008 これが星5とかマジかよ……
俺は拠点を中心としてゆっくりと周囲を探索することにした。少し前の俺は焦りすぎていたのだと思う。焦って行動したせいで、あんな不幸が続いたんだ。間違いない。
「とりあえず、食料と水を集めるとするか。ついでに使えそうなものがあれば拾えばいいしな」
「ゲコゲコ」
カエルが俺の背中に張り付く。普通に重い。
「何しやがる! 離れろ!」
数分間がんばってカエルを振り落とそうとしたが、俺の体力を消費しただけだった。
「ハァ……ハァ……体力は無駄に出来ねぇ。こんなカエルは無視だ無視!」
「プッ」
イラッ
「この野郎!!」
俺は再度挑むことにした。
――俺の体力がかなり減ってしまった為に拠点のすぐ近くを探索する事にした。
その結果、果物を大量にゲット出来た。近くに川も流れていたので、拠点に置いてあった壷に貯めておいた。そして、次の探索の為に拠点の周囲に動物用のトラップを仕掛けておく。
「もう夕方か。すぐに戻らないと真っ暗になっちまうな」
俺は最後のトラップを仕掛けた後、拠点に戻った。
次の日、俺は早朝に仕掛けたトラップをチェックしに行った。
すると、一つ目の牙がやたらと長いイノシシのような動物が罠にかかっていた。
「これ、食えるのだろうか……?」
少し悩んだ。
「顔を見なければイノシシと同じだ。今は選り好みしている場合じゃない」
俺は食うことに決めた。その場で内蔵を抜き、解体し可食部のみを拠点に運んだ。
そして、次の罠をチェックする。次は鱗に覆われた鹿が罠にかかっていた。
「これ、食えるのだろうか……?」
どうして毎回食うか迷わなければならないのか。俺はしばらく悩んだ。
「ええい! もう決めたぞ!! 獲物は全部食う!!!」
俺は悩むことを辞めた。全てを受け入れる覚悟を決めた瞬間である。そして、すぐに後悔することになる。
「さすがに、これは食えないだろ……?」
皮膚の表面が石で出来たダチョウが罠にかかっていた。しかし、俺が決めたルール、俺の覚悟に背くことは出来ない。
「チクショウ、絶対に食ってやるぞ!」
その後も、巨大な蜂やスライム状のカピバラなど、何故か食べるのに100%の勇気が必要な獲物ばかり罠にかかっていたが、全てを拠点に回収した。
――陽が落ち、夕食を準備する。今夜の食材は一つ目のイノシシだ。
「ほら、お前の分の肉だぞ」
肉を薄く切り、カエルの目の前に投げてやる。毒味をさせる為だ。
ペシッ
生肉を弾き返された。
「何のつもりだ!?」
ビシッ
カエルの舌が伸び、俺が石を積んで作った石かまどを叩いた。
「カエルのくせに焼き肉にしろってのかよ!」
俺が文句を言いながら火打ち石を何度も打ち火をつける。これがなかなかに面倒な作業だ。カラカラに乾いた草があって良かった。
肉を焼いて、カエルに渡すと、カエルはペロリと飲み込んで踊りを踊った。評価は星2だった。割と食べられる味らしい。
その後、本日獲った様々な獲物の肉をカエルに与えたが全ての肉が食えるということが分かった。
「しかも、これが星5とかマジかよ……」
スライム状のカピバラの味は星5との事だった。しかし、俺はどうしても食べる勇気が出なかった。
スッ
俺はそっと倉庫の隅にスライムカピバラ肉を放置した。
次の日、その次の日も動物が罠にかかっており、せっせと干し肉を作成した。食べられそうな野草も収集したところ、薬草らしきものも見つける事が出来た。パッチテストで食べられる植物を探す過程でポーションの味と臭いに似た植物を見つけたのだ。
「この薬草は拠点に持って帰って栽培してみよう」
拠点内に畑を作って、食べられる植物や薬草を植えてみた。
これだけ食料があれば、しばらく生きていけるだろう。その間に周辺を探索し、地図を完成させるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます