第2話 見える
九州はO分県の山中にある白黒市。
この白黒市は人口十万人弱と数だけは多いが、実際には近年、山奥の各市町村と合併した事で数字上多く見えるだけだ。市の中心部だけを見れば人口はそれほどでもないし、その大半もお年寄りだ。寂れた地方都市といった風体である。
とはいえ、我が故郷。言い方を変えれば自然が多く残っている場所でもある。
雨が降れば土のにおいがする。これはコンクリ舗装された都会には無い。
夏の夜はカエルがケロケロ鳴いている。水路におたまじゃくし……かと思ったらなまずの子どもがいる。真黒なガラスのように綺麗ななまずの子どもはとても可愛い。
網戸に蛍が飛んでくる。教室にスズメバチが入って来て一騒動ある。シマヘビ程度で驚く者はいないが、マムシはヤバイ。ヤバイけど滅多にいない。溝にタヌキが巣を作り、鶏小屋をイタチが襲う。下手に柿の木の下を通るとイラガの幼虫が落ちてきてヤバイ。豪雨が降ると確実にガケ崩れを起こす場所があって、雨のたびに必ず学校に欠席する地区がある。
とまあ、自然溢れるいいところだ。
だからこそおれは、高校を卒業したら東京に行くつもりだった。
それが幼い頃からの夢。
なぜなら、自然が多く残るって事は、超自然的なモノがより多くいるってことだからだ。
さて、話をわかりやすくするために、ここでおれの話をしておこう。
おれは、見える以外は普通の男子高校生だ。
名前は、
両親も健在だし、祖父母も超ウルトラスーパー元気で、美人ではない中二の妹がいる。
身長はやや低め、体重は平均より少しだけ少なめ。
成績はごく普通。別段勉強もしなくて困る事も無いが、勉強しないから上にもいかない。授業自体は普通に出てるから、普通にそれなりに出来る。部活は武術部で、別に強くはない。
こう並べてみると、ホントに普通だ……。
見えるって以外は。
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