天地黎明-Force of Blizzard-

第6話

…私は、既にこの手では贖いきれないほどの

罪を幾度も犯してきた…。

…許されたいと思ったことはない、私はもう

手遅れな所まで来ているから…。

だからこそ…私は罪を償いたいの…

そうすれば、少しは救われる気がするから…。

何もできなくなってしまう前に、

できることを全て成し遂げたいの…。

…私は、この身に背負った罪を全て

償う…罪を、終わらせたいの…。

…そして、いつかブリザードと

一緒に…なんて、高望みだったわね。

…けど、今はまた、こうしてブリザードと

肩を並べて共に戦うことができる…。

…こんな形ではあるけれど、また

ブリザードやみんなと一緒に戦うことが

できる…これほど嬉しいことはないわ。

…だけど、今はそんなことすら考えている

暇はない…東を倒すことに集中

しなくては…。

神野「…東、お前を…ここで

始末する…！」

東「やってみろ…破邪悲の力を得た

俺を倒せるって言うならな…！」

永遠「そうだ…破邪悲の力で奴はエネルギーが

体に循環してるのに…どうやって倒すの？」

ブリザード「問題ない、既に俺達が

勝てる要素は埋めてある…。」

永遠「え…？」

ブリザード「とにかく、俺達は耐えるんだ…

そうすればすぐに現れる…。」

永遠「…分かった、やってみるよ…！」

神野「…私達は、どうすればいい…？」

ブリザード「東を囲うようにして、

逃げ道を無くせ…そして銃撃を

絶えず与えて反撃の隙を無くすんだ…！」

神野「分かった…！！」

ブリザード「俺と神野さんと永遠で

東を殺る、優来、凍歌、華途葉は

櫻さんを見ててくれ…！」

凍歌「うん…分かった。」

東「ふざけんじゃねえ…こんなんで…

死んでやるかよ…！！」

東「俺に苦しめ…クソガキ共が…！！」

東「…はぁぁっ！！」

バキュン！

神野「遅いわよ…っ！！」

バキュウン！

東「クソ…まだだ…！！」

永遠「残念、こっちだよ…！！」

バキュンバキュン！！

東「ぐ…っ！！」

ブリザード「そこっ…！！」

バキュウン！！

東「くそ…っ！！」

東「…まだだ、俺には…破邪悲の力が…」

東「ぐ…が…あぁぁぁぁっ！？」

優来「っ…！？」

東「クソッ…何がどうなってる…！！」

ブリザード「…お前の脳に針を埋め込んだ…」

東「何…」

ブリザード「…それはとても小さい物だが

徐々に体を蝕み…脳組織が機能を

しなくなる。」

ブリザード「…おそらく、破邪悲の力を

断片的にしか取り込んでいないお前では

助からないだろうな。」

ブリザード「破邪悲の力にも限界がある…

脳組織が機能を停止すればエネルギー

供給もなくなりじきに死ぬ…。」

東「何だと…？」

永遠「君の負けだよ…諦めな！」

東「フフフ…アッハハハハハハハ！！」

神野「…嫌な予感がする…まさか！」

東「そうさ…俺は自爆する…！！」

ブリザード「な…！？」

東「この部屋には強力な時限爆弾がある…

それが今、遠隔で起動された…」

東「こいつが爆発すれば辺り一体が

吹き飛ぶ…一溜まりもねぇぜ…！？」

東「そいつを連れたまま…ここから

出られるかな…！！」

優来「…みんな、逃げるよ…！」

華途葉「でも、東が…！」

ブリザード「俺が引きつける、だから

早く先に行け…！」

永遠「っ…けど、お兄ちゃんは…！！」

ブリザード「俺は死なない、それよりも

櫻さんを早く連れて行ってくれ…！！」

永遠「っ…！！分かった…！！」

華途葉「ブリザード…絶対に、生きて…！」

ブリザード「あぁ、言われなくともな…！」

神野「…私は戦わせてもらうわよ…？」

ブリザード「…無茶だ、神野さんも先に…」

神野「嫌よ…今回は私も無茶させてもらうわ！」

ブリザード「…どうなっても知らんぞ…」

神野「フフフ…そんなこと、言われなくとも

分かってるわよ…！」

東「ハハハ…お前らはここで死ぬんだよ、

死神である俺の手でな…！！」

ブリザード「やってみろよ、

俺を殺せるならな…！」

東「みんな…みんなここで死ぬんだよ…

フハハハハハハ！！」

神野「思うように行かせるとでも…？」

神野「…はぁっ！！」

バキュウン

ーー

永遠「…まさか、東が自爆なんて

しようとは思わなかったよ…

お兄ちゃんは大丈夫かな…？」

凍歌「信じるしかないよ…ブリザードのことを。」

華途葉「…神野は、大丈夫なの…？」

櫻「…きっと、大丈夫だよ。」

優来「…櫻さん…！？」

永遠「大丈夫なの…？」

櫻「あはは…腕を持ってかれちゃったよ…

こりゃどうしようもないね。」

華途葉「…笑い事じゃないよ、腕1本

奪われたんだから…こんなこと、今まで

ずっとなかったのに…」

櫻「それだけ相手が凄まじいってことだよ…

これからは気をつけないと…。」

凍歌「…うん、飛那世も居ないし、

何か手を打たないと…。」

櫻「うん…とにかく、今は早くここを出て

二人を待とう…。」

華途葉「…えぇ、どうやら…ここの兵士は

逃げたみたいね、東が自爆することが

知られているの…？」

優来「…そうかもしれないね、

あんなに居たのが今じゃもぬけの殻

だから…。」

凍歌「…いや、もしかしたら次の目的地に

向かってるのかもしれないよ…」

櫻「次の目的地…って？」

凍歌「多分…神吹が現れる場所だと思う。」

優来「…そう考えるのが自然か…

でも、どうして神吹が現れるの…？」

凍歌「うーん…それが分からないんだよな…

何なんだろ…。」

華途葉「…それは後であいつに聞きましょう…。」

永遠「そうだね…そうすれば全部

分かるはず…だよね？」

永遠「…。」

凍歌「うん…おそらくは。」

華途葉「…けど、もうすぐ外に出るはず…。」

永遠「ほんとだ…もう、出れるね…。」

優来「あとは…二人を待つだけか。」

櫻「無事だといいけど…何があったの？」

優来「東が自爆しそうで…ブリザードと

神野さんが時間を稼いでくれているけど

まだ安否は分からない。」

櫻「…神野さんは戻ってきてくれたんだね。」

永遠「うん…何があったかは知らないけど

こっち側に寝返ったみたい…。」

櫻「そこは、ひとまず安心だね…」

永遠「…お兄ちゃんもブリザードも、

無茶するよね…ほんと。」

凍歌「…だね、ずっとそうだよね…

あの二人。」

優来「確かに、似てるよね…あの二人って。」

永遠「無茶するとこも、自分をも顧みない

ところも…なんか、雰囲気まで全部

瓜ふたつだよね…」

華途葉「そうね…兄妹と間違えても

おかしくはなさそうかも。」

永遠「…実は生き別れの兄妹だったり？」

華途葉「それはないでしょ、もしそうだったら

ブリザードが神吹の子供ってことに

なるわよ…。」

永遠「あ～、確かに…」

優来「でも、神野さんってあんまり神吹の

子供って感じしないよね…。」

凍歌「だね…神野さんはミステリアスでは

あるけど抜けてるところもあるし…。」

優来「確かに、そう言うところあるよね…」

櫻「神野さんはあんなんだけど優しいし…

だから、きっと私達のことを

助けてくれたんだよ。」

華途葉「…本当にそう？もしかしたら

なにか裏があるのでは…？」

櫻「もー、華途葉は考え過ぎだよ。」

華途葉「…そう。」

華途葉「…。」

華途葉「…みんな、一度裏切られたのに

よく簡単に神野のこと信用できるよね…。」

優来「…そうかな？私には神野さんは

悪い人には見えなかったけど…。」

華途葉「…裏切ったなら誰でも一緒よ。」

永遠「…まぁ、どちらの意見も正しいと

思うよ…華途葉の意見も間違ってるとは

言えないからね。」

櫻「うーん…そこは難しいね。」

華途葉「…そこで一概に一緒にするのは

確かに違うわね…。」

凍歌「考え方なんて人それぞれなんだから、

それこそ神野さんがこっちに寝返った訳だし。」

永遠「…早く、帰ってこないかな。」

櫻「そうだね…こっちとしても

心配になってくるよね…。」

永遠「…。」

永遠「僕…やっぱ見てくるよ。」

優来「え…？大丈夫なの？」

永遠「…だって、心配なんだもん、

もしあのまま死んじゃったりしたら…」

凍歌「…ん？なんか火薬の臭いが…」

凍歌「っ…みんな、伏せて…！！」

優来「え…！？」

櫻「まさか…！？」

ボガァァァン！！

永遠「…え？」

華途葉「…ありえない、遅かったと言うの…？」

優来「そんな…嘘だ…」

永遠「…クソッ！！」

永遠「何でだ…なんでお兄ちゃんに

ついて行かなかったんだよ…僕は…！」

凍歌「…どうして？神野さんが

戻ってきて…状況は公転したはずなのに…。」

凍歌「…こうなるはずじゃ…なかったのに…」

ーー

東「…ハァ、ハァ…どうやら、

そろそろ時間のようだ…」

ブリザード「ぐ…っ、ありえん…！」

神野「…もう、逃げるしかないわ！」

ブリザード「…間に合うのか！？」

神野「えぇ…ここには緊急時のための

避難用の出口があるの…そこならここから

近いから間に合うはずよ…！」

ブリザード「…分かった、行くぞ…！」

神野「こっちよ…！」

東「アハハハハ…せいぜい…逃げ惑いな。」

東「俺は…そろそろ、限界みたいだ…。」

