現実見たら彼女と釣り合ってなかったので別れてもらうことにした

minachi.湊近

第1話 失恋ほど、人間に行動力を与えるものはない

 ふと考えたことがある。


 俺には彼女がいていいものなのかと。今まで女子にモテたことはなく、顔は平々凡々中の平々凡々。

 性格も良いとは特別言われたこともないし、秀でた特技もない。


 なのに全世界の男子が死ぬように求める存在、彼女。彼女が俺にはいるというのだ。


 冷静に考えておかしいことではないだろうか。


 俺が彼女、柊葉 葉月と付き合うようになったのは三か月ほど前にさかのぼる。彼女は転校生でその頃は周りから浮いており、女子のいじめの標的になっていた。


 それから俺はそのいじめを解決するのだが話すと長くなるので割愛させていただく。


 いじめを解決してからというもの、俺と葉月はどんどん仲良くなっていき三か月前に俺から告白し付き合うことになったのだ。

 あの時は告白を受けてもらえたことが嬉しすぎて家のベッドの上でめっちゃはしゃいだな。


 話を戻すがつまり俺が言いたいことは俺と葉月では関係が釣り合っていないということだ。もちろん彼女が俺に釣り合っていないというわけでなく、俺が彼女に釣り合っていないわけで。


 これでは彼女が可哀そうだ。俺みたいな男と付き合うよりもっとイケメンでスポーツが得意で、性格が良い完璧超人と付き合う方がいいに決まってる。


 そっちの方が彼女は幸せになれる。俺だって別れたいわけじゃない。望むことならば彼女と一生を添い遂げる中になりたかった。


 でも冷静に現実を見て考えたらそういう結論にたどり着いてしまったんだ。もう戻ることは出来ない。

 彼女とは別れるべきである。


 だから俺は今日の放課後、彼女に別れを告げるつもりだ。二人でカフェに行く予定を立てている。


 彼女との最後の時間、ちょっとくらい楽しんでもいいだろう?





 ☆☆☆




 いつの間にか放課後になっていた。今日の学校生活はまったく集中できなかった。授業は知らぬ間に終わっていたし、弁当を食べた記憶もないし、友達を話した記憶もない。


「ついにやるのか…」


 待ち合わせ場所の校門で彼女を待つ。俺と同じ帰宅部の奴らが俺のことをじろじろと見ているが気にしない。


 俺が気にするのは彼女である葉月だけ。彼女は女子にしては身長が高い方だから一目見たら分かる。


「あ、真翔。お待たせ」


「おう」


「珍しいね。放課後にカフェ行きたいなんて」


「そうかもな」


 まだ別れを切り出すことが出来るような気持ちは俺にはない。もう少し気持ちを整えないと悲しみで泣いてしまいそうになる。


 耐えるんだ自分。明日からは独り身なんだ。今から泣いてちゃ明日からなんて耐えられるわけがない。


 それから俺と葉月はなんてことない雑談を交わしながらカフェまで歩いた。途中で葉月から手を繋いできたが、放すことなんて出来はしなかった。


「うわぁ、オシャレ―。真翔よくこんなカフェ知ってたね」


「ああ、最近見つけたんだ」


 たぶん二度と来ないだろうな。ここには。


 きっと思い出してしまう。葉月との別れのことを。


「ホットコーヒーと…葉月はどうする?」


「じゃあ私はソーダフロートで」


「本当にフロート好きだな」


「まぁね~。初めて真翔にご馳走してもらったものだから」


「そんなことでわざわざ毎回頼んでるのか…」


 律儀だな、とは口には出さない。


「なあ葉月、実は大事な話があるんだ」


 俺は運ばれてきたホットコーヒーをすすりながら彼女にそういう。葉月は美味しそうにフロートを楽しんでいる。


「んん?」


 何も警戒していなさそうな顔だ。今から別れ話をしようとしているのに呑気なものだ。

 まあ知っているわけないんだから当たり前の反応なんだろうけど。


「結構大事な話だから真面目に聞いてほしい」


 いつの間にかコーヒーはなくなっていた。


 葉月は何もわかっていない様子で俺のことを見つめている。彼女なりの真面目だ。


「葉月、別れよう」


「は?」

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