第12話

飛那世「…さて、もう準備も

出来ましたし、武器庫まで

行くとしますか…?」


永遠「あぁ…みんな、もう大丈夫…?」


華途葉「えぇ、私は問題ないわ。」


凍歌「私も大丈夫だけど…

少しいいかな?」


神野「凍歌…?どうかしたの?」


凍歌「一つやってみたいことがあって…」


永遠「やってみたいこと…?

って、何…?」


凍歌「…私、高城がしていたように

破邪悲の力を脳にリンクさせて

破邪悲の力を使ってみたいの…」


華途葉「は…?そんなことで

破邪悲の力を使えるの?」


優来「リスクは高いけど…

できない訳じゃないよ。」


凍歌「…灯華が研究してたデータを

解析してみたけど、この方法を

持ちいれば今、破邪悲がないこの

状況でも破邪悲の力を

使うことができる…恐らくはね。」


凍歌「…だけど、強大故に

使える時間も限定されてる、

使えて3分くらいかな…」


櫻「3分か…やっぱり、短いんだ…」


飛那世「でも、何なんですか…?

そのリスクって。」


凍歌「あぁ…それなんだけど、

破邪悲と脳をリンクさせると…

当たり前なんだだけど、膨大な数の

情報量と力のデータが脳に直接

送られてくるから…負荷に耐えられるか

どうか…。」


永遠「え…?ってことは…まさか、

それを行ったら、凍歌は…」


凍歌「…まぁ、死ぬだろうね…。」


櫻「そ、そんな…!!」


凍歌「…でもさ、もう…

あいつらに勝つためにはどちらにしろ

こうしないと無理なんだよ…」


神野「…ちょっと待って、よくよく

考えたら本当にそんなこと

可能なの…?」


凍歌「…可能だよ、クローンであり

人工知能によって動いている

私ならね…」


華途葉「そうか…人間の脳なら

莫大な情報量に耐えられないけど、

人工知能なら…」


飛那世「…確かに、可能でしょうが

代償が対価とあまりにもかけ離れて

いると思うのですが…」


凍歌「…それでも、私はやるよ…」


凍歌「…私は、勝てるためなら

どんなことだってする、

自分の命だって捨てる…それは、

みんなだってもう覚悟してる

ことだと思うよ…。」


永遠「…。」


凍歌「…それに、私は所詮

灯華の複製…紛い物にすぎない

存在、本当は存在してちゃ

ダメなんだよ…」


華途葉「…。」


凍歌「…だからさ、私は…

もう、死を恐れることもない…

それは、仕方ないことだから。」


凍歌「それが…クローンとして

生まれた私の運命だから。」


優来「凍歌…」


飛那世「…分かりました、けど…

きっと、先輩は悲しみますよ…

それでも、いいんですか?」


凍歌「…大丈夫だよ、ブリザードは…」


凍歌「ブリザードは、強いし…

何より、こんなにも心強い仲間が

いるんだから…。」


凍歌「何も怖くないよ…私の心は

いつでもここから離れることは

ないから…」


櫻「凍歌…っ…」


凍歌「…でも、よかったよ…

ブリザードの心配をせずに

死ねるなんて…」


凍歌「…私は、この命を持って

私の生き様を世界に…ブリザードに

見せつける。」


凍歌「それで死んでもいい、

それで世界は救われるんだから…」


凍歌「…それで、ブリザードを

奮起させて…そのままの勢いで

高城、神吹まで倒そう…」


凍歌「…大丈夫、私は…最期まで、

みんなのことを見てるから…」


神野「凍歌…」


飛那世「…なぁ、凍歌自身は

それでいいって思ってんの…?」


凍歌「…構わないよ、後悔

してないし、する気もないから…」


飛那世「…死にたくないって

思わないのかよ、終わりなんだぞ、

それで…」


凍歌「…いいんだよ、生に死は

付き物だから…それに、私は

創られた存在だから…怖くもないよ。」


飛那世「っ…なぁ、私はアンタが

これで納得してるようには

見えないよ…何考えてんだ…?」


飛那世「…どうせ、腐るくらい

未練があるんだろ…?

抑えなくていいんだよ…

お前自身は、どう思ってんだ…?」


永遠「飛那世…」


凍歌「っ…!!」


凍歌「死にたくないよ…

私だって…!!」


飛那世「…。」


櫻「凍歌…!!」


凍歌「もっと…ブリザードやみんなと

遊びたいし、私はみんなと一緒に

いる時間も短かったから…

これで終わりなんて…嫌だよ…!!」


凍歌「けど…革命には、

犠牲も必要なんだよ…その犠牲が、

私なんだよ…」


優来「凍歌…君はやっぱり…」


凍歌「私はもう…灯華の代わりじゃ

いられない…怖いんだよ、

死ぬのが怖くてたまらない…!!」


凍歌「けどさ…実際考えてみると、

私が死なないで上手く行く未来が

見えないんだよ…!!」


飛那世「凍歌…」


凍歌「私は間違ってるのかな…?

やっぱり、人間じゃないから…

分からないのかな…」


飛那世「いーや、アンタは

間違っちゃいない…」


凍歌「飛那世…」


飛那世「…私も、死ぬのは果てしなく

怖いさ……死の時間が決められた

として、耐えられる自信もない…。」


飛那世「…けど、アンタの言う通り

人には役割ってもんがある…」


飛那世「…あんなことを言った手前、

こんなことを言いたくは

無いし、苦だとは思うが…」


飛那世「…アンタにできることは、

決められた役割を理想通りに

こなすことだ…」


凍歌「飛那世…」


飛那世「けど…後悔だけはするな、

生きてるうちにしたいこと全部やれ…」


凍歌「したいこと…全部…?」


飛那世「…そうだ、決められた時間

だったとしても、できることが

ないわけじゃない…何をするかは、

アンタ自身が決めろ…」


飛那世「…もちろん、行った先に

高城は出てこなくて…杞憂に

終わるかもしれない…。」


飛那世「でも…その分できることは

あるはずだ…。」


飛那世「私は…生きてる内に

できることは全部したい…」


飛那世「…付き合ってくれよ、

私の死ぬ理由を作るのにさ…」


凍歌「飛那世…」


飛那世「…」


飛那世「なーんて、今回の行く先に

高城は出てこないでしょうがね…」


凍歌「…そうだね、あはは…」


凍歌「…なんか、そうやって

考えることも馬鹿馬鹿しくなったかも…」


永遠「…ひとまず、すべきことは

今回の出撃が終わってから

考えたら…?」


凍歌「そうだね…ブリザードも、

まだ出てこないと思うし…」


櫻「そうだね…高城が出てくる理由も

無いと思うし、したいことを考えるのは

帰ってからの楽しみにしよう。」


飛那世「ですね…」


華途葉「…ま、とっとと

終わらせましょうよ、

今からでも時間はたっぷりあるし…」


神野「…けど、作戦のことを

疎かにしないでよ…?

支障が出るから。」


凍歌「はーい…。」


凍歌「フフッ…なんか、楽しいな…」


凍歌「…ブリザードも居たら、

もっと楽しかったのに…」


凍歌「…もう、会えないのかな…

ブリザードに…」


凍歌「…もう一度会えたら…

伝えたいな…ブリザードに…」


凍歌「…はっ!?な、

何考えてんだよ私は…!!」


優来「ん…?凍歌、どうかした…?」


凍歌「あっ…い、いや何でもない…」


優来「…?ブリザードが何かって

言ってた気がするけど…」


凍歌「きっ…気のせいだよ…うん!

気のせい…!!」


優来「は、はぁ…?」


凍歌「ほっ…ほら、行こ…?

みんな待ってるよ。」


優来「…そうね。」


優来「…あ、待って、凍歌…!」


神野「何してんの優来、

行くわよ…」


優来「あっ…う、うん…!」


優来「…」


優来「これの中身…言えなかったな。」


ーー


凍歌「…」


ブリザード「凍歌…凍歌…っ!!」


優来「そん…な…」


飛那世「失敗かよ…クソ…ッ!!」


山野「おいおい、何が起きてやがる…

倒れたぞ…?」


今井「…こりゃ、お手上げだな…」


華途葉「うっそでしょ…3分は

どうにかなるんじゃ

無かったの…?」


永遠「破邪悲の情報量は…

凍歌の人工知能でも吸収

しきれなかったのか…!!」


高城「フン…自滅とは情けない、

失望したわ…」


神野「ぐ…もう、やるしかないわよ…!」


ブリザード「凍歌…凍歌…っ!!」


優来「ブリザード、戦わないと…!!」


ブリザード「だって…凍歌が…

凍歌は…まだ…!!」


優来「凍歌は…もう…!!」


優来「っ…え?」


飛那世「優来さん、

どうかしたんですか…!!」


優来「凍歌…まだ息がある…」


飛那世「な…っ!?」


櫻「も、もしかしてまだ凍歌は…!!」


克己「あいつ、あの状態でもなお

生きながらえていると言うのか…?

なんて生命力だ…」


ブリザード「…もしかしたら凍歌が

意識を戻すかもしれない…!!」


優来「でも…どうすれば…!!」


ブリザード「多分、脳が何ならの

状態で異常をきたしてるんだと

思う…俺らが呼びかけたらもしかしたら

意識が戻るかも…!!」


華途葉「そんな…敵には高城が

居るのよ…?そんなこと、

できるわけ…!!」


克己「いや…できるぜ?」


永遠「克己…!?」


高島「こいつらを助けたくはないが…

弟のためだ、やるぞ…!!」


矢澤「これであの忌々しい

高城に勝てるならいくらでも

足止めしてやる…!!」


飛那世「…助かる、みんな…

高城を迎え撃つぞ!!」


永遠「あぁ!!ブリザードと優来は

凍歌のことを頼む…!!」


ブリザード「あぁ、分かった…!!」


達也「…なぁ、これはチャンスじゃ

ないか…?」


雪村「言わんでも分かる、高城を

葬るなら今だ…!!」


松山「おいおい嘘だろ、あいつらに

手貸すってのか?」


雪村「手を貸すのではない…

奴を効率的に殺すためだ…」


松山「チッ…そうかよ。」


山野「お前ら…行くぞ!!

俺らの意地を見せるんだ!!」


今井「はいはい、行くぞ…」


達也「…はぁっ!!」


バキュンバキュンバキュン!!


高島「ふっ…!!」


バキュウン!!


華途葉「うぉりゃっ!!」


バキュンバキュンバキュン!