東「…まぁ、あの爆弾は…起爆時間を自由に

いじれるから、お前らが助かることは

どうあがいてもないけどな…。」

東「…ハハハ…アハハハハハハハ！！」

東「我がSUNSINEに…栄光あれ…！！」

バタッ…

ブリザード「クソッ…急ぐぞ！！」

神野「えぇ…幸い敵の兵士はもう

居ないようね…！！」

ブリザード「あぁ…だが、ギリギリで

助かるかどうか…！」

神野「…でも、もう少しで…たどり着くはずよ！」

ブリザード「あぁ…起爆時間も分からないし、

もう神にでも祈るしかないさ！！」

神野「ハッ、神頼みなんてブリザード

らしくないわね…！！」

ブリザード「俺だって神頼みな時はあるさ、

今がそうだからな！！」

神野「…そうこなくっちゃ、面白くないわね…」

神野「弱者はせいぜい死に物狂いで

抗うしかないって、こう言う状況のことを

言ってるのかもね…！！」

ブリザード「確かに今の状況に

ピッタリかもな…！！」

神野「でも安心なさい、今ここで私達が

死んだとしても時間的にもうみんなは

助かってるはずよ！！」

ブリザード「…そりゃ気休めには丁度いい、

ありがとな！」

神野「…っ、もう出口よ…！！」

ブリザード「何…あそこか！！」

神野「走れ…ブリザード…！！」

ブリザード「うおりゃぁぁぁっ！！」

ダッ…！！

神野「っ…！！」

ガチャ…！

ブリザード「よし…外だ…！！」

ボガァァァァン！！

神野「っ…！！」

ブリザード「危ない…っ！！」

ドサッ…

神野「っ…ブリザード！！」

ブリザード「…間一髪、だな…」

神野「あー…危なかった。」

ブリザード「死ぬかと思ったよ…

今も、生きてる心地がしない…。」

神野「奇遇ね…私もよ。」

ブリザード「あ…早く皆の所へ

戻らないと、心配してるだろうから…。」

神野「そうね、永遠なんか今頃

泣きわめいてるでしょうね。」

ブリザード「…確かに、そうなってる

だろうな…皆に危害が及ぶ前に

戻ろう…。」

神野「えぇ…本当に…」

神野「っ…！！」

ブリザード「なんだ、どうし…」

ブリザード「は…！？」

…そこには、無造作に置かれたSUNSINEの

団員の死骸が置かれていた…。

ブリザード「飛那世か…あいつ…！」

神野「あれを飛那世がやったの…！？

こんな短時間で…」

ブリザード「こんなことをして…

何をしようとしてるんだ…」

ブリザード「…もし、神吹にバレよう

物なら…。」

神野「…どうなるの？」

ブリザード「っ…この話は忘れてくれ。」

神野「…え？」

ブリザード「…神野さんにはこのことを話そう。」

ブリザード「…これは、誰にも言ってない

独自の計画なんだが…。」

神野「何…？」

ブリザード「…。」

神野「え…？それは本当なの？」

ブリザード「あぁ…これは1年以上前から

ずっと入念に準備を重ねていた計画だ…」

神野「…でも、それじゃあ…」

ブリザード「…その心配は無用だ、

無用な殺しはしていない…。」

神野「…よかった。」

神野「…でも、それが本当なら広間の鍵が

突然開いたことも説明がつく…。」

ブリザード「ただじゃ神吹は倒せない、

こう言った正攻法ではない方法も

必要なのさ…。」

神野「…すごいことするのね、私でも

全く気づかなったわよ…。」

ブリザード「気づかれないようにずっと

やっていたからな…。」

神野「…そこまでさせるなんて、

私の父親はやはりろくでもないことしか

していないのね…。」

ブリザード「…そうさ、だから

こんなことになってるんだ…。」

神野「…そろそろ、行きましょうか…

みんな待ってるでしょうし。」

ブリザード「…あぁ。」

ーー

凍歌「…あ、あれ…！！」

永遠「…何？」

優来「…ブリザード！」

永遠「…お兄ちゃん！？」

ブリザード「…無事だったか？」

優来「うん…なんとか。」

永遠「よかった…無事だったんだね！！」

ブリザード「…あぁ、心配かけて悪かった。」

華途葉「どうやって脱出したの…？」

神野「緊急用の出口があって、そこから

脱出したの…。」

神野「…それと、そこから出た先に

気になるものがあって…。」

櫻「…と言うと、それは？」

神野「出口を出た先に団員の死体が

大量にあって…それも、10とかじゃなく

ざっと80はあった…。」

華途葉「…何？別の場所に行ったんじゃ

なかったの…？」

ブリザード「…おそらく何者かに

始末されたのだろう。」

凍歌「そんな数をどうやって…？

まさか、飛那世がやったのかな…？」

優来「…ありえなくはない、飛那世なら

やってもおかしくはない…。」

ブリザード「…でも、本当にそうなのか？」

永遠「…そもそも、飛那世にそんな時間が

あったのか…って話？」

ブリザード「そうだ…あんな人数を

殺した上で死体を短時間で重ねるなんて…

飛那世でも難しいだろう、それこそ…」

ブリザード「…複数人でなければ。」

凍歌「…妙だね、恐らくあそこが爆発

させられることは団員全員が知っていたはず…

じゃなきゃあんな一気に居なくならないよ…。」

優来「…しかも、できるとしたら幹部クラスの

人間くらい…？しかも自爆する場所に

集まるとは思えない。」

永遠「いや…一番おかしいのはあんなに数の

団員を殺そうと考えるのは飛那世だけと

言うことだよ…。」

華途葉「…それじゃ、あれをやったのは

飛那世じゃないってことなの？」

永遠「うん…となれば。」

ブリザード「俺達以外に神吹を

始末しようとしてる奴らが居るってことか？」

神野「その理論が正しいならそうなるわね…

けど、ならなんで私達の前に現れないの？」

ブリザード「そこが理解できない…

不可解な点が多すぎる。」

華途葉「でも…それが最悪敵になる

可能性もあるよ。」

櫻「…え？それはどうして…？」

華途葉「…そいつらがもしも仮に

愉快犯だったとしたら？」

神野「愉快犯…？そんなことありえるの？」

華途葉「そうでもないと説明がつかないわよ、

そんな殺し方をするなんて…。」

ブリザード「…そもそも、団員を殺したのは

俺達に見せつけるためだったのか？」

優来「…おそらくその可能性が高いと思う…

そんな爆発とちょうどよく大量の死体が

置かれるなんて爆発することを気づいてないと…」

優来「…爆発することを知っている人間…？」

凍歌「…ってことは…神吹の内部情報を

知っている人間か…！」

櫻「幹部格の人間で神吹に反逆しようと

している人間…？そんなの

ありえるのかな。」

神野「…いえ、そんな奴は聞いたことないわ…。」

ブリザード「何なんだ…だが、利用できる

かもしれない…。」

優来「…でも、どうやって…？」

ブリザード「まだ情報がない…必要な

情報が集まったらコンタクトを取ろう…。」

神野「…えぇ。」

ブリザード「…それじゃあ、行こう。」

永遠「…え？行くってどこに…？」

ブリザード「俺達を警察に売った

奴のところさ。」

ブリザード「…一人居るだろう？学校の

ありとあらゆる場所に入れるようになる権限を

持つ人間が…それも近くに。」

優来「…まさか、あの人が？」

ブリザード「あぁ…行くぞ。」

神野「…いや、待って…おかしい。」

永遠「…何がおかしいの？」

神野「SUNSINEの団員の名前は全員知ってる

けど影浦なんて名前の人は居なかった、まだ

裏切り者だと断定するには早いんじゃ…」

ブリザード「…偽名を使っていた可能性が

高い、それに…これしかありえないんだよ。」

神野「…そう、なのね…。」

神野「…。」

ブリザード「影浦…もう好きにはさせない。」

ーー

影浦「…さて、と…。」

影浦「そろそろタイムリミットかな、

準備をしておこう…。」

影浦「…あいつにも最後くらいあいさつでも

しとこうか？…まぁ、いいか…」

影浦「どうせあいつらももう来るだろうし、

時間がない…。」

ガチャ

影浦「お、噂をすれば…」

ブリザード「…影浦！！」

影浦「待て、お前らの言いたいことは言わんでも

分かる、ここじゃダメだ…別の…

人目のつかない場所に行こう。」

影浦「大丈夫だ…痛いようにはしない。」

ブリザード「…。」

影浦「…櫻、腕が片方無くなったようだが

容態は大丈夫なのか…？」

櫻「…ええ、大分よくなりました。」

影浦「ならよかった…ついてこい。」

…そして、俺達は影浦に連れられて

人目のつかない広い場所…体育館まで来た。

影浦「いやー、夜の体育館は風情が

出てていいな、お化けが出てきそうだ…。」

ブリザード「…影浦、しらばっくれるな…！！」

影浦「いいだろ？別にどうせこれで最後

なんだしさ…。」

神野「…やっぱり、アンタが…！！」

影浦「…そうさ、俺がお前らのことを

警察に売った…神吹の指示で。」

優来「っ…！！」

影浦「俺もSUNSINEの一員さ、ま、

色々あるんだけど…。」

影浦「…少しだけ俺の話に

付き合ってはくれないか？」

影浦「…ま、答えがNOでも勝手に

言うんだけどさ。」

ブリザード「…いいだろう。」

影浦「…ありがとな。」

影浦「俺は…生まれてこの方貧乏でさ…

1日1食が精一杯だったのさ…。」

影浦「…だからある時、腹が減りに

