真夜中の飯テロ
つき
第1夜 豚の角煮
小さな住まいに越してから、めっきり料理をする頻度が減った。
体調が優れないこともあるが、IHコンロとエアコンなど、二つを同時に使用すると、ブレーカーが落ちてしまうのだ。
これで早速、冷蔵庫のコンプレッサーを壊してしまった。
それでも、体が覚えているのか、たまに圧力鍋の出番が来る。
普段は、服薬の都合で飲酒はしないのだが、どうしても呑みたくなる時がある。
そんな時は、先ず買い置きのボンボンチョコレートを食べることにする。
そして、翌日、重い足取りでいそいそとスーパーへ出掛け、豚バラ肉の塊と、幾つかの
飲酒の代わりに、豚の角煮を作ることにしているのだ。
余計にお酒が恋しくなりそうだが、ご安心あれ。
豚と白い熱々ご飯との、極上のマリアージュで、お酒の事は綺麗サッパリと諦めがつくのである。
さて、またそんな気分の日がやって来た。
私は、先ず全ての材料を確認する。
それから卵を一パック丸々、半熟に茹でて、水に浸しておく。
次に、大蒜の皮をひたすら剥く。
これは多ければ多い程、良い。
ここで真打ち登場だ。
フライパンに、塩と挽いた黒胡椒を擦り込んだ豚肉を、脂身側から滑り込ませる。
強火で焼き、しっかりと焦げ目をつけたら、もう三面も軽く焼き、トングでぐいと掴んで、圧力鍋に移す。
鍋に、剥いた大蒜、長ネギの青い部分、生姜のスライスをその日の気分で好きなだけ投入する。
最後に、調味料だ。酒、醤油は多め、みりんを適当に回し入れ、水も加える。
これでOK、後は蓋をしっかりと閉じ、IHコンロにかける。
蒸気孔のオモリがシュッシュッといってから、これまた、その時の気分で、十分〜二十分程、加熱する。
今回は長めにしようか。
加熱している間に、茹で卵の殻を剥く。しっかり水に浸けてあったので、十個でもすんなり剥けた。
一つ、マヨネーズを付けて摘み食いする。美味しい!
真夜中に、圧力鍋のシュッシュッという音が、大蒜のこってりとした甘い匂いと共に、小さなキッチンに静かに漂う。
もう、そろそろか。
伝熱を止め、圧力弁が下がるまで待ち、蓋をガチリと開ける。
沸々と醤油色の液体の中に、加熱を終えた柔らかそうな豚バラ肉が、ドンと鎮座している。
私は、その勇姿に、あぁ、生きてて良かったぁと、呟く。
少し冷ました鍋に、茹で卵を放り込み、一晩置いて、角煮と煮卵の完成だ。
これで安心して眠りにつけるのだ。
翌朝(まぁ起きるのは昼だが)炊き立てご飯に、一センチ幅に切った角煮と、トロトロに溶け切った大蒜、半分に切った煮卵、そして少し煮詰めた汁を掛ける。
その上から小口ネギを散らし、
食する。
あぁ、やはり、生きてて良かった。
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