櫻「見て…!神吹の奴らも高城に

向かって発泡してる…!!」


神野「奴を殺す好機と見たか…

これはいい…。」


飛那世「打ち砕くまでだ…ッ!!」


バキュウンバキュウンバキュウン!!


高城「ぐ…小賢しい真似を!!」


高城「私の念動力で…!!」


克己「うおりゃぁぁぁっ!!」


ダッ…!!


高城「な…!?」


ドサッ!!


克己「今だ、撃て…!!」


高城「下賤な奴らめ…邪魔だ!!」


ボゴォッ!!


克己「ぐはぁっ…!!」


矢澤「克己…!!」


克己「何のこれしき…こんなんで

へこたれてんじゃ世界なんか

変えらんねぇよ!!」


ブリザード「っ…凍歌!凍歌…!!」


優来「お願い、目を覚まして…!!」


高城「…はぁっ!!」


ド…ッ!!


華途葉「ぐ…がぁっ!!」


櫻「華途葉!!」


華途葉「私のことは気にすんな、

それよりも…!!」


高城「死ねっ!!」


ドガァァッ!!


櫻「っ…!!」


永遠「危ないっ!!」


バキュウンバキュウン!!


ドガァァッ!!


永遠「ふぅっ…危機一髪だな!!」


櫻「永遠…ありがとう!!」


永遠「礼ならいい、それよりも

目の前の敵を見て…!」


櫻「うん…!」


高城「オラァァッ!!」


ドゴォッ!!


矢澤「ぐ…っ!!」


達也「ぐはぁっ!!」


高城「小賢しいんだよ…

3流共が…!!」


ドガァァァァァ!!


華途葉「何…!?」


神野「危ない、華途葉…!!」


バキュウンバキュウンバキュウン!!


ドゴォッ!!


華途葉「っ…神野…!」


神野「…でも、あっちの二人が…!!」


飛那世「っ…オラァァッ!!」


バキュンバキュンバキュンバキュン!


ドゴォッ!


矢澤「っ…」


飛那世「永遠っ!!」


永遠「ぐ…っ!!」


達也「ぐ…これで、終わりか…!?」


トガァァァァッ!!


永遠「っ…させるかぁぁぁぁっ!!」


バキュウン!!


トガァァァァァァァッ!!


達也「な…っ!!」


永遠「…!!」


達也「お前…何故…!!」


永遠「…私は、お前のことを

絶対に許さない…」


永遠「でも、戦いに私情は

挟まないスタイルでね…」


達也「…フン…我が娘の成長を

見るのはいいことだな。」


永遠「ハッ…思ってもないことを!!」


ブリザード「…まずい、そろそろ

陣形が崩れる…!!」


優来「お願い、凍歌…

戻ってきて…!!」


ブリザード「凍歌…凍歌…っ!!」


凍歌…!!


ーー


凍歌「ぐ…っ…」


…頭が妙に重い…何だここは…


暗くて…何も見えない…私は…

死んだのか?


…そうか、失敗したのか…

やっぱり…無理だったんだ。


…ここが、地獄なの…?

こんなクローンでも、地獄に

行けるんだね…


あぁ…ごめん、みんな…

私、やっぱり何もできなかったよ。


このまま…朽ちるのを待つだけなんだ、

もう…終わりなんだ…


…やり残したこと、いっぱい

あったのに…やだな…


何か見える…走馬灯、なのかな…


これは…なんだろう…


ブリザード「ぐっ…灯華、右を…!」


灯華「分かった…!!」


柳太郎「俺は奴に突っ込む…悠介、

後ろを任せる…!!」


悠介「おうよ、俺がいるからには

お前らに攻撃は通さねぇ…!」


優来「っ…来るよ、伏せて!」


ブリザード「っ…!!」


ドゴォン!!


柳太郎「ぐっ…強い、まるで

焼けるようだ…!!」


ブリザード「柳太郎…行けるか…!?」


柳太郎「当たり前だろ…?

何の為にここまで来たと

思ってんだ…!?」


ブリザード「ハハッ、分かってんじゃ

ねぇか…!!」


ブリザード「行くぞ…これで

最後だ…!!」


悠介「…行くぞ、全員…

突っ込めぇぇぇっ!!」


灯華「はぁぁぁぁっ!!」


何これ…昔のメンバーで…神吹と

戦ってるの…?


もしかしたら…こんな世界も

あったのかな。


けど…それも、今は消えて無くなる

未来…なんだろう。


私が…強ければ、こうなることだって

なかったのにな…


…段々と、落ちていく感覚がする

のが分かる…私も…これで


終わりかな…?


あぁ…みんな…こんな私で…ごめんね…



待って!!


凍歌「な…っ!?」


凍歌「この声は…!!」


灯華「灯華…間に合ってよかった。」


凍歌「と…灯華…!?」


灯華「…もう少しで脳死する

所だった、危なかった…」


凍歌「脳死って…まさか、

私まだ生きてるの…!?」


灯華「えぇ、なんとか一命を

取り留めているわ…」


凍歌「じゃあ…なんで灯華がここに?」


灯華「…稀に、死者が生者の

頭の中に残留思念として現れる

ことがあるらしいの…今回は、

おそらくその例でしょうね…」


凍歌「灯華…灯華はもしかして、

この状況から助かる方法を

知ってるの…!?」


灯華「えぇ…ひとつだけ。」


凍歌「本当に…!?教えて、

その方法を…!!」


灯華「…今、あなたは中途半端な

シンギュラリティを迎えている

状態にあるの…」


凍歌「中途半端なシンギュラリティ…?」


灯華「脳がわずかに作用してるから

自我はあるけど…人工知能が

機能してるから人工知能と脳みその

板挟みになってる。」


灯華「…だから、自分が何なのか、

分からなくなるの…」


凍歌「…ねぇ、どうすれば

その状態から抜け出せるの…?」


灯華「…何かしら、脳に強い

外的要因が送られる必要がある…」


灯華「辛い経験を乗り越えることで

感情を完全に習得させて、無理矢理

自我を芽生えさせるしかないわ…」


凍歌「で、でもどうやって…」


灯華「…今から、私はあなたに

幻影を出す…耐えられれば

シンギュラリティを迎えられる、

飲み込まれれば…」


凍歌「…やるよ、私は…。」


灯華「…分かった、健闘を

祈るわ…」


凍歌「…待って、これで灯華とは

最後なんだよね…?」


灯華「…えぇ、そうよ…」


凍歌「…なら、1つだけいい…?」


灯華「…何?」


凍歌「…私のことを、創ってくれて

ありがとう…苦しいこともいっぱい

あったけど、楽しかった…」


灯華「…私も、生まれてきてくれて

ありがとう…あなたは、私の

最高傑作よ…」


凍歌「えへへ、灯華…」


灯華「…もし、生きて帰ることが

できたら…ブリザードと優来に

伝えたいことがあるの…いい?」


凍歌「…それは?」


灯華「私は…ブリザード、

あなたのことを心から

愛していたと…」


灯華「優来には…私のことを

最期まで見放さずに居てくれたこと…

感謝してると…」


灯華「…だから、私のことは

どうか忘れてほしいと…伝えて。」


凍歌「…分かった、絶対…

伝えるよ。」


灯華「…任せたわ、この地球のことを…」


灯華「ブリザードのこと、優来のこと…

よろしくね。」


凍歌「…うん!!」


ーー


凍歌「っ…ここは…」


ブリザード幻影「…」


凍歌「な…っ、ブリザード…!?」


ブリザード幻影「…死ね。」


凍歌「な…」


バキュンバキュンバキュン!!


凍歌「ぐ…っ!?」


…銃弾は当たってる、けど…

傷は受けていない。


…私の手には既に銃が握られていた、

やるしかないんだ…


幻影とはいえ…ブリザードを…!!


ブリザード幻影「はっ!!」


バキュンバキュンバキュン!!


凍歌「ぐ…がぁっ!!」


っ…痛い、なんて早い銃撃なの…


これじゃ…負ける…どうすれば…


凍歌「はぁっ…はぁっ…」


ブリザード幻影「どうした…?

もう終わりか…?」


凍歌「…ふふっ。」


ブリザード幻影「何がおかしい…?」


凍歌「ブリザードって…

昔から騙されやすいよね。」


ブリザード幻影「は…?」


凍歌「フフ、私は今から

動かずにブリザードに

攻撃を与える…」


ブリザードの幻影「ハッタリか…?

そんなことしたところで

俺は倒せねぇよ…!!」


凍歌「それはどうかな…フフッ…」


凍歌「…あ、あそこにUFO!!」


ブリザード幻影「は…?」


凍歌「今だ…っ!!」


ブリザード幻影「何…!?」


凍歌「はぁぁぁぁぁっ!!」


バキュンバキュンバキュン!!


ブリザード幻影「がぁぁっ…!!」


凍歌「まだだ…まだ、戦える…!!」


凍歌「帰ったら…伝えなきゃ

いけないんだ、ブリザードに…

灯華の想いを…私の伝えたいことを…!」


凍歌「そうだ…私は…一人じゃない…!!」


凍歌「みんな…見てて…」


凍歌「もう…私は…弱いままでは

終われない…だから…」


凍歌「破邪悲の代償も…なにもかも…

乗り越えてみせる…私が…

あいつを倒すんだ…」


凍歌「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


…その瞬間、体の震えが止まって、

感情を自在にコントロールできるような

気がした…


これなら…行ける…!!


ブリザードの幻影を葬ることが…


っ…なんだ、世界が…崩れて…?


ブリザード幻影「…」


灯華「そうよ凍歌…今なら行けるわ。」


灯華「私の愛した世界を…

憎んだ世界を…頼んだわよ。」


凍歌「っ…」


凍歌「っ…うぉぉぉぉぉっ!!」


ガシャ…


凍歌「はぁぁぁぁっ!!」


ブリザード「っ…凍歌!?」


優来「意識を取り戻した…!?」


華途葉「え…!?」


飛那世「しかも…雰囲気が

変わって…これは、

どうなってる…!?」


高城「な…あれは…!?」


高城「念動力…っ!!」


ウィーン…


凍歌「ふ…っ!!」


べキン!!


ブリザード「っ…!?」


神野「念動力攻撃を弾いた…!?」


高城「おかしい…おかしいおかしい

おかしいおかしい!!」


凍歌「バカだね…破邪悲の情報量を

耐えきった私の人工知能にそんな

小細工通用しないよ!」


飛那世「え…これは…

行けるの…?」


永遠「っ…行っけー!!凍歌ー!!」


凍歌「おうよ…!!」


凍歌「思い知って…この私の

圧倒的な力を…!」


バキュンバキュンバキュン!!