減っちまって気が狂った俺は…

親を食った。」

華途葉「な…っ！！」

影浦「それで頭がおかしくなっちまった俺は

しばらくスラムを彷徨ってた…だけどある時

神吹の組織のメンバーと遭遇した…。」

影浦「…だけど、俺は運だけは良くて…

SUNSINEに入れてもらえることになった。」

影浦「だけど…条件付きでだ。」

ブリザード「条件…？とは何だ。」

影浦「爆弾だよ…脳に爆弾が仕掛けられてて、

神吹に逆らったと判断されれば即刻俺は

爆死さ…。」

櫻「…！？」

影浦「世間は残酷だよな…それは俺がよく

理解してる、だからこそお前達が殺しを

している理由も理解できる。」

影浦「俺も…たくさんの罪を奪ってきた、

死んだら審判を下すまでもなく地獄へ

直行だろうな…。」

影浦「…俺は運が良かったのはいいけど、

俺は実力も才能もなくていつまでも

上には上がれなかった。」

影浦「…けど、俺はなんとか食いつないで

見せた、何でか分かるか…？」

影浦「…単純な話、俺はこの世界には

一つの決定的なルールがあると思う…」

神野「…それは？」

影浦「それは簡単な話で、この世界には

光と闇、その両面が混在してるって訳…。」

影浦「分かりやすく言うとこの世界には世界に

光を見出すことができる人間と社会の

闇に飲まれ墜ちていく人間の2種類が居る…。」

影浦「…何で俺が神吹の下について、

お前らを警察に売ったのか分かるか？」

影浦「俺は…どうしようもなく救いがない

環境で生まれた、そして狂った末に

凶行に走った…。」

影浦「それはお前らと何一つ変わらない…

でもな、俺にはお前らとは決定的に

違うことがあるんだ、それが何か分かるか？」

影浦「…俺はな、お前らみたいに強かった

訳でもいい仲間に恵まれた訳でもない。」

影浦「…ただ、運が良くて命が

持ってるだけだった。」

影浦「…俺は、ずっとお前らのことが

羨ましかったんだ。」

影浦「…俺はSUNSINEにやられたとき、

終わったと確信したさ…。」

影浦「…でも、必死に命乞いした…そうしたら

俺をSUNSINEに入れてくれた。」

影浦「…俺には、結局運しかなかった。」

影浦「…かくして俺は世界に光を見出すか

闇に飲まれるかを決めるのはその本人ではなく

世界なんだって分かった…。」

影浦「…そして、俺は今それを大いに

実感している。」

影浦「…俺はお前らと戦った所で

正気は1%もないだろう。」

影浦「…でも、俺なりになんとか

しようとはするよ…。」

影浦「…さぁ、戦おうぜ…？」

ブリザード「…待て、お前にはまだ

聞きたいことがある…！」

影浦「…何だ？」

ブリザード「牢獄の避難出口を出たすぐ先に

死体が大量に転がってた、あれをやったのは

誰だ…！」

影浦「…俺さ。」

永遠「っ…！？」

ブリザード「…やはりな、お前は神吹に

恨みを持ってる、だからそれを行動に

移したってわけか…！」

影浦「俺と…正確にはもう一人居る。」

ブリザード「何…？誰だ！！」

影浦「お前らもよく知ってる人物だよ…

けど、話すとややこしくなるから

ブリザード以外は席を外してくれないか？」

神野「…やましいことでもあるの？」

影浦「…無いわけじゃない、今の段階で

ブリザード以外に話すと混乱を招くだけだ、

ブリザード一人でも俺は倒せる…。」

影浦「…だからいいだろ？」

凍歌「…分かった。」

影浦「…くれぐれも盗み聞きはするな、

盗み聞きして後悔するのは自分だからな…？」

永遠「…じゃあ、お兄ちゃん…気をつけて。」

ブリザード「…分かった。」

影浦「…さて、と…全員行ったな？」

ブリザード「…あぁ。」

ブリザード「…それで、もう一人は誰なんだ？」

影浦「…俺はSUNSINEに入ったあと、

研究者になって…その研究施設である

少女に出会った。」

ブリザード「…待て、その話と何の

関係がある…！」

影浦「待て待て、面白くなるのは

ここからだからさ…。」

影浦「…その少女は神吹に恨みを持ってて、

対抗するためにある技術の開発を

進めてた…何か分かるか？」

ブリザード「…破邪悲の解析か？」

影浦「違う…そんなんじゃない。」

影浦「禁忌の研究…クローン技術だよ。」

ブリザード「…は？」

影浦「その研究は無事に成功、だがそれと

同時にその研究がバレてその少女は組織を

追われた…。」

影浦「だから、その少女は自分の思考データ、

記憶の一部と戦闘能力を搭載させた

クローンを1基創って…俺に譲渡した。」

影浦「…その少女の名は、村野灯華だ…。」

ブリザード「…は？」

影浦「嘘みたいだと思うかもだが、お前らが

村野灯華だと思っていたのは灯華を模した

クローンだったんだよ。」

ブリザード「何を言ってる…あいつは…！」

影浦「記憶の一部って言ったろ？

神吹に入った過程とか、そう言うデータは

インプットされてないんだよ…。」

ブリザード「…ありえない…！！」

影浦「それに…あのクローンも完璧じゃ

なくてな、手とか骨とかは金属で

できてる…。」

影浦「…あいつ、よく静電気を

発してたりしてなかったか？」

ブリザード「っ…！！」

影浦「…それが、答えだ…。」

影浦「…あいつは今追われている立場故に

ここには出て来られない、だから

あいつのことは許してやってくれ…。」

ブリザード「…待て、お前はどうして

俺達を助けるような真似を…」

影浦「言ったろ？俺は神吹に命を

握られてるから従ってるだけだ…」

影浦「あんな人殺し集団を野放しに

する訳ないだろ…」

影浦「…だから、お前らを助ける

メリットはある…。」

影浦「…だから許してくれとは言わないが、

俺は、できることをした…。」

影浦「…俺は、俺に相応しい最期を望む…」

ブリザード「…やる気か？」

影浦「あぁ…殺し合おうぜ、

ブリザード…。」

ブリザード「…解決方法がないなら

仕方あるまい…。」

ジャキイン…。

影浦「な…破邪悲だと…！？」

影浦「…そうか、そう言うことか…

面白い…！！」

影浦「俺の最期には相応しい…

最高だよ…ブリザード！！」

ブリザード「…今まで苦しかっただろう…

最期はせめて、楽に葬ってやる。」

影浦「そうか…そりゃ嬉しいな…！！」

バキュウン！！

ブリザード「ふっ…！！」

ブリザード「うらぁっ…！！」

ジャキイン！！

影浦「ぐ…っ、危ねぇ…」

影浦「そうだよ…そうでなくちゃな…！！」

影浦「俺は今…最ッ高に楽しいぜ…！！」

影浦「おまえも楽しいか…！？」

バキュウン！

ブリザード「生憎だが、そんな趣味はない！！」

ザシュッ！！

影浦「よっ…と！！」

影浦「なんだよ、そりゃ残念だ…！」

影浦「じゃ…もっと楽しくやろうぜ！！」

ダッ！

ブリザード「な…突っ込んで来た…？」

影浦「この距離の銃撃、流石のお前でも

避けられるかな…！？」

バキュウン！！

ブリザード「ぐ…っ！！」

ブリザード「だが…俺はこんな物では

殺せはしない…。」

ブリザード「はぁぁっ！！」

影浦「ふっ…遅い…」

ブリザード「オラァッ！！」

影浦「な…」

バキュウン

影浦「…はぁ、油断したよ…」

ブリザード「…もう、終わりか…？」

影浦「…あぁ、俺はギブアップだ…。」

影浦「お前の勝ちだよ、ブリザード。」

ブリザード「影浦…。」

影浦「お前には…俺の本当の名前、

言ってなかったっけな…」

影浦「俺の本当の名前は松田義人…」

ブリザード「松田…？まさか、松田悠介の

兄弟か…！？」

影浦「…あぁ、悠介か…あいつは家が

貧乏だったせいで金に強い執着を

持つようになって…破滅した。」

影浦「…俺がもっと側にいてやれたら

よかったのかな…今じゃもう…」

ブリザード「影浦が悠介の兄だったなんて…

ありえん…！！」

影浦「…そうか、あいつはお前の友達だったな…」

影浦「…もしかしたら、俺らは昔どこかで

出会っていたのかもな…」

ブリザード「…ありえる、かもな…。」

影浦「…俺は、光と闇を彷徨ってた…長い間、

ずっとだ…。」

影浦「だけど…ようやく開放される、

こんな理不尽に満ちた世界から…」

影浦「俺は…この世界で何かを残せただろうか？」

ブリザード「残せたさ…きっと。」

影浦「…そうか、なら…よかった。」

影浦「…明日、SUNSINEの幹部が

全員集まる会議がある…」

影浦「そこに、神吹も来る…」

ブリザード「…！それはどこだ…！！」

影浦「北の…地別沢の辺りだ。」

ブリザード「分かった…ありがとう。」

影浦「あと、これを…」

ブリザード「…これは？」

影浦「俺の…研究資料やその他の情報を

集めた場所の鍵と…その住所だ…」

影浦「…もし、時間があったら行ってくれ…」

ブリザード「…分かった。」

影浦「…それじゃ、俺はこの辺りで…」

ブリザード「おい…影浦？」

影浦「あいつに…よろしく、頼む…。」

次の瞬間にはもう影浦は

息を引き取っていた…。

ブリザード「…影浦。」

ブリザード「…お前のことは忘れはしない。」

ブリザード「…にしても、凍歌がクローン

だったなんて…ありえない。」

ブリザード「あいつは確かに生きている…

