしないさ」


 じゃあTVに出てる霊能力者って――と思ったが、考えてみればあれが本物なわけはない。


 見えているんなら、アレがうじゃうじゃいる東京のテレビに出演なんてしないはずだ。


 もしおれが都会で生まれていたら、きっと、すぐにあの何かに取りこまれておかしくなるか、自殺をしていたと思う。人口比から言えば、都会で生まれるほうが確率は高いし、無事にこの年まで生きていられる方が珍しいのかもしれない。


 しかも、そのうち男は半分だろうし、繁殖に適した年齢の者の数も更に半分くらいだろう。


 とすると、確率は極めて低いという事だ。


 だとしても――


「確率は0じゃない。その他の数人に出会ったら?」


「そうだな。だったら、ユウが他のオスに負けない存在になればいいだろう」


 けろりと言いやがった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る