高城「ありえないありえない

ありえない!!嘘よこんなの!!

インチキよ…!!」


凍歌「それを言うなら私を創った

人に言って…!!私を

創った灯華に!!」


凍歌「灯華は…この世界で最強の

科学者なんだ…そんな人が

創った私に…勝てるの…!?」


バキュンバキュンバキュン!!


高城「どうしよう…どうしよう

どうしようどうしよう…!!

死にたくない…!!」


凍歌「それが…アンタが殺した奴らが

殺されたときに抱いた感情だ…

思い知れ…!!」


凍歌「そして…冥土の土産に

教えてやるよ…」


凍歌「私の人工知能に、

限界なんてない…そんな壁は

全部越えてやる!!」


高城「が…っ…!!」


凍歌「私はお前が何度立ち上がろうが…

何度でも殺してやるよ…!!」


高城「っ…まずいまずいまずい…!!」


凍歌「はぁぁぁぁっ!!」


高島「おいおい…本当に、

倒しちまうぞ…!!」


矢澤「想定外だ…ありえねぇ…!」


優来「凍歌…やったんだね…!!」


飛那世「こんなこと…ありえない…

でも、アンタ最高だよ!!」


ブリザード「凍歌…っ!!」


ブリザード「もう…全部

終わらせてくれ!!」


凍歌「はぁぁぁぁっ!!」


高城「ぐ…っ!!」


ウィーン…


高城「が…っ…頭が…!?」


凍歌「おりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」


ブリザード「行けぇぇぇぇっ!!」


克己「は…っ!?」


雪村「…!!」


高城「っ…!!」


バキュウン!!


高城「が…ぐ…っ…」


高城「私は…ま…だ…」


高城「こんな…はずじゃ…

くそ…っ…」


高城「奴は…何をしている…神吹は…

私の…本当の…ぐっ…は…ぁっ…」


高城「が…っ…」


バタッ…


永遠「やった…のか…?」


ブリザード「やった…やったんだ…!!」


凍歌「い…やったぁぁぁぁっ!!」


飛那世「よっし…これで…

高城は…!!」


優来「死んだ…?死んだよね…?」


華途葉「まさか…破邪悲の力を入れた

弾丸なんて…規模が違うわね…」


凍歌「ふぅ…なんとか、

上手く行ったよ…」


凍歌「これで成功するなんて…

想像もしてなかったけど…」


松山「まさか…こんなこと…

ありえるわけ…」


雪村「高城を殺ったか…だが、

我々には勝てるかな…!!」


凍歌「へぇ、殺る気…?

私はいいけど…そっちは

その兵力で持つの?」


雪村「ぐ…っ…!!」


達也「なぁ、こっちはお前がいるとは言え

消耗しきってる、これじゃこっちに勝ち目は…!」


雪村「そんなこと、分かっている…!!」


雪村「…今日の所はここまでに

してやる、だが…次はない…」


達也「な、なぁ…神吹様は…!!」


雪村「…今は引くしかない、

好機はいずれ来る…。」


松山「クソ…いいようにやられて、

いいのかよ…」


山野「…神吹様になんて言うか…」


雪村「次こそは…貴様らと

決着を付ける。」


雪村「私と…アンタらの長きに渡った

物語を終わらせてやる。」


ブリザード「…!」


飛那世「…まさか…いや、

そんなわけないか…」


ブリザード「飛那世…?」


飛那世「いえ、なんでもないです…」


ブリザード「…そうか。」


飛那世「…。」


優来「と、凍歌…っ!!」


凍歌「優来…!!よかったよ…!!」


優来「っぐ…凍歌ぁ…っ!!」


凍歌「も、もう…泣かないでよ…

こっちまで泣きそうになっちゃうよ…」


ブリザード「…本当に…みんな、

生きててよかったよ…」


神野「…でも、なんで意識が

戻ったの…?雰囲気も別人の

ようだし…戦いもありえないくらい

強かった…」


凍歌「…私ね、意識がなかったとき…

灯華に会ったんだ。」


ブリザード「な…灯華に…!?」


凍歌「なんかね…残留思念として

意識の中に入ったんだって…」


ブリザード「俺も…そんなことが、

一度あった…!」


凍歌「え、ブリザードも…?」


飛那世「私もです…」


凍歌「飛那世まで…どうなってるの?」


飛那世「…どうやら、前世で

関わりが強かった人が

出てくるらしいの…」


凍歌「前世で…灯華と、どこかで

出会っていたのかな…」


凍歌「…それで、その灯華が私のことを

助けてくれたんだ…」


凍歌「…灯華から、ブリザードと

優来に伝言を預かってるの…

1ついい?」


優来「え…私も?」


ブリザード「灯華から…何だ?」


凍歌「灯華は…ブリザードのことを

心から愛していた…と。」


ブリザード「っ…」


華途葉「…灯華…」


凍歌「そして優来には、

最期まで見放さずに居てくれて…

感謝してるって。」


優来「灯華…ふふっ…こちらこそ…」


凍歌「…だから、どうか

忘れてほしいって…」


ブリザード「っ…ははは…灯華…っ、

ほんとに、バカかよ…」


ブリザード「俺らが…灯華のこと…

忘れられるわけ…

無いじゃないかよ…!!」


ポタッ…


ブリザード「灯華…っ、お前は…

ほんとに、本当に…っ…

灯華…っ…!!」


優来「ふふっ…灯華、残念だったね…

私達が…灯華のこと…忘れるわけ、

ないじゃん…!!」


永遠「灯華のことは、英雄として

後世に語り継ごう…」


ブリザード「あぁ…死してもなお、

俺達を鼓舞してくれた…

英雄として。」


ブリザード「英霊として

世界を守ってくれんだ…

高くつくよ…」


飛那世「…忘れません、私達も…」


櫻「うん…あんまり話せなかったけど、

いい娘だったもんね…!」


ブリザード「…灯華、灯華は

こんなにも俺達のことを奮い立たせて

くれたんだ…」


ブリザード「…ありがとう、今は

せめて…静かに休んでいてくれ。」


ブリザード「柳太郎に…よろしく頼む。」


ブリザード「…すぐそっちまで行くから。」


ブリザード「…風邪、引くなよ…。」


優来「どうか、健康にね…。」


優来「…あ、ねぇ…凍歌、さっき

言いそびれたんだけど…これ!」


凍歌「何これ…資料?こんなの…

あったっけ。」


優来「きっと…灯華が、凍歌のために…

残してくれたんだよ。」


凍歌「え…?」


凍歌「…何…これ…」


…私は、購いきることのない

罪を重ねてしまった、私の研究で

多くの罪のない人を死に追いやって

しまった…


救えるはずの命を目の前で葬って

しまったのと同じ…許してほしい

わけじゃない…だけど…私も

研究者として、できることは

しなくてはいけない…


だから…せめて、この娘には…どうか、

希望を見出してほしい…


この…凍えた世界に…その歌を

響かせるように…希望を、世界中に

届けてほしい…そう思ってた。


けど…それすらも忘れてしまった、

あの娘には本当に悪いことをした…


あの娘の存在まで…

否定してしまうなんて。


けど…せめて、償いをしたい…


あの娘の脳は、機械でできる…

だから、機能を加えることもできる…


…凍歌の脳を破邪悲の攻撃を

受けにくいように改造する。


…償いにはならないけど…

できることなんてこれくらいしかない。


…せめて、この娘を創った身として…

もっとしてあげたいけど…

これが限界。


私には…何もできなかった。


けど…償いはきっとこれからする。


この戦いが終わったら…みんなで

色んな場所に行きましょう、

きっと楽しいはず…


…この世界の、本当の姿を見に

行きましょう、きっとそれはそれは

美しいものでしょう…


楽しみね…まだ、死ねないわ…


凍歌「っ…ぐ…灯…華…っ!!」


ブリザード「灯華…凍歌のために

ここまで考えてたのか…」


櫻「これは…泣ける、ね…」


凍歌「灯華…っ、私はもう…これで、

十分なんだよ…!!」


凍歌「なのに…どうして…

そんな…っ…そんなことっ…!!」


ブリザード「凍歌…。」


凍歌「私は…私は…っ…」


凍歌「もっと、灯華と…

居たかったよ…!!」


凍歌「ぐ…っ…!!」


優来「と…凍歌…!!」


凍歌「…いや、ダメだよね…

こんな所で泣いてたら…

灯華のためにならないから…」


凍歌「うん…約束する、私は…

もう、泣かない…」


凍歌「灯華のためにも…

強くなるんだ…!」


優来「そうだね…こんな所で

立ち止まってたら、先に逝ったみんなに

示しが付かないよ…」


飛那世「…えぇ、そうですね…

ここに来るまでに死んだ人たちの

ことは忘れちゃダメ…ですね…。」


克己「さて…と、もう話は

終わりか?戻るぞ、ブリザード…」


ブリザード「…何勘違いしてる?」


克己「…は?」


ブリザード「俺はそっちに

戻る気はない、また…皆のところに

戻らせてもらう。」


高島「は…!?ちょっと待て、

おかしいだろ…!?」


ブリザード「…俺は最初からお前らの

手先になる気はない…」


凍歌「残念だったね、私はブリザードが

あなた達の元に行く前にブリザードと

約束を付けたの…」


凍歌「高城を倒したら、こっちの

元に戻ってきてもらうって…」


克己「…いや、待てよ…そんなの

聞いてないぞ…」


ブリザード「…教えてないからな。」


克己「おいおい…困るよ、

いきなりそんなこと…」


ブリザード「悪いが…俺は、俺の

したいようにさせてもらう、

邪魔させるつもりはない…」


克己「チッ…こうなったら

力づくでも…」


矢澤「よせ、今は辞めろ…

今やった所で返り討ちに会うだけだ。」


克己「チッ…そうかよ…」


タッ…


矢澤「おい…待て!!」


克己「…このままで終わってたまるか…」


克己「世界を作り変えるのは…

俺ら兄弟だ…」


克己「…ただじゃ済まさねぇからな…

覚悟してろよ…クソが…」


ブリザード「…」


凍歌「…これで、ひとまず

一件落着かな?」


ブリザード「あぁ…このまま…

上手く行ってくれたら一番だが。」


飛那世「…ただ、高城を始末できたのは

ほんとにデカい収穫ですよ…」


華途葉「えぇ…まさか、凍歌が

ここまでやるとは

思いもしてなかったわ…」


凍歌「私自身にも…こんな力が

あるなんて、分からなかった。」


凍歌「…けど、これがあるなら…

きっと神吹にだって勝てるかも…」


神野「…希望的観測でしかないけど…

ありえないわけじゃない。」


ブリザード「…油断はできない、だが…

高城を殺す事ができた…とりあえずは

安心だな…。」


飛那世「…けど、これで終わりって

訳でもないでしょう…?」


ブリザード「あぁ…まだ本命が

残ってる、むしろこれからが

本番だ…。」


永遠「多分…近いうちに神吹との

本格開戦になりそうだね…。」


櫻「うん…また神吹と

戦うまでの時間は近そうだね…」


神野「えぇ…もう少しで、

奴にまで辿り着けるのね…」


優来「…そっか、もうあと少しの

所まで来てるんだ…」


ブリザード「…神吹の命日は

近いな…」


飛那世「えぇ…破邪悲さえ

あればgmtでも殺すことが

できますからね…」


凍歌「けど、残ってる奴らも

強い奴ばかりが残ってるよね…」


ブリザード「克己達も倒さなければ

いけないしよりにもよって雪村が

まだ生きているからな…」


永遠「その辺りも警戒しなきなきゃね、

私も…私自身の宿命と決着を

付けないと…」


凍歌「…それに、12鬼もまだ

残ってるし、油断はできないね…」


ブリザード「…もし誰が相手だろうと

殺すだけだ、そうだろう…?」

 