感情がある、一人の人間のはずなのに…」

ブリザード「…灯華は、今どこに居るんだ…。」

ブリザード「…後で…行くか、ここに

書かれている場所に…。」

ーー

永遠「…お兄ちゃん！」

神野「…影浦は？」

ブリザード「…事切れた。」

凍歌「…。」

凍歌「…これでよかったのかな？」

ブリザード「…こうするしか、

無かったんだよ…それに。」

ブリザード「影浦も…こうなることを

望んでた…。」

凍歌「…こんなのって…ないよ。」

凍歌「影浦も…本当はこうなることは

望んでなかったんじゃ…」

ブリザード「…影浦には、運がなかった…

ただ、それだけのことだった…。」

凍歌「…そんな。」

ブリザード「…。」

凍歌は今も影浦の死を憂いている、悲しむと

言う「感情」がある…凍歌が人の手によって

作られたクローンなんて信じられない…。

…分からない、どうすればいい…。

華途葉「…それより、幹部の行く場所は

聞き出せたの…？」

ブリザード「…あぁ、しかも神吹もそこへ

来るらしい…。」

永遠「え…！？それじゃチャンスじゃん…！」

櫻「…でも、敵が先回りしてるかも

しれない、油断はできないよ…」

凍歌「…うん、幹部や、それこそ神吹が

来るなら警備も硬いはず…」

華途葉「場所はどこなの…？」

ブリザード「地別沢だ。」

神野「そこはSUNSINEの重要拠点がある、

おそらくそこが集まる場所のはず、

落とすのはかなり難しいわよ…」

櫻「…となれば、入念に準備してから

行かないと…。」

ブリザード「…だが、その会議が行われるのが

明日なんだ…。」

華途葉「え…？明日？」

ブリザード「…準備してる時間すら惜しい、

早めに準備しておくぞ…」

ブリザード「…それと、もう一つ。」

ブリザード「影浦から…破邪悲の資料を

手に入れた。」

華途葉「…何ですって？」

ブリザード「その一つが、これだ…。」

神野「…何て書いてあるの？」

ブリザード「これによれば…どうやらこれは

隕石と共に飛来しこの世界を凍らせた…

元凶らしいんだ。」

優来「…はぁっ！？」

永遠「…マジかよ、通りであんな力が

出せた訳だ…」

凍歌「もう、SFの話じゃん…ついてけないよ。」

ブリザード「しかも…これに完全に適合すると

破邪悲の呪いで老いることも死ぬことも

無くなるらしいんだ…。」

神野「…そんなことありえるの？」

ブリザード「…分からない、だが適合者に

なると破邪悲を使っても痛みを感じなく

なるらしい…。」

永遠「…そりゃ怖いな…。」

ブリザード「…それと、破邪悲に適合した

gmtが使用するとtiが起こるだとかなんとか…」

永遠「…え？何言ってるの…？」

ブリザード「…分からん、だが恐らく

重要なことだろう…。」

神野「…その辺りも調べないとね。」

ーー

華途葉「…ハァ。」

櫻「…。」

華途葉「…それ、もう直らないの…？」

櫻「…うん、そうみたいだね。」

華途葉「これからどうすんの…？その腕じゃ

戦闘すらままならないだろうし…。」

櫻「…私、これからは前線からは

退いてみんなをサポートしようと

思ってるの…。」

華途葉「…それじゃ、戦いには行かないの？」

櫻「いや、戦いにはこれからも出る

つもりだよ…。」

華途葉「…櫻はそれでいいの？」

櫻「うん…私はそれで充分だよ…。」

華途葉「…私には櫻の気持ちが分からないよ…」

櫻「…それは、どうして？」

華途葉「…私だったら耐えられそうにない…

自らで手を下せないことは

とても悲しいことだから…。」

華途葉「…それに、私には人のことを

信じること、とかできないからさ。」

櫻「…そうなんだ…」

華途葉「アンタには分かんないでしょ…？

私の気持ちなんか。」

華途葉「私は、散々な目に会ってきた、

そのせいで他人のことなんて信じる気が

起きなくなった…。」

華途葉「…どうすればいいのか、

分からなくてさ…。」

櫻「…私ね…決めたんだ。」

華途葉「…？」

櫻「…私も、ずっと辛くて…孤独だった。」

櫻「理解してくれる人も居なくて、

このまま一人で死んでいくんだと思ってた…」

櫻「…でも、私に手を差し伸べてくれる

人が居たの…。」

櫻「…それが嬉しかった、私のことを

愛してくれる人は今まで居なかったから…」

櫻「…だから、私は私に居場所をくれた

みんなの事だけは信じるって、決めてるんだ。」

華途葉「…。」

櫻「…この世界には理不尽な運命の前に

その命を散らした人が数多く居る…」

櫻「…私もその現場をずっと目にしてきた、

だからよくわかる…。」

櫻「…だけど、そんな人にも手を

差し伸べてくれる人はいる…」

櫻「…夜が明けて昼を迎えるように、

絶望が希望へ転じることも、たまにはある。」

櫻「…だから、いつかは華途葉にも

信じられる何かが見つかる…と、思うよ…。」

華途葉「…私には…そうは思えないな。」

華途葉「…私はもう普通にはなれない、

信じることなんて出来ない…」

華途葉「…だけど。」

華途葉「…私には大切な人がいる、

その人のためになら戦える…。」

櫻「…。」

櫻「華途葉。」

櫻「…これなら、大丈夫だよね…。」

華途葉「…ん？何の話？」

櫻「…いや、何でもない…。」

櫻「…それじゃ、私はこれで…。」

華途葉「え…ちょっと？」

華途葉「…何だったのよ。」

ブリザード「…。」

ーー

神野「…ねぇ、ここは…？」

ブリザード「…誰にも知られてない、

緊急の時に使う場所だ…」

神野「…ここに、本当に来るのね…？」

ブリザード「…あぁ。」

神野「…本当に、私に話してよかったの？」

ブリザード「…いずれ、皆にも

関係することなんだ…構わないさ。」

神野「…神吹を追い詰めるために1年以上も

費やすなんて、ブリザードの執念は

賞賛に値するわ…。」

ブリザード「…俺は、伊達に復讐

しようとしてるわけじゃない。」

神野「…私だったら、そんなにできないわ…

普通、そんなこと出来ない…。」

ブリザード「…俺達は普通じゃないから

ここまで来れた、ここに集まったんだろ…？」

神野「…それもそうね。」

ブリザード「目的のためなら

俺達は殺しも躊躇わない…世間からすれば

それこそ神吹とも大差ないと思われるだろう。」

ブリザード「それを承知で殺しを

行う…人の目など気にしない…狂った

人間が俺達なんだ。」

ブリザード「…この目的のためなら、

この肉体を犠牲にしようと、構わない…」

ブリザード「…俺にそう思わせるほど、

こいつの罪は重いんだ…」

神野「…破邪悲がなかったとしても、

いずれはこうなったんじゃないかしら？」

ブリザード「…何？」

神野「人と言う物は醜い物で…自分の

保身のために他人を平気で叩き潰す…

その構図は今の世界でも変わらない。」

神野「人の愚かさはいつになっても

代わりはしない…それ故に

こうなったのでしょう？」

ブリザード「…だとしたら、俺達は

なんでこんなことをしてるんだろうな…。」

神野「…復讐に大義も理由もいらないでしょう？」

神野「相手が憎いと言う感情があって、

それを実行に移してしまえばそれはもう

復讐として成立する…。」

神野「…復讐なんてそんなものよ、

深く考えすぎるのもじゃないわ…。」

ブリザード「…そうなのかな。」

ブリザード「…やっぱり、俺が

間違ってたのかな…」

神野「…そんなことは言ってないわよ。」

ブリザード「…え？」

神野「復讐は単純なもの、だからこそ

意味を成す…」

神野「…もし自らを苦しめた者がのうのうと

生き続けていたら苦しい気分になる…

それはとても窮屈なもの。」

神野「復讐さえしてしまえばそれは

終わる…つまり、復讐は自分への

救済になる…。」

神野「ブリザードは今までの人生で

ずっと苦しみ続けて来たんでしょ…？

だったら報われてもいいはずよ…。」

神野「…自分のために生きるって言うのも、

案外悪くは無いわよ…。」

ブリザード「…。」

神野「ブリザードはいっつも気負いすぎ、

だから自分のために生きるくらいの方が

ちょうどいいのよ…。」

ブリザード「…違うんだ。」

神野「…え？」

ブリザード「俺は…強くない、結局の所俺は

他人にすがらないと生きてはいけない…

弱いんだ。」

ブリザード「…自分のために生きたいとか、

思ったこともないんだ…そんなこと、

できやしないって分かってるから…」

ブリザード「…実際、俺は一人で何か

成し遂げたことはない…。」

神野「…。」

ブリザード「俺が何かするとしても…

そこには優来や飛那世、みんながいた…。」

ブリザード「…もちろん、一人じゃないのは

嬉しい…だけど、それが俺自身の弱さにも

なっていった…。」

ブリザード「…いつだって…俺は脆かった、

守れなかった…だから、変わりたかった、

だからこんな風になった…。」

ブリザード「…けど、結局は変われなかった、

中身は弱いままだった…。」

ブリザード「…こうなるなんて、思いたく

なかった、だけどこうなってしまった…。」

神野「…ブリザードは、それでいいのよ。」

ブリザード「え…？」

