シャチのレン

入江 涼子

第1話 レンの自己紹介

 初めまして、あたしはシャチのレン。


 にほんとか言う国のある水族館で飼われているの。あたしは今年で、二十歳になったわね。パートナーって言うのかしら。

 あたし達の世話をしてくれているトレーナーのルーさんが「彼氏」って言うんだとか、教えてくれたわ。その彼氏は残念ながらいない。ちょっと、寂しいけど。代わりに、妹のロロとマミがいるから気は紛れるわね。


 今日もルーさん達が朝方に来て、あたし達の「めんたるチェック」などをしてくれる。あたしはプールサイドに泳いで向かう。


「……おはよう、レン」


『キュー!』


 あたしは呼吸する頭の穴から、鳴き声を出す。ルーさんは意味を分かってくれたみたい。にっこりと笑う。手を伸ばして出して来た。すぐに、スキンシップだと分かる。あたし、水面から頭や胸ビレを出したの。

 ルーさん、とびっきりの笑顔でギュッと抱きしめてくれた。あたしはこの時間が好きだわね。他のトレーナーさん達もロロやマミと遊んでいる。

 今日も平和だわ。ルーさんがバケツにたくさんのお魚を持って来た。


「レン、魚だよ」


『キュイー!』


 ルーさんの呼びかけで食事の時間だと分かる。高めに鳴いて、答えた。ルーさん手ずから、お魚をくれた。いやあ、丸呑みだけど。至福の時間だわあ。あたしはたらふく、食べたのだった。

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