凍歌「うん…どんな強大な敵でも

今の私なら…やれる、そんな気が

してくるんだ…。」


優来「…凍歌、もう…大丈夫なんだね。」


凍歌「あぁ、今の私はもう…

負けたりしないよ。」


神野「それは心強いわね、

じゃ、これからもよろしく

頼むわよ…。」


凍歌「うん、期待しててね…」


ブリザード「だが…しばらく戦いは

起きないだろう…ある程度、

休みは取れるかもな…」


凍歌「え、ほんとに…?やった!」


永遠「…なら、よかった…神吹との

戦いが始まってからずっと休み無し

だったからありがたい…」


華途葉「…でも、いいのかしらね…

休んでる間に神吹が攻めて来たり

なんかしたら…」


櫻「大丈夫だよ、まだ新しい

基地の場所はバレてないから…。」


ブリザード「…そうだな、だが

警戒する必要はありそうだな…。」


優来「…さて、ここにずっと居るのも

何だしそろそろ基地の方に

戻ろっか…。」


飛那世「そうですね、あれの死体が

ある所で話したくはないですし…」


凍歌「さて、帰ってご飯でも

食べよう、私お腹減っちゃった。」


櫻「私もー!」


華途葉「…ハァ。」


櫻「ねぇねぇ早く帰ろ、私

ご飯食べたくなってきちゃったー!」


神野「落ち着いて、そんな

慌てないで…」


華途葉「…危機感も何もなさそうね…」


ブリザード「ま、早く帰ろうぜ…」


優来「うん…そうだね、みんな

待てないだろうし…」


ブリザード「あぁ…そうだな。」


ブリザード「…」


束の間かもしれないが、なんとなく…

今までの平和が戻ってきたような、

そんな気がする…


だが…そこに辿り着くまでに

犠牲を出してしまった…もう、

元には戻れやしないんだ…


…これからは克己も敵になる、

そうなれば…殺す。


何をしてでも…敵は全て

消し去る、それだけ…

それだけしかできない。


今の今まで、できることはしてきた…

それでも、それですべての命を

救うことができる訳じゃない…


散々思い知らされた…けど、

無駄になったわけじゃない…。


その経験が…今の俺の血となり…

肉となり…憎悪となり…力に成る。


俺は…そのおかげで、今

生きている…。


昔、皆と同じ季を生きていた…

その証があれば、俺は

どこまでも行ける…


その中で…灯華は今も生きてる、

そして…これからもそれは変わらない。


灯華はこれからも…俺のことを見守って

いてくれる、そう思うしかない…


…じゃないと、俺の中の何かが

終わってしまいそうだ…


俺を人として保ってくれているそれは

脆く、弱い…


けど…それを補うものは…

確かにある。


俺は…ここに居る、今も…

生きてる。


俺は…死なない、死ねない…

だからこそ、全ての業を背負う

必要がある…。


…いつかは、みんなの終わりも

見届けなければならない。


…それまでは、せめて…笑っていたい。


…皆のことは、俺が守る…

もう…誰一人死なせたりはしない…


ブリザード「…悪い、俺…

少し外すよ、すぐに戻る…」


優来「え、ブリザード…?」


…けど、清算は付けなきゃいけない。


ーー


雪村「神吹様…ご報告が。」


神吹「言わんでいい、それより…

興味深いものを見つけた。」


雪村「興味深いもの…?」


神吹「これを見ろ…これは、

高城が残したクローン、

その軍団だ…」


雪村「何ですって…?高城は

そんなものを…」


神吹「油断してたからこれを

出さなかったのだろうが…誤算

だったな…」


神吹「そしてこれを…たった今私に

従うようプログラムを書き換えた。」


雪村「…左様でございますか…」


神吹「…ここまで、全て算段通り

ってことよ…あの女は邪魔だったが…

計画通りに進んでよかったよ。」


雪村「計画…とは?」


神吹「…あぁ、話してなかったか…

いいだろう、もう話してやる…」


神吹「俺は…この世界を破壊する。」


雪村「え…?」


神吹「俺の頭はさ…生まれつき

タガが外れてんのよ…ま、これも

母親からの遺伝だろうがな…」


神吹「感情とか…そう言うのが

分からなかった、そして…そんな

俺のことを理解してくれなかった

世界が…大嫌いだった。」


神吹「…こんな世界なら、いっそ…

無くなってしまえばいい、

この手で…終わらせたいんだよ。」


神吹「おかしいってことは分かってる…

でも、自分で自分を止められないのさ…

だから、こんなことしちまった…」


雪村「神吹様、貴方は…」


神吹「…分かってる、俺は神吹じゃない、

何者でもない…無だ。」


神吹「…俺って、何が

したかったんだろ…まぁ…

今はそれすらどうでもいい。」


神吹「俺に付いてきてくれるか…?

たとえ、全てを焼き尽くすとして…」


雪村「…私が神吹様に従うのは

当然の道理、たとえ中身が

入れ替わろうがそれは

関係ないことです…。」


神吹「そうか…ありがとうな。」


神吹「…間違ってようがどうでもいい…」


神吹「全てを殺し、やき尽くす…

それが俺なりの、救済だ…」


神吹「父さん…母さん、こんな

クズでごめんな…けど、俺は…

やるよ。」


神吹「なぁ…俺達は殺し合うことで

しか分かり合えないんだ、

それが…この世界のルールだから。」


神吹「憎ましいのは…強いて言うなら

こんな俺を創ったこの世界…だな。」


ーー


俺には…俺の中には何もなかった。

生まれてから…ずっとだ。


…けど、俺の乾きは突然

満たされるようになった…


…そう、殺しの瞬間…それこそ

何もなかった俺の乾きを満たす

物だった…


鮮血で彩られし死こそが…

俺の心を動かした。


異常だってことは知ってる、

でも…俺は間違ってるとは

思わない。


…そう思ったときには俺はもう

行動に移していた…


数え切れないほどの殺しを

してきた俺にとっては神吹を

始末することなど造作もない

ことだった…


…ずっと、俺が生まれてきた意味なんて

考えてこなかったんだ…


けど…最近になってようやく

理解できたような気がしたんだ…


俺の生まれた意味は…この世界を

全て滅して全てを消し去ることなんだと…


全てのものに終わりがあるように…

人類を滅ぼすために破邪悲と言う名の

神が創った存在…それがきっと、

俺なんだ…


そう確信がついたとき…震えが

止まらなかった。


こんなクズでも…生まれてきた

理由があったんだって。


それから…俺は、完璧に悪魔へと

成り果てたのだ…


全ては…崇高なる計画のため、

動き始めるのだ…


全ては…破邪悲の赴くままに…


ーー


ブリザード「…灯華。」


ブリザード「…灯華が死んだのに

挨拶もできなかった…ごめん。」


ブリザード「俺がもっと強ければ…

きっと、高城も殺す事ができた…

けど、俺にはこれが限界だった。」


ブリザード「…俺は、本当はずっと…

みんなに負い目を感じてたんだ。」


ブリザード「昔の俺はぱっとしなくて…

何の個性もなかった、だから…

みんなに憧れて…嫉妬してた。」


ブリザード「俺は灯華みたいに頭良く

無かったし、優来みたいに優しくも…

柳太郎みたいに芯が強いわけでも

なく…悠介みたいに強くもなかった。」


ブリザード「…ずっと、何も

できなくて…結局、大切な物を

守れなかった…今もそうだ。」


ブリザード「俺は今も…あのまま、

弱いときのままなんだ…」


ブリザード「…教えてくれ、

俺はどうすればいい…」


ブリザード「今も、俺の頭の中で

黒いもやがかかって…取れないんだ。」


ブリザード「…みんなを守ることが

できるか…分からない。」


ブリザード「灯華だって…

助けられなかった。」


ブリザード「こんな俺のことを…

好きだって…言ってくれたのに。」


ブリザード「…みすみす死なせて

しまった、悔やんでも悔やみきれない…」


ブリザード「…泣きたい気もするが…

もう、涙も枯れたみたいなんだよ…」


ブリザード「…俺は、この感情を

何処にぶつければいい?

俺がこの先生きるには…

どうすればいい?」


ブリザード「…なぁ…」


ブリザード「…ん?なんだこれ…」


…墓に梱包されてる何かが

あるのを見つけた…


ブリザード「…何だこれ、

誰が置いたんだよ…」


ブリザード「…」


ふと、気になった…それを手にとって、

開けてみた…


ブリザード「…え?」


…俺は、その中身を見て、驚愕した…


ブリザード「…マシュマロ?」


…灯華は俺の好物がこれだって

知ってた……よく、灯華がマシュマロを

俺に分けてくれたから…好きになった。


まるで…俺がここに来ることを

理解していたような…

そんな気がした…


ブリザード「…また、

分けてもらったな…マシュマロ…」


ブリザード「…食えってことか?