神野「…ブリザードが無理する必要はないのよ、

貴方には仲間が居るから…」

神野「…何も、一人でやることはないのよ…」

神野「…ブリザードは、もう少し

人に頼ることを覚えた方がいいと、思うわ…。」

ブリザード「…そうかな。」

神野「そうよ…私はその方がいいと思う…」

神野「貴方には頼れる仲間が居るんだから…。」

飛那世「…そうですよ、神野さんの

言う通りです…。」

ブリザード「…飛那世、ようやく来たのか…？」

飛那世「…えぇ、少し遅れました…。」

神野「本当に飛那世は二重スパイだったのね…」

飛那世「ハァ…大変なんですよ？

ずっと演技してるのも…。」

ブリザード「飛那世、大変なことが分かった…」

飛那世「…先輩もですか？」

ブリザード「…あぁ、どうやら神吹の

関係者がクローン技術を開発していた

らしいんだ…。」

飛那世「…先輩もその情報を

手に入れたんですか？」

ブリザード「…あぁ、影浦からな…。」

飛那世「…影浦から？灯華と会ったわけじゃ

ないんですか…？」

ブリザード「…あぁ、影浦が灯華の

関係者だったらしくてな…。」

神野「…待って、話についていけない…

どう言うことなの…？」

ブリザード「…凍歌が、クローンだった…」

神野「…はぁっ！？」

神野「待って…私、SUNSINEでクローンを

作ってたなんて聞いたことない…！！」

飛那世「そりゃそうですよ…この研究は

神吹に隠された上で行なわれた物ですから。」

神野「っ…！」

ブリザード「…どうやら影浦も研究者

だったらしく、クローン研究に

関わっていたらしい…」

ブリザード「…だがその研究が神吹に

バレてそして灯華の生体データを元にして

クローンを作った…」

飛那世「…それが凍歌さんの正体、

ってことですよね…」

神野「そんな…じゃあ、私達が今まで

人だと思って接していたものは別の人間を

模したクローンだと言うの…？」

ブリザード「…そうらしい。」

神野「…どうするの、これから…」

ブリザード「…変わらないさ、凍歌は

俺にとって大切な仲間だからな…。」

ブリザード「…たとえ凍歌が何者で

あろうとも、俺はあいつのことを信じるよ…。」

飛那世「…。」

ブリザード「…影浦によるとどうやら破邪悲の

データやその他のデータがある場所が

あるらしい、そこに行こう…。」

神野「…そうすれば、そのクローン研究

についてなにか分かるの…？」

ブリザード「…多分な。」

飛那世「…もう、知ってるかもですが次の

目的地は地別沢です…。」

ブリザード「…あぁ、影浦から聞いた…。」

飛那世「…なら、話は早いですね…。」

飛那世「私もあっちでできることをします、

先輩も頼みますよ。」

ブリザード「…あぁ、分かってる…。」

飛那世「…おそらく神吹が出てくる可能性が

高いです…できる限りの準備しておいて

ください…。」

ブリザード「…分かった、そっちも

気をつけろ…。」

飛那世「…えぇ。」

ブリザード「…それじゃ、また明日…」

飛那世「えぇ、ご武運を…」

ブリザード「…またな。」

神野「…。」

ブリザード「…さて、俺達は…

例の場所まで行こうか。」

神野「…えぇ、分かったわ…。」

ブリザード「…何か掴めるといいが…。」

ーー

ブリザード「…ここか。」

神野「…開けるわよ。」

ガチャ

ブリザード「…探すぞ。」

神野「…えぇ。」

ブリザード「…これは？」

神野「…見せて。」

神野「……どうやら、クローン研究に

関するデータのようね…。」

ブリザード「…どうやら実験はことごとく

失敗に終わり、結局最後まで実用化は

できなかったようだ…。」

神野「…でも、ならなんで凍歌が

クローンなの…？」

ブリザード「…あぁ、凍歌は完璧な

人間だ…しかも、灯華の人格を完全に

再現してるように見える…。」

神野「…何か妙ね…裏があるのかしら。」

ブリザード「…灯華の思考データを

搭載させたと言っていたが…」

神野「…本当にそれだけなの？」　

ブリザード「…考えられるのは、灯華の

DNAを体に移したとか…」

神野「…もしかして、脳自体が機械で

できてるとか…？」

ブリザード「…何？」

神野「…それなら脳容量をコントロール

できるだろうし、可能性はあるはず…。」

ブリザード「…その情報はここにあるだろうか。」

神野「影浦や灯華が持ち合わせている物は

全てここにあるはずよ…。」

ブリザード「…見つかるだろうか。」

神野「…大丈夫よ、ここに必ずあるはず…」

ブリザード「…全体を探そう。」

神野「えぇ。」

ブリザード「…ここに無いか？」

神野「…これかしら？」

ブリザード「…これだな。」

神野「…なんて書いてる…？」

ブリザード「…やはり凍歌はクローン

らしい、クローン生産についての資料なんだが

灯華の遺伝子が元になっていると書かれている。」

ブリザード「…どうやら、ナノマシンを

使用することでクローン実験を

成功させたらしい…。」

神野「ナノマシン…？なんでそんな物を…」

ブリザード「凍歌は体の一部が機械でできてる、

それもあるだろう…。」

神野「…となれば、これまで回復が

早かったのにも納得が行くわ…。」

ブリザード「…あぁ、どうやら金属でない

所にも一部ナノマシンが使われてるらしい。」

神野「…何？それじゃ、体がナノマシンで

できていることになるの…？」

ブリザード「…おそらく、そうなるだろう。」

神野「…本当に、人間じゃないのね…」

ブリザード「…これが本当なら、そうかも

しれないが…。」

ブリザード「…俺にとっては、凍歌が

人間でも人間でなくても俺にとっては

大切な人だよ…。」

神野「…私にとっても、凍歌は

いい仲間だと思う…。」

神野「…だけど、この現実は

受け止めなくてはいけない…。」

神野「…いつかは、凍歌と、灯華としてではなく

凍歌と言う一人の人間と向き合わなければ

いけないわ…。」

ブリザード「…そうだな、その通りだ。」

ブリザード「…だけど、俺にその覚悟が

できるか…」

神野「…できるまで、待つしかないわ…。」

ブリザード「…そんな時間が、あるだろうか…」

神野「…時間なら、いつでも作れるわ…

焦らなくていい…上手くいかないなら

時間をかければいいと思うわ…。」

ブリザード「…そう、かな。」

神野「固くなりすぎても上手くいかないから、

楽に考えた方がいいと思うわ…。」

ブリザード「…そうだろうか。」

神野「…大丈夫よ、私や飛那世が

なんとかするわ…。」

ブリザード「…ありがとうな。」

神野「いえ、例には及ばないわ…」

神野「…私は、ただ仮を返してる

だけだもの…。」

神野「…ブリザードには、たくさんのものを

もらってきたから…」

ブリザード「…神野さん。」

神野「…何？」

ブリザード「…改めて、これからも

俺達の仲間としてよろしく頼む…。」

神野「…何よ、改まって…」

ブリザード「…また、戻ってきてくれて

嬉しい…これからも仲間として…

どうか、頼むぞ…。」

神野「…えぇ、よろしくね…。」

神野「ふふっ…ただいま…。」

ーー

永遠「…。」

このままじゃ、ダメだ…

飛那世が居なくなって、櫻さんの

片腕が犠牲になった…。

…もう、飛那世は帰ってこない…だから、

僕が飛那世みたいにならなきゃいけないんだ…

…いつまでもお兄ちゃんに甘えてるわけには

いかない、僕も強くならないと。

いつまでも…みんなに頼ってるだけじゃ

いけないんだ…僕が…僕が、

みんなを助けるんだ…。

僕には…その力がある、だから…

僕が…殺らなきゃいけないんだ…。

…しばらく前、それこそ…ブリザードと

出会う前…僕は空虚な人生を

送っていた…。　

家は貧乏で、食事にありつけるのが

やっとと言う状況で…生きることすら

難しいような状況だった…。

ーー

永遠「…お父さん…お腹空いた…」

達也「文句言うな、昨日は食っただろうが…」

永遠「お腹…」

達也「うるせぇんだよ！！」

ベヂン！！

永遠「がぁっ！！」

達也「こっちには育ててやった恩があるんだ、

そんなこと言うのは許さねぇからな…！！」

永遠「ご…めんなさい…」

母「…今日のご飯を食べれるお金はないの、

そう言うことだから、ごめんね…」

永遠「…うぅ…」

…僕は、毎日のように父から虐待を

受けていた…

ずっと辛かった…毎日お腹が空いて

仕方なかった…。

…生きる意味も希望も見いだせなくて、

なんのために生きてるのかさえも

見失っていた…。

…辛くて、辛くて…もう、何もかもが

嫌になっていった…。

そんな、ある日…その運命は大きく

狂いだしていくことになった。

達也「…クソがっ！！」

母「ど…どうしたの…？」

達也「SUNSINEとか言う組織に勧められた

投資で500万も負けた…また借金だ…！！」

母「は…！？何してるのよ…！！」

達也「仕方ねぇだろうが…金がねぇんだよ、

こうでもしないとまともな生活も

できねぇだろうが…！！」

母「だからって…そんなものになんで

500万も使うことないでしょ…！！」

達也「そんなこととはなんだ…

ふざけんじゃねぇ！！」

