第24話

赤い手帳 7


堀はいつものように仕事をこなしている。

結城は優秀の名の通りの仕事ぶりで殺人者の仮面を隠し美貌を全面に出している。

しかし、ドラッグストアの女店員の殺人未遂事件の捜査で同じ車両に居合わせたと言う理由で警察の捜査対象の一人になっていると社内で噂になっていたが簡単な聞き取りで終わったと話は伝わって来た。あれだけの混雑の中で犯人を割り出すことはきっと難しいに違いない。

結城課長は無表情の冷たい印象であるが、一度笑うと一転して魅力的な表情に変わるのでそれが社会に受け入れられる要素であり会社で出世の道を歩いている原因でもある。それに加えて

頭の良さがある。

藤井と同じように堀も又、あの電話は何処につながり誰が出るのか胸の高まりを抑え二人は定時を待ち、堀は時間をずらし藤井と一緒に会社を出るのを避けるようにして何時もの居酒屋を目指した。

今日は居酒屋の一番隅のテーブルに座り、まさに鼻を突き合わせる事が出来るくらいに体を寄せあい互いの愛を燃え上がらせていた。

藤井「手帳には暗号のように色々書かれているのは全てスマホのやり取りの記録を残さないためだよね。違う?デジタルに頼らず全てはアナログを利用する。足がつきにくいね。」

堀「私もそう思うわ!」

藤井「後を残さずって事だね」

堀「不倫だからそれぐらいの用心は必要かもしれないけど」

藤井「じゃあ、あの番号、俺が電話するよ」

慣れた手つきで番号を押さえ「ちょっとお伺いしたあのですが、そちらは予約制でしょうか?あそうですか、また電話させてもらいます。」そう言って藤井は電話を切った。

堀「何処だったの?」

藤井「ラディアントと言うレストランだったよ、きっとここで待ち合わせたと思うよ」

堀「トリカブトを飲ませるとしたら、そのレストランかそこから先の何処かね」

藤井「殺された立花が違う女性と付き合い始めて怒りを爆発させた末の結城の犯行だろうね」

藤井は堀の瞳を見つめて言った。この二人の関係は会社で知るものはない。今はまだ知られたくないのだ。しかし、いずれは皆の知るところになるだろう思っていた。その時はその時である。めでたくゴールイン。二人の望むところである。

数日して藤井「俺の所にドロボーが入り荒らされた!金目の物は何も取られていないけど」と堀へ電話が入れた。

藤井「まさか!あの手帳の事、勘付かれたんだろうか?」

堀「あの手帳の中の沢山の数字にまだ何かが隠されているかも、だから取り返そうとしたのよ」

藤井「とにかく警察が帰ったら又連絡する、でももう遅いから明日にするよ」と電話を切った。

あの結城と言う女性は何者なのか。

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