夜ご飯が腹に入らなくなるよ…」


ブリザード「…」


口にすると…それは、あの時と

変わらない…同じ味だった…


ふと…かつてのことを

思い出す…


それは…儚くて…虚しくて…

けど、とても美しいもの…


もう手を伸ばしても届かない…

けど…確かに光っていた。


かつて…俺達が生きていた世界の

こと…今でも鮮明に映る…


ブリザード「…あぁ…なんか、

懐かしいな…」


ブリザード「…でも、一人で

食べても…美味しくないよ…」


ブリザード「灯華…また

会いたいよ…」


ブリザード「…なぁ、何処に

居るんだよ…ほんとに、

死んだのか…?」


ブリザード「…やっぱり、嫌だよ…

こんなの…」


ブリザード「なぁ…今もどこかに

居るのか…?なら、出てきてくれよ…」


ブリザード「なぁ…灯華…」


全く…ブリザードは

心配症だな…


ブリザード「…え?」


…ブリザードは、一人じゃないよ、

皆が居てくれるから…。


ブリザード「…灯華…?」


…大丈夫、ずっと見てるから…。


ブリザード「灯華…灯華なんだな…!?

どこだ、どこに居るんだ…!!」


…大丈夫、いつか…ブリザードのこと、

迎えに行くから…待ってて。


ブリザード「と、灯華…?」


ブリザード「灯華…!!」


ブリザード「灯華…っ!!」


ブリザード「…灯華…どうして…」


ブリザード「…そうだな…

そうだよな…」


ブリザード「…待ってるから。」


ブリザード「…いつでも来ていいぞ…

その時には…もしかしたら、

その時には俺は…お爺ちゃんに

なってるかもしれないけど…」


ブリザード「…それでもいいなら、

俺のこと、迎えに来てくれよ…

それまで、頑張るから…」


…形もない約束だけど…

待つことだけならできる。


…気長に待とうか、いつか、

その日が訪れるまで…


大丈夫だ、俺は…

一人じゃないから。


ブリザード「…俺は、もう行くよ…」


ブリザード「柳太郎と一緒に

のんびりしててくれ…。」


ブリザード「…そしてどうか、

いつまでも…俺らのことを

見守っていてくれ。」


ブリザード「俺は…ここに居るから。」


ーー


ブリザード「…ただいま。」


飛那世「あー!先輩、どこ

ほっつき歩いてたんですかー?」


ブリザード「…少し、用があって…」


飛那世「もう、用ってなんなんですか…」


優来「そうだよ、私心配

したんだから…」


ブリザード「…すまない、私用だ。」


飛那世「えー、教えて

くれないんですか…?」


ブリザード「…別に面白くもないから

教える必要はない…」


飛那世「そうなんですかー?

私は聞きたいですけど…」


ブリザード「…知っても、

どうにもならんと思うのだが…」


飛那世「それでも聞きたいです。」


ブリザード「…ハァ…どうせ

信じてもらえんと思うがな…」 


飛那世「はて…それで、

何でしょうか…」


ブリザード「…俺、灯華に最後に

挨拶できてなかったから、

灯華の墓まで行ってたんだ…。」


優来「あ、一人で行ってたのって

それが理由…?」


ブリザード「あぁ、俺一人で

終わらせたかったからな…」


飛那世「先輩って、そう言うとこ

律儀なんですね…。」


ブリザード「…ああ、せめて

それくらいはしたいと思ってな…」


ブリザード「…それで、墓にまで

行ったらさ…灯華に会ったような

気がしたんだ…」


飛那世「え…?灯華さんに?」


優来「え、それってどう言うこと…?」


ブリザード「灯華の墓にマシュマロが

置いてあってさ…それを食べてみたら

どこからか灯華の声が

聞こえてきたんだ…」


優来「灯華の声が…?」


ブリザード「あぁ…原理は分からないが、

間違いなく灯華はそこに居た…。」


ブリザード「…普通に考えたら

居る訳も無いだろうが…確かに、

俺には…その声が聞こえた。」


飛那世「え、幻聴なんじゃ

ないんですか…?」


ブリザード「…俺もそう疑ったが

本物の灯華の声が聞こえたんだ…」


優来「で、でもどうして

そんなこと…」


ブリザード「…分からない、ただ…

俺は…灯華のことを忘れることは

無いだろうな…」


ブリザード「…灯華は、まだ…

俺達の中で生きてる、そして…

これからも、俺らが覚えてる限り

死ぬことはない…」


ブリザード「…灯華のためにも、

これから先負けるわけには行かない…」


飛那世「…えぇ、もう…負けは

許されない、確実に…殺しましょう。」


優来「はぁ…なんか、難しい話に

なっちゃったね…」


飛那世「分かんないですね、

死人が生きてる人の前に

出てくるなんて…」


ブリザード「あぁ…考えられないな、

どう言う原理なんだろうか…」


優来「にしても、破邪悲は

どうやって扱おうか…」


ブリザード「そうだな…俺も、

破邪悲をなんとかしなきゃだな…」


優来「うん…破邪悲に関しては

凍歌に何とかしてもらうしか

ないのかな…」


ブリザード「あぁ、恐らく、

そうだな…」


飛那世「破邪悲の解析が進めば

適合率を上げず破邪悲を使用する

方法とかが見つかればいいですが。」


ブリザード「そうだな…それが

見つかれば俺達も苦労しないんだが…」


優来「…でも、破邪悲の解析って

ほとんど全部終わってるんでしょ…?

厳しいよね…」


ブリザード「そうだな…なんとか

ならない物か…」


優来「うん…死活問題だし

解決できたら戦局も大きく変わると

思うけど…現状、しんどいよね…。」


ブリザード「あぁ…だが、

そう上手くはいかない…。」


ブリザード「これからは…俺達自身の

力でどうにかしなくてはな…」


飛那世「…ねぇ、そう言えば

1ついいですか…?」


ブリザード「…どうかしたか?」


飛那世「しばらく休めるんですよね、

だったら1つやってみたいことが

あるんですが…。」


ブリザード「何だ…?言ってみろ。」


飛那世「私、しばらくスラムに

言ってなかったので今のスラムの

現状を見てみたいんです…」


ブリザード「…なるほど、

けど、どうしてそう思った…?」


飛那世「確かめたいんです、

私達のやってきたことが

少しでも意味があったのか…。」


飛那世「先輩や皆さんとも一緒に

行って…見てほしいんです、

今の世界を…」


ブリザード「…分かった、

行ってみようか…」


飛那世「ありがとうございます…

優来さんも行きますよね…?」


優来「うん、私も…興味ある。」


飛那世「…それでは、

近いうちに行きましょうか…」


ブリザード「あぁ…俺も、スラムを

生で見るのは案外久しぶりかも

しれないな…」


飛那世「えぇ、ここ数年はスラムを

立ち寄る機会すら無かったですからね…」


優来「依頼でもスラムに行くことは

あんまり無いしね…」


ブリザード「…けど、これだけで

そんなに変わるのか…?」


飛那世「…見たら分かりますよ、

それに…ここ最近はここら一体の

犯罪率も減ってるらしいですし。」


ブリザード「え…?そうなのか?」


優来「うん…噂に聞いたけど、

私達がマフィアを壊滅させまくった

からマフィアによる犯罪が

減ってるんだって…」


ブリザード「へぇ…そんなこと、

考えてもなかったよ…」


飛那世「それが本当か、試して

みたいんですよ…」


ブリザード「やる価値は大いに

あるな、みんなを誘って

行くとでもするか…」


優来「うん…いい結果が

出てるといいけど。」


飛那世「…我々が神吹と戦ってるのは

自分達の復讐のためだけじゃなくて

世界を平和にすると言う意味もある…

だから、もし改善されてるとすれば

我々の行為は大いに意味があったと

言うこと…。」


ブリザード「…俺達がやってることで

世界が少しでも良くなるなら…

やる意味もあるのかな。」


飛那世「えぇ、それが人のために

なってるのであればね…」


ブリザード「…それは、見れば

分かることか…。」


飛那世「はい、きっと…私は、

私達のしたことで少なくとも

ある程度の命は救うことができて

いると思います…」


優来「うん、私達けっこうな

数のマフィアを始末してきたしね…」


ブリザード「…命を救うと言うことは

命を奪うことにもなる…それは

命のやり取りを最前線で見てきた

俺達が一番分かってる…」


ブリザード「だからこそ…命の

重みは、大きい…それは、

みんな分かってるな…」


飛那世「…えぇ。」


ブリザード「…スラムを見に行くって

ことは、命が最も軽視される

場所を覗き見るってこと…」


ブリザード「俺は旅の途中で何度か

スラムを見たが…その現状は悲惨

そのものだった…」


ブリザード「…本当に、生き地獄の

ようだったんだ…。」


ブリザード「…無論、飛那世は

その中で生きてきたから理解は

すぐに追いつくだろうが…」


飛那世「えぇ…あそこに居たときは

本当に生きることが限界でした…」


ブリザード「知っての通りあそこは

犯罪が横行するこの世界の中でも

数多くの犯罪が起きる場所…

油断はできない。」


優来「うん、分かってる…あそこでは

何が起きるか分からない。」


ブリザード「だからこそ、行くんなら

できるだけ準備をしてから行こう…

…スラムにはいい思い出が無いしな。」


飛那世「…えぇ、私も早いうちに

準備しておきますね…」


ブリザード「あぁ…分かった。」


…スラムか…しばらく行かなかったが

あそこは尋常じゃないくらい野蛮な

場所で、すぐ命を取られるような

危険な場所だった…


何故そうなったのかは単純な話で、

古来のスラムと言う場所の由来通り

あそこは本来いた場所を追い出された

人が集まる吹き溜まりのような

場所だったからだ…


…そうなれば、そう言う人間が

集まるのは当然なこと、

まともな人間は…3日もせずに

殺される。


…そう言う場所ならギャングや

マフィアも集まりやすい…

人間を簡単に殺せるし、

人身売買も容易だ…


…あそこにいい思い出が無い理由は

旅をしてた頃その現場を

見てしまったからだ…


快楽殺人だった…臓器をほじくり出され

残酷に殺されたんだ。


その情景は今も俺の中に残ってる…

散々だった、あの場はなんとか

乗り切れたが俺はあそこで

死んでいてもおかしくなかった…。


…正直もうあそこはごめんだと

思ってたが…スラムは、この世界を

変えるなら向き合わなければならない

物の1つだ…。


この世界の闇の象徴みたいな部分が

あるからな…


…どう変わってるか…そう簡単には

変わらないだろう、だが…

決定的な違いがあるか、

それが重要だな…


ーー


永遠「でね、それでね…ブリザードは

僕にこう言ったんだ…」


凍歌「ふんふん、なになに…?」


永遠「永遠のことは俺が守る…

キリッ、ってね…」


凍歌「おー、ブリザード、

中々大胆なことするもんだなぁ…」


永遠「あの時はほんと冗談じゃなく

悶え死にそうになったよ…」


凍歌「あ、上がり!」


永遠「えーっ!?」


ブリザード「…何やってんだ。」


凍歌「あ、ブリザード!」


永遠「今、凍歌にブリザードの

昔の頃を教えながらババ抜き

してたんだ、ブリザードもやる?」


ブリザード「あぁ…やるよ。」


凍歌「ブリザード…その大胆さは

今も変わらないんだな。」


ブリザード「…効果音の所は

言ってないがな。」


永遠「何だよ、聞こえてたんだ…」


ブリザード「最初から最後まで、

全部聞いてたよ…」


永遠「全部?気付なかった…

話に熱中しすぎたか、クソ…」


ブリザード「…永遠は俺のことを

美化しすぎなんじゃないのか…?」


永遠「えー?そう…?」


ブリザード「俺はそんなにかっこつけて

言うこと無いような気がするのだが…」


永遠「かっこつけてるって

言いたいわけじゃないんだよ?