永遠「あ…う…っ。」

達也「俺はお前らのためにやってやったんだぞ！

何様のつもりで言ってるんだ…！！」

母「ふざけないで！！」

達也「だいたい…永遠、お前がいなきゃ

こんなことにはなってなかったのによ…！！」

永遠「え…？」

母「…そうよ、全部永遠が悪いのよ…！」

永遠「そ…そんな…！」

母「アンタさえいなければ…こんなに

苦しむこともなかったのに！！」

ボガァッ

永遠「がぁあっ！？」

達也「この役立たずが！！」

ボガァッ

永遠「ぐはぁっ！！」

母「ハァ…ハァ…！！」

永遠「い…いや…っ！！」

ボガァッ！！

永遠「がはぁっ！！」

永遠「ごめんなさい…ごめんなさい…っ！！」

…その後も僕は殴られ続けて…

そして夜が明けるまで

ボコボコにされた…。

…そして、ここに居るのはもう無理だと

確信した…。

そして…我慢できなくなった僕は

とうとう家から抜け出した…。

永遠「はぁっ…はぁっ…！！」

永遠「…ここまで来れば…大丈夫かな…」

永遠「…これから、どうすればいいんだろう…。」

永遠「行く宛もないし、このままじゃ

お腹が空いて死んじゃうよ…」

永遠「…やっぱり、こんなことしない方が

よかったのかな…」

…そしてそのまま宛もなく3日ほど

彷徨い続けていた…

…ずっとギリギリの状態で耐え続けていた

けど、とうとう限界が来たみたいで…

永遠「…お腹空いたな…」

永遠「…もう、ダメだ…」

永遠「あ…」

バタッ…

ブリザード「…ん、何だあれ…？」

ブリザード「っ…倒れてる…優来！！」

優来「…この娘は！？」

ブリザード「おそらく…栄養失調で

倒れてる、応急処置を…！！」

優来「う、うん…！！」

ーー

ブリザード「…とりあえず、これで

何とか助かった…」

優来「…ふぅ、これでひとまず

大丈夫かな…。」

櫻「…その娘は？」

ブリザード「道端で倒れてた、栄養失調で

静止の境目を彷徨ってたらしい…。」

華途葉「…そんで、その娘は引き取るの？」

ブリザード「…身寄りが無ければ、

考える…。」

優来「…でも、栄養失調で倒れてたってことは

親から追い出されたんじゃ…」

ブリザード「…可能性は限りなく高いな…」

櫻「…やっぱり、ここで

引き取った方がいいよ。」

飛那世「…そんな金が、ありますか…？」

優来「で、でも…」

飛那世「…ここは神吹を倒すための

組織でしょう？それじゃここの

理念に反します…。」

櫻「それは…そうだけど…」

櫻「もし私達が引き取らなかったら

この娘はどうなるの…？」

飛那世「…この世界の摂理に飲まれるだけです。」

櫻「そ、そんなのおかしいよ…

それじゃ、この娘は…！」

飛那世「…今までも散々なほど見たこと

あるでしょう？この世界なんてそんな

物なんですよ…。」

華途葉「…クソ、頭が…」

ブリザード「まずい、華途葉の発作が…」

華途葉「どいつもこいつも金のこと

ばっか…ふざけんなよ…」

櫻「お、落ち着いて…」

ブリザード「…華途葉。」

華途葉「…何…ブリザード…」

ブリザード「…大丈夫だから、

落ち着いてくれ…」

華途葉「…うん。」

ブリザード「…この娘は、いつになったら

目を覚ますだろうか…。」

櫻「…多分、もうそろそろ目が覚めても

おかしくないはず…」

永遠「っ…」

優来「…目が覚めたよ…！」

永遠「…ここは？」

ブリザード「…栄養失調で倒れてたんだ、

何があった…？」

永遠「…うん、話してもいい？」

ブリザード「…あぁ、聞かせてくれ…。」

永遠「…私ね、貧乏でずっとご飯を

食べてなくて…」

永遠「お父さんが投資でお金を

大量に失ったみたいで…それで、

怒りが私に向いて殺されそうになったの…。」

永遠「…それで、もう嫌になっちゃって…

家出してきたの。」

永遠「でも…もう、戻りたくないかな。」

櫻「…これからどうするの？」

永遠「…宛もないから、何をすればいいか

分からないや…。」

ブリザード「…その投資先はどこだ…？」

永遠「…覚えてないけど、確か

SUNSINEって言ってたような気がする…。」

ブリザード「SUNSINE…？やはり

神吹か…！」

永遠「神吹…？って？」

ブリザード「子供を不幸にすることで

利益を得る悪の組織だ…。」

永遠「そんなものがあるの？でも、

なんで私が…？」

ブリザード「神吹がやり方にも2つ種類が

あってな…1つは、依頼があった場合。」

ブリザード「この場合は、計画的に

殺しに行く場合が多い…。」

ブリザード「…もう一つはSUNSINE単体で

動く場合…」

ブリザード「…無差別に殺されることが多い、

このケースは少ないが…君のパターンは

聞いたことがない。」

ブリザード「投資を持ちかけて

破滅させるなんて…今まで聞いたことがない。」

優来「…本格的に動き出したのかな。」

櫻「…何をするつもりなんだろう、

もっと情報を集めないと…」

永遠「…あの、ここは…？」

ブリザード「…俺達はそのSUNSINEを

滅亡させるために集まったんだ…。」

ブリザード「君も…もしよければ力を

貸してほしい…。」

永遠「…僕なんかが、いいの…？」

ブリザード「…身寄りもないんだろ？

ならここに居た方がいいさ…。」

永遠「…ありがとうね。」

優来「…これで戦力が増えるわね…

その分大変にもなるけど。」

永遠「…皆の足を引っ張らないように

頑張るよ…。」

飛那世「ハァ…呆れた。」

飛那世「…随分と甘いんですね…。」

ブリザード「…悪いか。」

飛那世「…そんなんで上手く行くんですか？」

ブリザード「…なんとかするよ。」

飛那世「…あんまり甘すぎてもダメですよ、

そう言うのにも限界があるので…。」

ブリザード「…分かってるさ、それくらい…」

飛那世「…分かってるならいいですけど、

それで負担が増えるのは自分なんですからね…」

ブリザード「…あぁ、知ってる…。」

飛那世「…おかしな人。」

永遠「…」

ブリザード「おい…名前は？」

永遠「私の…名前？」

永遠「たしか…永遠、だったはず…」

ブリザード「…俺はブリザード…

よろしく頼む。」

永遠「…ブリザード？いい名前だね…」

ブリザード「…そうか？俺にそう言ったのは

永遠の他に数えるくらいしか居ないぞ…？」

永遠「…僕の名前よりずっとマシだよ…。」

永遠「…僕の名前の由来、分かる…？」

ブリザード「…分からん、永遠に

美しくあってほしいとか…？」

永遠「…違うんだよ…。」

永遠「僕の名前の由来はね…。」

永遠「一生役に立つ奴隷になるように…

だってさ…。」

ブリザード「は…！？」

ブリザード「…そんなの、酷すぎるだろ…」

永遠「…そう言ってくれるのもブリザード

くらいだね…。」

永遠「…私に、優しくしてくれる人なんて

居なかったから…。」

永遠「お金がないから、学校にも行かせて

くれなくて…何も分からないの…。」

ブリザード「…それは、大変だったな。」

永遠「うん…もうどうにかなりそうだったよ…」

ブリザード「…そういや、腹減ってるんだろ、

櫻さんがご飯が作ってるから食べるぞ…」

永遠「え…いいの？」

ブリザード「当然だろ、俺達はもう仲間だし…」

永遠「…仲間、か…」

永遠「…そんなの、初めてだな…」

…ずっと孤独だった僕にとってそんなものは

今までなかった…僕はこの瞬間、生まれて初めて

人に必要とされたんだ…。

永遠「…っ。」

…必要とされる経験もなかった僕に

涙を抑えることはできなかった…

永遠「っぐ…ぐ…っ…」

優来「…え、ちょ、な、何で

泣いてるのこの娘…？」

櫻「え、ちょ、泣いてる…？

待ってて…！」

ブリザード「…アンタは料理に集中

してください…」

櫻「ぶぇー、はーい…」

櫻「…にしても大丈夫かな…？」

ブリザード「大丈夫ですよ…多分。」

櫻「自信ないね…」

ブリザード「…でも、大丈夫だと思いますよ…」

ブリザード「…とても悲しくて

泣いてるようには見えないので…」

櫻「…そうだよね？」

ブリザード「…多分。」

櫻「…ほんとに大丈夫かな？」

優来「…お、落ち着いて…」

飛那世「…ハァ、何ですかあれは…」

華途葉「…さぁ。」

ブリザード「…大丈夫か？」

永遠「っ…ブリザード…」

ブリザード「…何か、あったのか？」

永遠「ううん…何も…」

ブリザード「…そうか、よかった。」

ブリザード「…そろそろご飯ができるから

もう少し待っててくれ…。」

永遠「…うん、分かった…。」

櫻「…もうできるよ、はい…」

ブリザード「…ありがとうございます…」

優来「今日は…？」

ブリザード「オムライスみたいだ…」

永遠「おむ…何それ。」

華途葉「…食べたことないの？」

永遠「うん…こんな食べ物見たことないよ…」

櫻「じゃ、楽しみにしてて…おいしいと

思うから…」

永遠「う、うん…」

永遠「…はむ。」

永遠「ん…おいしい…！」

優来「そう、お気に召したようでよかったよ。」

永遠「こんな美味しいの初めて食べたかも…！」

櫻「え、やったー！」

永遠「…えへへ。」

その日から、僕はお兄ちゃんと行動を

共にすることになった…。