ただ…私にとってはそれくらい

かっこよく見えるんだよ…」


ブリザード「…そう、なのか…?」


永遠「私としてはもっと脆い

とこも見せて欲しいものだけど…

ブリザードは中々隙を見せないからね。」


ブリザード「脆い部分、か…」


永遠「最近は大変なことになってた

けど…それでも、私ってその時

お兄ちゃんに特に何かできたって

訳でも無かったから…」


永遠「もちろん凍歌とか優来の方が

ブリザードのことをよく知ってるし

任せたのは正解だったかも

しれないけど…。」


永遠「それでも、わたしだって

ブリザードに何かしてあげたかったよ…」


ブリザード「…気持ちは、嬉しい…

だけど、俺にとっては永遠が

居てくれるだけでいいんだ…。」


永遠「そう…?ありがと、でも…

私はこれで満足したくないんだ。」


永遠「次は…僕が助けるから、

楽しみに待っててね…」


ブリザード「…悪いが、楽しみには

できないよ…」


永遠「あれっ?…あ、そっか…」


凍歌「ダメだよ、ブリザードが

これ以上絶望するようなことがあると

するなら私達の誰が死ぬくらいだから…」


永遠「っ…確かに、それもそうか…」


永遠「…悪かったよ、もう…

そんなこと軽々しく言わない。」


ブリザード「いいんだ、

そうならないようにすれば

いいだけの話だろ…?」


永遠「…そうだね、もう…誰かが

死ぬのはごめんだ。」


凍歌「…もうこれ以上は繰り返さない、

私が繰り返させない…」


ブリザード「…あぁ、もう

誰も死なせない…誰が相手でも

勝ち残ってみせる…」


永遠「あぁ…ブリザードのことは

私が守るから…安心して。」


ブリザード「…」


灯華、見てるか…灯華の残した意志が

今、こんなにもみんなに影響を

与えてるんだ…


…俺がそっちに行くまでの間は、

ゆっくりと休んでていてくれ…。


…俺達は大丈夫だ、だから…

見ていてほしい。


神吹を…絶対に、倒す…


ーー


永遠「…ふぅ…。」


バタッ


永遠「あー、私って

何がしたいんだろ…」


永遠「あーあ…もう、

嫌だな…」


…ブリザードにも話したことだけど

私はブリザードが落ち込んでる

時に何もできなかったんだ…


死んでもブリザードのことを

守り抜くって決めたのに…


その結果結局無力なままで

高城になすすべもなく

終わってしまった…


凍歌がいなきゃ私は死んでた

かもしれない…それくらいなのに…


ほんとに…何がしたかったんだろ。


今の僕にできることなんて

ベットの上で寝転ぶくらいなんだな…

あぁ…やっぱり、虚しいよ…。


こんなことしたかったわけじゃ

無かったんだけどな…。


はぁ…ダメだな…


こんなんじゃお兄ちゃんを

手篭めにするなんて無理だ…

もっと、強めに行かないと…


…はぁ、お兄ちゃん早く私の物に

なってくれないかな…


ぶっちゃけ、嫌なんだよね…

競合相手が多すぎて、

まるで勝てる気がしない…


…最近になって…僕がお兄ちゃんに

抱いていた感情の本質は崇拝だって

よく分かった…。


…けど、最近になって…本当に、

お兄ちゃんのことを好きになって

しまったんだと思う。


なんとなくだけど…その自覚が

ついたような気がするんだ。


…だけど…それと同時に、

お兄ちゃんを自分だけのものに

してしまいたいと思う自分も

出てき始めている…


時が立つに連れて僕の中にある

狂った気持ちが強さを増していってる

のが分かるんだよ…


お兄ちゃんをぐちゃぐちゃにして

しまいたいんだ…もう、

壊れてしまいそうになるくらいに…


歪んでるんだろうな…僕は、

こんな僕をお兄ちゃんは

受け入れてくれるかな…?


いや…そんなわけないな…私は…

こんなにも狂ってるのだから。


…お兄ちゃんを穢したくて

仕方ないの、今すぐにでも…

めちゃくちゃにしてしまいたい。


けど…それはきっと、

許されないことだから…


…それでも、自分で自分のことを

止められる気がしないんだ…


きっと、お兄ちゃんはこんな僕を

好きになんてくれやしない、

それでも僕は…お兄ちゃんに

見て欲しい。


やっぱり…僕は歪んでるな、

最近になってそう確信がついた…。


だけど…僕は僕を歪めるつもりはない、

ありのままの僕でいたい…


…あはは、これじゃ…

結局何も変わらないな。


…でも、もうそれでいいや…


僕は…僕のままで生き続けてやる。


それが…きっと僕にできる

唯一のこの世界に対する抵抗

なんだろう…だから…


必ず変わらなきゃ行けないわけでも

ないでしょ…?ただ、強くなれば

いいだけだから…


…たとえ許されなくても

構わない…僕は…

もう、何も恐れない…


…そうだ、僕は…一人じゃないから。


独りよがりだけど、それでも…

認めてもらえるまで諦めない。


私は…私なりに生きてみるよ。


ーー


ブリザード「…。」


何となく、いつもよりも

速く目覚めた気がする…


眠気は少しだけ残ってる、

だが…少し違和感がする、

気のせいだろうか…


凍歌「すぅ…すぅ…」


…気のせいじゃなかった。


ブリザード「…あの、凍歌さん…?」


凍歌「すぅ…っ…ん…?」


ブリザード「…おはようございます、

凍歌さん…」


凍歌「ん…?どしたの…?」


ブリザード「…あの、当たり前かの

ように人の布団の中に入るのは

勘弁してほしいんですが…」


凍歌「ん…だめ?」


ブリザード「い、いや…

だめってわけじゃないけど…」


凍歌「ん…じゃ、いいね…」


ブリザード「え…あ…ちょっと…」


凍歌「ん…じゃ、私ちょっと寝るね…」


ブリザード「え…ちょっと!?」


凍歌「っ…ん…」


ブリザード「っ…」


凍歌が無防備に寝ている…

服が僅かに解けていて、

凍歌のデリケートな部分が

見えそうになっている…


ダメだ、これじゃ自分で自分を

保てなくなるかも…こんな姿になってる

凍歌は見たことない…


…どうしよう…


ブリザード「…ほんとに、

きれいな肌してるな…」


凍歌「ん…っ、へへへ…」


ブリザード「…可愛い。」


ブリザード「…もう、襲おうかな…」


ブリザード「っ…て、おい…

何考えてんだ俺…!」


ガシッ…


ブリザード「え…?ん、なんだよ…」


…今度は何故か反対側から

服を掴まれた…


そこに目を向けてみると…


優来「…むぅ。」


ブリザード「あ、あれ…優来?」


優来「私も、構って…」


ブリザード「ちょ、え、おい…!?」


…何で、2人も布団の中に

潜り込んでいたと言うのに

気付なかったんだろうか…


ブリザード「…俺、もうそろそろ

出るから優来にも出てほしいんだが…」


優来「やだ…」


ブリザード「今日って用事もあるしさ、

早めに準備した方がいいんじゃ

ないのか…?」


優来「やだ、ブリザードと

一緒に寝る…」


ブリザード「え、えぇ…?」


ブリザード「と、凍歌…助けて…」


凍歌「すぅ…すぅ…」


ブリザード「…嘘だろ…?」


優来「さ、もう諦めて

私達と一緒に寝て…」


ブリザード「ちょ、ほんとに…

えぇ、どうしたらいいの…」


ガチャ


神野「ブリザード、どうせまだ

寝てるだろうから起こしに来たわ…」


神野「…寝起きでしょうし、コーヒーを

煎れてみたからよかったら一緒に

飲まない…?」


神野「も、もちろん貴方が望むなら

ま、毎日起こしに来てあげても

いいわよ…?し、仕方ないから…」


優来「ん…」


神野「…あ?」


ブリザード「ちょ、神野さん、

助けて…」


神野「…もう知らない、

勝手にしてなさいよ…」


ブリザード「は…?え、ちょ、

待って、帰らないで…!?」


神野「…ブリザードのバカ、

人が折角コーヒー入れたのに

そんないちゃいちゃして…」


ブリザード「ちょ、誤解だから、

ほ、ほんとに待ってって…!!」


神野「知らないから、もう…」


ブリザード「ま、待って…」


優来「…逃さないから。」


ブリザード「…解せぬ。」


華途葉「騒がしいと思ったら…

何してんの?」


優来「げ、華途葉…」


ブリザード「…ちょうどよかった、

華途葉、助けてくれ…」


華途葉「はぁ…布団の中でそんな

いちゃいちゃして…羨ま…いや、

迷惑してるでしょ、やめときなさい…」


優来「むぅ…」


優来「この子が

どうなってもいいの…!?」


華途葉「…ぬいぐるみじゃない、

それも熊の…」


ブリザード「あ、それ俺の…」


華途葉「はぁ、それはいいから…

とにかく、布団から降りて…」


優来「やだ、抵抗する…」


優来「ほら、凍歌も何か言って…」


凍歌「すぅ…すぅ…んんっ…すぅ…」


優来「だめだ、凍歌は使い物に

ならない…どうしよう…」


ブリザード「…優来。」


優来「え、何…?」


ブリザード「…あそこで櫻さんが

神に祈ってるよ。」


優来「え、どう言う状況だよ…」


チラッ…


ブリザード「…今だ!」


優来「え、ちょっと…!?」


ダッ…


優来「ぬ、抜けられた…!?」


華途葉「アンタ…それができるなら

最初からそうしなさいよ。」


ブリザード「いや…自分でも

できると思わなかったんだよ。」


優来「く、くそ…どうしよう…

このままじゃ私の悲願が…!!」


ブリザード「…別に今じゃなくても

いいだろ…?」


優来「ん…そうかな…」


優来「でも、こんなこといつまで

できるしかわからないし…」


ブリザード「…それは、

俺達の努力次第だな…」


優来「うん…」


華途葉「…ねぇ、何しみじみとした

雰囲気になってるの、これから

行く準備するんでしょ…?」


優来「…あ、そうだ…!それに、

ご飯もまだだし…!」


華途葉「さ、とっとと行った行った…」


優来「う、うん…と、凍歌…

もう起きて…!」


凍歌「ん…っ、優来、何…?」


優来「今日はスラムにまで

行くんでしょ、もうそろそろ

準備するよ…!」


凍歌「あれ…?そうだっけ…」


優来「ご飯も早く食べなきゃだし、

お布団から出てほしいのだけど…」


凍歌「…ふぁ〜、眠い…」


凍歌「こんなに眠いなんて、

やっぱ私は機械じゃないんだな…」


優来「ほらっ、私お腹すいちゃったし

行こう…?」


凍歌「ちょ、引っ張らないでって…」


ブリザード「…凍歌、元気そうだな…」


ブリザード「…」


ちょっと前じゃ考えられないな、

こんなこと…


凍歌が本来の明るさを取り戻してる、

それが何より嬉しいこと…


…何か一つでも糸が解れていれば

あり得なかった光景が

ここにある…


…どうか、このまま平穏が

続けばいいが…そうは行かない。


…この先に希望があるか、

絶望が広がってるかは分からない…

それでも進むしかないんだ。


華途葉「ねぇ、ブリザード…」


ブリザード「華途葉…?何だ…?」


華途葉「…もうスラムに行く準備って

整ってたりする…?」


ブリザード「あぁ、俺は昨日に

ある程度終わらせるよ…」


華途葉「…よかった、私も

昨日に終わらせてたの…。」


華途葉「…あ、あのさ…ブリザード…」


ブリザード「…どうした?」


華途葉「…久々にさ…ブリザードと

一緒にお話とかしたいからさ…

だからさ…ブリザードが

よかったらでいいんだけどさ…」


華途葉「その…一緒にゆっくり

お話でも…しない…?」


ブリザード「…あぁ、いいぞ…」


華途葉「え、いいの…?

…えへへ、ありがと…」


神野「…はぁ。」


華途葉「…ふぇっ!?」


ブリザード「じ、神野さん…?」


神野「…もう終わってるかと

思ったのに、またなの…?」


華途葉「あ…あの…えっと、

その…これは違くて…」


神野「全く、そんな物を朝から

見せつけられるこっちの身にも

なってよ…」


華途葉「…ご、ごめんなさい…」


神野「…もう、知らないんだから…」


ブリザード「ちょ、神野さん…!?」


神野「…もう、ブリザードのバカ…

この、大バカめ…」


神野「覚えてなさいよ、

後で何かしてやるんだから…

そう、何か…何しようかしら。」


ブリザード「…行っちゃった、

うーん…どうしよう…」


華途葉「…」


ブリザード「…華途葉、どうした…?」


華途葉「あ、ううん…何でもない。」


華途葉「その…私、もう行くね…」


ブリザード「え…華途葉…?」


華途葉「…」


…もしかして、俺まずいことしたか…?


…そうだとしたら神野さんにも

華途葉にも謝らないと…


…凍歌が元に戻って、

少し調子に乗ったのかな…


…俺って結局いつもこうなんだよな…

昔からずっと。


余計なことばっか言ってそれで

上手く行かなくて…昔から

変わんねぇな…


どうしたものかな…俺は、

もう…こんなことしたくは

無かったんだけどな…。


ーー


ガチャ…


華途葉「…はぁ。」


バタッ…


華途葉「…」


扉を開けてすぐにその場に倒れ込む…

もう、立つ元気も無かったから。


私は…ずっと孤独で、誰も

信じることができなかった…

怖かったから。


…どうせ裏切られることなんて

分かりきってたしどうせ

助けてなんてくれないから…


…そんな私に手を差し伸べてくれたのは

ブリザードだけだった…


だけど…ブリザードと言う存在は

手を伸ばせば伸ばすほど遠くて、

掴めない場所に居る…


私に、付け入る暇なんてない…

今のでなんとなく分かった。


幼馴染で特別中のいい優来に凍歌…

いつもブリザードの側に居る飛那世に

神野さん…それに永遠。


櫻さんも私なんかよりずっと

近くて…ブリザードは段々と

私からは遠い存在になっていった。


それに私は元から復讐のために

着いてきただけ…ブリザードにとっても

関係の薄い人間…


それに、私には…永遠みたいに

ブリザードのためにその身全てを

捨てられる覚悟もない…半端なの。


これじゃバカみたい…ブリザードには

私なんかじゃ近づけないんだ…。


けど…それが分かる度に私の胸が

身体を強く締め付けて離れなくなる…

その感覚が、怖くて仕方ない…


まるで自分が自分じゃ無くなるような、

そんな感覚がするの…


ただ…苦しくて、痛くて…それでも

何故だか心地よさがある…


…私は…こんなままで終わりたくない。


けど…これじゃ、このままじゃ私は…

何も変わらないまま…


私は…もう、ずっとこのままなの…?


…もう、どうすればいいのよ…

こんなの、分かんないよ…


華途葉「…っ…」


…こんなままでスラムまで

行けるのかな…


これじゃ

ブリザードに合わせる顔もないよ…

もう、どうすりゃいいってのよ…


私は…どうすべきなのよ…


ーー


飛那世「…さて、と…みなさん、

全員集まりましたか…?」


櫻「いや、華途葉がまだ

来てないよ…」


飛那世「そうですか…じゃあ、

先輩、華途葉を呼んできて

くれますか…?」


ブリザード「分かった、

行ってくるよ…」


飛那世「ええ、任せましたよ…」


飛那世「…華途葉か…あの人も

先輩と同じで、自分一人で

勝手に抱え込んじゃうんですよね…」


飛那世「何か変なことに

なってないといいんですが…」


ブリザード「…」


華途葉には少し悪いことを

してしまったな…華途葉、

怒ってるだろうか…


ブリザード「華途葉…入るぞ?」


華途葉「ブリザード…何?」


ブリザード「…もうそろそろ

時間だ、準備は出来たのか…?」


華途葉「うん…でも、今…

立てないかも。」


ブリザード「…どうした…?

入るぞ…」


華途葉「…」


ガチャ


ブリザード「…さっきは悪かった。」


華途葉「…別に、ブリザードは

悪くないわよ…」


華途葉「…ただ、私の諦めが

つかなかっただけだから…」


ブリザード「諦め…?

何を言ってるんだ…」


華途葉「…私には何もできやしないって

分かったの、ただ、それが

遅かったってだけ…。」


華途葉「もう諦めもついた…

虚しいけど…」


ブリザード「何も出来ないって…

そんな、どうして…」


華途葉「…アンタになら分かるでしょ?

自分には何も出来ないと分かった時の

絶望ってやつがさ…」


ブリザード「華途葉…

さっきから、一体何を言って…」


華途葉「アンタには私の苦しみは

理解できる…けど、私の

気持ちは理解できない。」


ブリザード「は…?華途葉、

一体どうしたんだよ…」


華途葉「私…もう嫌なの、

一人になるのは…」


華途葉「…もう散々な目に会うのは

御免なの、もう…ダメなの、

私は…」


華途葉「だから…もう、

離さないで…私のこと。」


ガシッ…


ブリザード「華途葉…?」


華途葉「私は…もうブリザードが

居ないとダメみたいなの、それが

なんとなく理解できた…」


華途葉「ブリザード、私って…

もう、戻れないんだと思う…」


ブリザード「華途葉…」


華途葉「…だから…お願い、ね…」


ブリザード「…」


華途葉「…もう大丈夫、

さ、行きましょう…?」


ブリザード「あぁ…分かった。」


華途葉「ん…」


ブリザード「…。」


華途葉…どうしてしまったんだろうか。


いつもはこんなふうじゃない、

いつもとは明らかに違う…


これも俺のせいなのか…?

華途葉…大丈夫なのかな…


結局の所、俺じゃ華途葉を

助けることなんて無理なのかな…


華途葉「…誰にも、渡さないから…」


ブリザード「ん…何か言ったか?」


華途葉「いや…なにも、それより、

早く行きましょう…?」


ブリザード「あぁ、分かった…」


このまま行くわけがない…

今のままじゃ、同じことの

繰り返しだ…


もう…柳太郎や灯華みたいに

死なせるのはごめんだ…


もう…後には引けない、

進み続けるだけだ…


もう二度と何も喪いはしない…

ずっと前からそう決めた、

決めていた…


それは今も変わらない…

ただ、同じことをするだけ…


だけど、きっとそれだけじゃ

この先勝てない…

俺は…すべきことをすればいい。


…そのためには、破邪悲を

使わなければな…


…俺は、何をしてでも皆を

守り抜かなければいけない…


俺は…絶対に…


ブリザード「…。」


ーー


悠介「…」


やけに頭が軋む感覚がする、

これも機械の脳の欠陥か…


…俺は、結局…戻ってきてしまった、

ここへ…


あの女は一人で勝手に死んだ、

その結果俺は…ここに蘇ってもなお

また、神吹の手先になってしまった…


これも全て…あいつらのせいだ、

あいつらが神吹に逆らわなければ

また俺が苦しむことも無かったのに…


…知ってしまったんだよ、俺は…

罪無き人を殺める苦しみってやつを…


だけど…目が覚めたときには

もう後戻りできなくなっていた…


だから…俺は、ヤケになるしかなかった。


俺は…俺を殺すだけじゃなく

こんな目に会わせたあいつらが

許せん…一度殺してやらなきゃ

気がすまない。


悠介「…覚悟してろよ、ブリザード…」


悠介「俺がお前に引導を渡す。」


悠介「俺達は…殺し合う

運命にあるんだ。」


悠介「そうすることでしか…俺の

乾きを潤すことはできない。」


悠介「悪く思うな…こうなったのも、

全て…この世界がこんなにも

理不尽だから…」


悠介「だから、人は争うこと

以外の生きる道を見失なって

しまったからだ…。」


悠介「俺にはもう…この苦しみに

終止符を打つことしかできない。」


悠介「だからせめて…お前らを

終わらせてから終わってやる。」


悠介「この世界には希望も

絶望もありゃしねぇ…」


悠介「あるのは、理不尽だけさ。」


悠介「…さ、もう行くとするかね…」


悠介「…終わりを、見せてやるよ…」


ーー


ブリザード「っ…けほっ、

ここはまだ空気が汚れてるな…」


飛那世「そりゃ、いくら綺麗に

なったからって、スラムですから…」


永遠「でも…どうなってるんだ?