…生まれて初めて尊敬できる人に出会った、

それが何よりも嬉しかった…

…そしてお兄ちゃんに頼んで殺しを教えてもらう

ことになった…。

僕はお兄ちゃんから直接殺しを教えてもらって

みるみる内に殺しが上手くなっていった…。

…気がついたら僕はこのチームの中でも

トップ級の実力者になっていた…。

…お兄ちゃんと出会ったときのことは

今でも忘れない…見ず知らずの僕に

優しくしてくれて…

…僕はその時初めて幸せになれたような

気がしたんだ…。

…こんな日々がずっと続けばいいのに、

そう思っていたけど…

…そう、上手くは行かなかった…。

飛那世は裏切って…櫻さんの腕が

切られてしまった…。

…もう、手段を選んでる暇なんて

無いんだと思う。

…今、真冬の会でお兄ちゃんの次に

強いのは僕なんだ…僕がみんなを

引っ張っていかないといけない。

…お兄ちゃんに助けられた分、今度は

僕がお兄ちゃんや皆を助けるんだ…。

…もう、失ったものは戻らない、

もう何も失わないために何をすれば

いいかを考えることが大事なんだ…。

…何をすればいいか、今ならわかる…

…もう、2度と負けない…

こんなことはもう起こさせない、たとえ

飛那世が居なくとも僕は…僕達は

成し遂げてみせる…。

永遠「…お兄ちゃん。」

永遠「僕はもう…弱いままの

僕じゃないから。」

永遠「…もう、僕は弱くないんだ…」

ーー

神野「…ふぅ、疲れた…。」

…長い大仕事が終わったような気がして、

つい安堵してしまう…

…まだ、何もかも終わってないのに…

つい気が緩んでしまう。

…大変なのはここからね、

今日はもうゆっくり休みましょうか…。

…今の所はこちらに勝機は傾いている、

勝てる可能性が近づきつつある…。

…私もこの流れを断ち切ることなく

戦うことができればいいけど…

…もう、迷いは断ち切った…あとは、

私の実力次第と行ったところかしら…

…戦いのことを夜に考えてても

疲れるだけね、もう寝ましょうか…。

…ふぅ、にしても疲れたわね…

あれ、風呂入ったっけ…

ブリザード「…おい。」

…ご飯も食べてないし、お風呂とご飯を

終えてから寝ようかしら…

ブリザード「…おい？」

…にしてもこの布団なんかいい匂いするわね…

柔軟剤変えたっけ…少し嗅いでみようかしら…

神野「すぅ…」

ブリザード「…おい！」

神野「へにゃぁっ！？」

ブリザード「…人の家で何してるんだ。」

神野「…ひ、人の家…？」

…よく部屋を見てみると、すぐに

私の家でないことに気がついた…

神野「…あ。」

ブリザード「…はぁ、何をしてるんだ…。」

神野「ご、ごめんなさい…。」

…ハァ、疲れてるのかしら…

家に帰らないと…

…あ、待って…

今更だけど、重大すぎることに

気がついてしまった…

神野（ここに帰ってこない前提だったから…

家を引き払ってきたんだった…！！）

終った…どうしよう…帰れる場所がない…。

神野「あの…ブリザード？」

ブリザード「…何だ？」

神野「…急なお願いで申し訳ないんだけど、

今日は泊めてくれないかしら…。」

ブリザード「…え？何故そんな急に…」

神野「…いや、よくよく考えたら家を

引き払ったことを思い出して…ほんとに

申し訳ないんだけどお願いできない…？」

ブリザード「…はぁ。」

ブリザード「…まぁ、いいけど…

どうするんだ、しばらく部屋も探せない

だろうに…。」

神野「…あ、そっか…神吹との戦いで

忙しいから部屋を探す時間もないのか…」

神野「…あれ、もしかして私しばらく

ブリザードの家に居候…？」

ブリザード「…そうなるな。」

神野「…もしかして私やらかした…。」

ブリザード「…あぁ。」

神野「…」

ブリザード「…とりあえずもう風呂沸かしてる

から入ってきな…」

神野「…うん。」

ーー

ガラッ…

神野「…ふぅ。」

とりあえず風呂を終えた…

人の家の風呂だったから落ち着かなかったけど…

ブリザード「…終わったか、じゃあ

俺も入ってくるよ…」

神野「…うん。」

…男の人の家に入るのも何気に

初めてだから落ち着かないな…。

…何があるんだろ…見てみよう…。

神野「…へぇ、ゲームとか漫画も

結構あるんだな…どれどれ？」

神野「…やっぱりバトル物が多いのか…」

神野「…ベットの後ろには…」

神野「…ないのか、こう言うのって

だいたい裏に如何わしい物があるって

聞いてるのだけど…。」

神野「…少し探してみましょうか…？」

神野「…うーん…。」

ブリザード「…何してる？」

神野「はにゃっ！？」

ブリザード「…はぁ。」

神野「は、早いわね…」

ブリザード「…そうか？10分は入ってた

気がするが…」

神野「そ、そうだったの…？」

…あれ、私そんなに探してたっけ…

ブリザード「…とりあえず、ご飯にするぞ…」

神野「え…う、うん…」

…危ない、一命を取り留めたわ…

…ブリザードのご飯か、何作るんだろ…

…また、待ち時間ね…

…どうやって時間を潰そうかしら。

…やっぱり漫画でも読もうかしら…

いや、でもやっぱりそう言う系の本が

あるのか気になる…

…ブリザードがそんな本を隠し持ってるって

なったら面白いだろうし…気になる。

…やっぱり、探してみましょうか…

…今度は棚の裏とかも調べておきましょうか。

神野「よいしょ…えーっと、こっちは…」

神野「うーん、やっぱり無いわね…

健全な男子ならどこかしらに

隠してるはずなのに…」

ブリザード「…ん、何だ…？」

神野「っ…あった！！」

ブリザード「何が？」

神野「靴下の片割れ…」

ブリザード「…あぁ、ありがとう…。」

ブリザード「…掃除しててくれたのか？」

神野「…え？え、えぇ…」

…一応、掃除してたと言うていにしておく…

…如何わしい本があるか探してたなんて

とてもじゃないけど言えないから…

ブリザード「…その割に部屋が変わってないが。」

神野「…あ。」

ブリザード「…何してた？正直に言え…」

神野「あ…えーと…」

神野「…あう。」

ブリザード「…？何してたんだ…」

神野「…ブリザードの部屋に如何わしい本が

無いかどうか探してました…。」

ブリザード「えぇ…」

ブリザード「…なんでそんなことを？」

神野「だ…だって、気になったんだもん…

そう言うのがあるか…」

ブリザード「…ある訳ないだろ…」

神野「そんな…ブリザードも

健全な男子でしょ…なんでないの…」

ブリザード「…逆にあると思ったのか？」

神野「あると思ったもん…だって私いつも

ブリザードでそう言う妄想…」

神野「…あ！？」

ブリザード「…あ？」

神野「…。」

ブリザード「…神野さん？」

神野「い…」

ブリザード「…え？」

神野「いやぁぁぁっ！？」

ブリザード「あ、ちょ…そっちは…！！」

ベチン！

神野「ぎゃぁぁぁぁぁ！？」

ブリザード「…なんで壁に向かって走ってるんだ

この人は…。」

神野「ぐ、ぐふ…」

ブリザード「…ご飯にしよう。」

神野「はーい…。」

ーー

神野「…」

…恥ずかしいことを言ってしまった、

反省ね…。

…にしても、ブリザードも健全な男子だと

言うのにそんな本がないなんて…

何か妙ね。

…何か、隠してるものがあるのかしら…

やっぱり気になるわね。

神野「…ごちそうさま。」

ブリザード「…おう。」

神野「麻婆豆腐…美味しかったわ。」

ブリザード「…そうか、それはよかった。」

神野「…よしっ！」

…次はどこを探しましょうか…

ブリザード「…言っておくがそう言う本は

探してもどこにもないからな…」

神野「…うぐ。」

…待って？

ブリザードは…そう言う「本」と

言っていた…つまり…。

…そう言う「ビデオ」とかそう言うのが

ある可能性がある…。

ブリザード「…。」

ブリザード（神野さんまだ何か探そうと

してるのか…。）

よし、張り切って探すわよ…

神野「えーっと、こっちは…」

ブリザード「…。」

神野「こっちにないなら、こっちか…？」

神野「うーん、無いわね…」

ブリザード「…。」

神野「こんなに物色するのもブリザードに

悪いけど、私の探究心を止めることは

できないのよ…」

ブリザード「…。」

神野「…けど、ほんとにあるのかしら…。」

神野「ん…と、ここは…？」

ブリザード「…あ、あそこは…」

神野「…これは日記？ブリザード、

日記なんてつけるのね…」

ブリザード「…おい、待て、それは

本当にダメだ…」

神野「…え？どうして…」

神野「…あ。」

そこには…「堕刻神降臨の書」と

書いてあった…

神野「…ごめんなさい、

見なかったことにするわ…。」

ブリザード「…分かればいい。」

ブリザード「…余計な詮索は無用だ、

これで分かったろ…」

神野「…はい。」

ブリザード「…今日はもう遅いし、寝るぞ…」

神野「…あ、そういえば…布団は

どうするの？」

ブリザード「…この家に来客用の

布団はない…。」

神野「…じゃあ、私はソファーで寝るわ…」

ブリザード「…いや、客人をソファーで

寝かせておくわけにはいけない…。」