さっきから小蠅1匹の気配すら

感じないんだが…」


櫻「うん…どうやら、前に比べて

だいぶ風通しがよくなったみたいだね…」


優来「…それでも、まだお世辞にも

綺麗とは言えないみたいだね…」


凍歌「さしずめ…表面上綺麗なように

必死に取り繕っても拙さや汚い

部分を隠しきれてないってとこかな…」


ブリザード「…そんなとこかもな。」


華途葉「…」


この街…私と同じだ。


表面上はうまく取り繕ってるつもり

でも、肝心なところは変われなくて…

それで、素直になることもできないんだ…


…けど、この街は再生に向かって

歩み続け…今では活気を取り戻しつつ

ある…だけど今の私はどう?


自分に嘘をつき続け…今も、

悪い自分を手放せないままでいる…


…どうすればいいの?これじゃ…

ブリザードにも迷惑をかけるだけ。


華途葉「…」


神野「華途葉…?華途葉!」


華途葉「あっ…ご、ごめん…」


神野「どうしたの?

華途葉らしくもない…」


華途葉「…ごめんなさい、

少し考え込んでたの…」


ブリザード「…華途葉、

疲れてるのか…?もう帰るか…?」


華途葉「いや…私は、大丈夫…

心配かけてごめんなさい…」


ブリザード「華途葉…」


飛那世「…ねぇ、先輩…」


ブリザード「飛那世、

どうかしたか…?」


飛那世「…このスラム…建物の

数が少ないです、だけど…

瓦礫の数が異様に少ないです。」


ブリザード「瓦礫が除去されたのか…?

でもどうやって?」


永遠「建物の建材に使われてる

物質は色んな用途に使える…

売れば金にもなるよ。」


ブリザード「なるほど…だが、

そんな業者はこんなスラムには

居ないはずだが…」


優来「でも私…最近風の噂で

聞いたんだけどどうやらそう言う手の

業者が稼ぎが少なくなってきたから

スラムにも手を出し始めたんだとか…」


優来「けど…人材不足だからって

そのままスラムの人達を

雇ってるんだって…」


ブリザード「…なるほどな…

それじゃ瓦礫が少ないわけだ。」


凍歌「でも、それじゃやがて

瓦礫は無くなるよ、それじゃ

スラムの人々の職は無くなるんじゃ…」


飛那世「そうなれば、別の瓦礫が

有る所に移動するだけです、つまり…」


永遠「スラムの人達が別の地域に

移動するってこと?」


飛那世「そう…今は物資の

奪い合いも少なくなるので

スラムが少しは豊かになる…

って所なんじゃないですか?」


優来「そっか…だから街が

明るくなった感じがするんだ。」


永遠「でも…皮肉だよね、街に

人が居なくなったほうが街が

平和になるなんて…。」


ブリザード「分からないものだな、

それに…これで絶対に上手く行くって

訳でもないし。」


飛那世「えぇ…けど、人が減りすぎて

そこに人が居なくなったとき…それは

街と呼ぶのでしょうか?」


ブリザード「…そうなれば、

そこは廃墟になるだけだな。」


永遠「…何か、悲しいな…それまでの

人が積み重ねてきた努力が

消えるみたいで。」


ブリザード「…あぁ、自分がしてきた

ことが無駄だって分かるのは…

底しれない絶望がある。」


ブリザード「けど、そこから

立ち直れなきゃやり直せない…」


ブリザード「きっと、チャンスは

1度きりじゃないよ…それを望む限りは

何度でもあるさ…」


ブリザード「ただ…それが

必ずあるわけじゃないが…」


優来「それじゃ結局意味ないじゃん…」


ブリザード「そうだな…

これじゃ、意味なんか無ぇ…」


ブリザード「…けど、これがこの世界の

本質なんだろ?」


神野「…えぇ。」


神野「…この世界は悪が

強くなりすぎた、行き過ぎた悪は

やがて全てを無へと追いやる…」


神野「…そうなったのが今の世界。」


ブリザード「酷ぇもんだ…これじゃ

先人の努力はどこに行ったんだろうか…」


華途葉「この理不尽が全部、

無かったことになればいいのにね…」


ブリザード「あぁ、もしそうだったら…

それより楽なことはない。」


永遠「でも…それだときっと僕達は

出会えていない…複雑な物だね。」


ブリザード「そうだな…悲しいものだ、

この世界が終わってなければ…

俺らは会えてなかったんだ。」


飛那世「…どうすればよかったん

でしょうね…私達。」


ブリザード「…」


櫻「そう言えば、私達スラムを

調べに来たんだよね…」


ブリザード「そうだな…けど、

もう…ある程度結論は

出たかな…?」


凍歌「うん…どうやら、私達が

やったことで…少しは世界が

良くなってくれたみたいだね…」


神野「ひとまずは…よかったけど、

どうしましょうか…」


ブリザード「…もう用も無いし、

早いとこ帰るか…?」


優来「確かに、結論はもう出たけど

スラムを全部見れたわけじゃない…

時間もあるし、ゆっくり見ていこうか…」


ブリザード「分かった、みんなも

それでいいか…?」


神野「…異議なし。」


永遠「オッケーだよ。」


凍歌「じゃ、行っちゃおうか…?」


ブリザード「あぁ、そうだな…」


櫻「じゃ、真っ直ぐ行ってみようか…」


ブリザード「そうだな…っ…!?」


ブリザード「な…っ…!?」


優来「ブリザード、どうかしたの…?」


ブリザード「これは…いや、

ありえない…まさか…あいつ…」


神野「…ブリザード?」


ブリザード「…悪い、俺は少し

用ができたみたいだ…みんなは

もう少しここを見ててくれ。」


華途葉「え…?何で…?」


ブリザード「悪いが…すぐに

行かなきゃいけないみたいなんだ。」


凍歌「ねぇ…ブリザード、

何かあったの…?

私達にも話してよ…」


ブリザード「すまない、まだ

話せそうにない…」


永遠「え…なんでよ…!」


ブリザード「これはあくまで

俺一人の問題なんだ…」


ブリザード「皆まで巻き込むわけには

いかないんだ、申し訳ないが

分かってくれ…」


優来「え…ちょ、ちょっと待って…」


ブリザード「…早く、行かなくては…」


ブリザード「…!!」


ダッ…!


櫻「え…ブリザード!?」


神野「っ…あのバカ…

何してんのよ!!」


華途葉「…ブリザード?」


永遠「お兄ちゃん…

どこ行くの…!?」


飛那世「チッ…面倒なことに

なっちまったな…」


飛那世「こりゃ、私達も

付いていくしかないぞ…!」


神野「全く…そうみたいね!!」


優来「うん…!!」


凍歌「待ってて、ブリザード…!!」


華途葉「っ…急がなきゃ…!!」


華途葉「皆…待って…!!」


バタッ…!


華途葉「が…っ!」


グッ…こんな時に転ぶなんて、

どうかしてる…!!


…ぐっ、足が…立ちなさいよ…もう、

何なのよ…!


櫻「っ…華途葉!?」


櫻「大丈夫…?私の手を掴んで…」


華途葉「っ、ありがとう…」


ガシッ…


華途葉「つ…うぅ…」


櫻「…華途葉、何があったかは

知らないけど無茶だけはしないで…」


華途葉「…うん…」


華途葉「ぐ…っ!」


櫻「華途葉…足をケガしてる、

今は休まないと…!」


華途葉「でも…行かないと、

ブリザードが…!」


櫻「今はそんなこと言ってる

場合じゃないの…!こっちの

治療を早くしないと…」


櫻「医療キットがある、私じゃ

開けられないから華途葉が

開けて…」


華途葉「う、うん…!」


櫻「なるべく早く治療して、

みんなに追いつけるようにするから

待ってて…」


華途葉「…分かった。」


…私ってば、何してんのよ…

これじゃ、足引っ張るだけじゃない…


私は…こんなことしかたったわけじゃ

ないのに…クソ…っ!!


華途葉「…こんなはずじゃ、

無かったのに…!」


櫻「華途葉…」


櫻「待ってて、すぐに

終わらせるから…」


華途葉「ぐ…っ…」


櫻「間に合ってよ…

お願いだからね…!」


華途葉「っ…」


櫻「もう少し…もう少しなんだ、

頼むよ…」


ブリザード「ぐっ…!」


ダッ…!


ブリザード「…はぁっ、はぁっ…!」


ブリザード「っ…!!」


何だよ、何なんだよ…これ…


俺がふと目をやったところに…

こんな紙が挟まってるのを見つけた。


よく見てみると…この紙は昔

神吹を攻めに行く前に作戦資料として

用意した紙と同じ材質…いや、

全く同じ紙だった…


間違いない…これを書いたのは

あいつだ、あいつが生きてる…いや、

おそらくは奴がクローンになったんだ…


…奴は俺らのことを裏切っておいて

今更何をしようとしてる…


それに、おかしい、高城は確実に

死んだ…なのに、どうして奴は

動いている…?


恐らく…裏で操ってる奴がいる…

それは恐らく…神吹か…


あいつは…金に目が眩んで…

全てを奪っていった、悪魔だ…

そいつがまた戻ってくるなんて…


これ以上最悪なことはない…


…お前がこうすることに一体

なんの意味があるんだよ…なぁ…


悠介…!!


「お前が俺を殺した場所で待ってる」


お前は…何を考えてやがる…!


神吹「…」


神吹「…フン、奴ら…松田の元に

向かってるようだな。」


神吹「これは…面白いことになるぞ。」


神吹「勝手に行動した奴を

放っておいて正解だった…」


神吹「あそこに…我々の全勢力を

注ぎ込む…そうすれば…」


神吹「く…っ…フハハハハハハ…

アッハハハハハハハハハハ!!」


神吹「せいぜい楽しませろよ…

これはまだ、余興に過ぎないん

だからさ…!!」


神吹「いいか…?お前らが絶望の

底に堕ちてからがスタートだ…

分かるか?」


神吹「これが…gwtとして産まれた

俺とお前の運命なんだからさ…!!」


next…

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