神野「え？それじゃブリザードは…」

ブリザード「…もちろん俺も布団で寝るぞ、

ここは俺の家だからな…。」

神野「えーっと、つまり…？」

ブリザード「…同じ布団で寝るぞ…。」

神野「は…はえぇ…」

…そんな、いきなり大胆なことするわね…

…でも、そうなれば私も覚悟を

決めないと…。

…どうしよう、どうしても

緊張してしまうな…

神野「っ…」

ブリザード「…？」

ブリザード（やっぱこの人何考えてるか

分かんないな…）

神野「…えっと、その…」

ブリザード「…どうした？」

神野「…優しくお願いします…。」

ブリザード「いや、何を…」

神野「…はえ？何って…そりゃ、

そう言うことよ…」

ブリザード「…え？」

ブリザード「…あぁ、そう言うことか…。」

ブリザード「…この人いつもなんでそんな

発送になるんだ…。」

神野「…え？」

ブリザード「…同じ布団で寝るからって

そんなことすると思うか…？」

神野「え…？しないの？」

ブリザード「…逆に、すると

思ってたのか…？」

神野「…うん。」

ブリザード「…俺はそんな奴じゃないよ…。」

神野「え…でも、ブリザードって

健全な男子じゃ…」

ブリザード「…さっきから健全と

言う言葉を履き違えてないか…？」

神野「…はう。」

ブリザード「…とりあえず、何もする気は

無いから…安心してくれ。」

神野「ん…」

…むしろしてくれてもいいんだけど…

まぁ、いいか…

…にしてもこの布団いい匂いするな…

…ん？待って、よく考えたらこの布団って

ブリザードの布団だよね…

…私、ブリザードの布団の匂いを

ずっと嗅いでたってことよね…

神野「…あ。」

…事の重大さをようやく理解できた

気がする…。

神野（私…本人の前でブリザードの

布団の匂い嗅いでた…！）

神野（は、恥ずかしい…）

ブリザード「…ほら、とっとと寝るぞ…。」

神野「え…あ、うん…」

ブリザード「…ふぅ。」

神野「あ…ちょ、近…」

ブリザード「…ん？どうした…？」

神野「あ、いや…その…なんでも

ないのだけど…」

ブリザード「…？」

神野「…はぅ…」

ブリザード「…どうした？なんか赤いけど…」

神野「い、いや…ほんとになんでも…」

ブリザード「…そうか？大丈夫か…？」

神野「あ…うん、あ、ありがと…」

ブリザード「…にしても、計画上もうそろそろ

飛那世もこちら側に戻ってくるぞ…」

神野「…え、そうなの…？」

ブリザード「あぁ、次に神吹が出てくるだろ？

ちょうどその辺りからだ…。」

神野「…そう、なら次の戦いが

終わってからね…」

ブリザード「…あぁ、俺達にとっては

この戦いが終わってからが本番だ…。」

神野「…そうね、絶対に成功させましょう…。」

ブリザード「…あぁ、そうだな…」

ブリザード「…神吹を倒すためにはまず

この作戦を成功させなければいけない…」

神野「えぇ…あいつだけは絶対に

殺してやるわ…。」

ブリザード「…あぁ、あいつは生かしては

おけない、俺達がやらなきゃいけないんだ…」

神野「…うん、絶対に、倒そう…皆で。」

ブリザード「…あぁ、俺たちならきっと

成し遂げられるさ…。」

神野「…うん、改めて、頑張ろう…」

ブリザード「…あぁ。」

ブリザード「…ん？」

神野「すぅ…すぅ…」

ブリザード「…もう寝たのか…。」

ブリザード「…。」

ブリザード「…大丈夫だ、

きっと上手く行くさ…」

ーー

神野「ふぁ…」

神野「…あれ？もう朝…？」

ブリザード「…おはよう、もうご飯

出来てるぞ…」

神野「…あぁ、ありがとう…今行くよ。」

神野「ん…まだ、眠い…」

神野「…今日のご飯は…？」

ブリザード「春雨スープと角煮、

クロワッサンだ。」

神野「朝から中々豪勢なものね…」

ブリザード「作るのは大変だが

やってみると案外楽しいものだぞ。」

神野「そうなの…？今度私も

やってみようかしら。」

ブリザード「…やりたいなら教えるよ、

その方が楽にできるだろうし…。」

神野「いいの？じゃあ、

お願いしようかしら…。」

ブリザード「…でも、先にやることを

全部終わらせておかなくてはな…」

神野「…えぇ、楽しみにしておくわね…。」

神野「…フフ、楽しみが増えたわね…。」

ブリザード「…。」

神野「…ごちそうさま。」

神野「…今日も美味しかったわ。」

ブリザード「…そうか、よかったよ…。」

神野「…私は、そろそろ準備しておくわ。」

ブリザード「分かった。」

神野「…。」

…この家に居るのももう2日目だから

少しは慣れたけど…やっぱり、

落ち着かないな…

やっぱり自分の家じゃないって言うのも

あるけど…ブリザードの家でもあるから

緊張してしまうわね…

…さ、そんなことよりとっとと

準備を終わらせないと…ブリザードに

どやされるわね。

神野「よいしょ…っと。」

神野「えーっと…こんなもんでいいのかしら？」

神野「…さて、これで準備は

終わりかしら…」

神野「…結局暇になってしまったわね、

何をしましょうか…」

神野「…やっぱり、また探して

みましょうか…」

…未だ、私はこの家に如何わしい本が

あると言う可能性を諦めていなかった…

…華途葉辺りにバレたらきっと

呆れられてしまうわね…。

神野「…あ、そういえばここは

探してなかったっけ…」

私はそう言っておもむろにタンスの中を

開けてみることにした…。

神野「…よいしょ。」

ガチャ

永遠「…あ、神野さん。」

神野「…え、何してるの…？」

永遠「見たらわかるでしょ？

住居不法侵入だよ。」

神野「いや、そうじゃなくてなんで

こんな所に居るの…？」

永遠「あー、お兄ちゃんの隠し撮り写真の

回収に来たんだ。」

神野「…はい？」

永遠「いやー、にしても神野さんってば

すごいよね、家を引き払ってまでお兄ちゃんと

一緒に住む口実を作るなんて…」

永遠「いやー、脱帽だよ…これは

神野さんにしかできない芸当だね。」

神野「…私としては棚ぼた的な

感じだったんだけどね…。」

永遠「え、そこまで考えてやってなかったの？

すごいな…ほんとに。」

神野「…そうなの？」

永遠「…多分！」

永遠「…そういえば、見る…？」

神野「…何を？」

永遠「何ってそりゃ、お兄ちゃんの

隠し撮り写真ですよ…」

神野「…何？」

永遠「僕はね…誰にも話してないんだけど

お兄ちゃんの隠し撮り写真を集めて

色々するのが趣味なんだ…」

永遠「…ね、神野さん…僕は神野さんに

素晴らしい提案をするよ…」

神野「…はぁ。」

永遠「神野さんも、僕と一緒にお兄ちゃん

隠し撮り協会に入らない…？」

神野「…何その協会。」

永遠「今作った！」

神野「…。」

神野（…この娘もうダメかもしれない。）

永遠「…その練り上げられた

同棲力、お兄ちゃんの恋人の領域に近い…」

神野「…ごめん、何を言ってるの…？」

永遠「僕のみぞ知るってことだよ。」

永遠「さ、お兄ちゃん隠し撮り協会に

入ると言うんだ、神野さんよ！」

神野「…入らない。」

永遠「…はえ？」

神野「…そもそも、私はブリザードに

対してそんなにやましい気持ちを持ってる

つもりはないの…」

神野「…ブリザードがそう言う本持ってないか

探してみたけど…。」

永遠「はー、そっかそっか…」

永遠「神野さんはこのまま恋人になるのが

既定路線だと思いこんでるから

余裕があるって魂胆だ…。」

神野「私はそんなに穢れてないわよ。」

永遠「なーっ！！僕が穢れてるって

言いたいのかー！！」

神野「…それ以外ないでしょ、逆に…」

永遠「もー、いいじゃーん！僕に

協力してよー！」

永遠「僕と契約してお兄ちゃんのストーカーに

なろうよー！」

永遠「お兄ちゃんのあんな所やそんな所を

隠し撮りして楽しもうよー！」

神野「…本性を表したわね、この小娘が…」

永遠「フフフ…僕は目的のためなら

手段を惜しまないんですよ…」

永遠「…ねぇ、神野さんも思春期だよね…」

神野「…それが、何なの…？」

永遠「…お兄ちゃんのヌード写真。」

神野「な…っ！？」

永遠「あれ？お兄ちゃんにそう言う感情は

持ってないんじゃなかったっけ…」

神野「っ…！ぐ…！」

永遠「まー、仕方ないよね…神野さんも

思春期だし…お兄ちゃんの全裸に興味を

持っててもおかしくないはずだ。」

永遠「…僕、お兄ちゃんのヌード写真を

持ってるんだ…もう、分かるね…？」

神野「…。」

神野「ブリザード隠し撮り協会に…

私を入れて…！！」

永遠「フフフ、僕は正直者は大好きだよ…」

永遠「じゃ、これで交渉成立だ…」

永遠「これが、約束のお兄ちゃんのヌー…」

ガシッ

永遠「…はえ？」

ブリザード「…。」ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ

神野「…あﾞ。」

…とんでもない声が出てしまった…

にしても、ブリザードがとんでもないオーラを

醸し出している…。

ブリザード「…永遠、何をしている…」

永遠「あ、あ、あ…え、えーっと…そ、その…

あ、えっと…あ…そうだ、神野さんを

迎えに…」

ブリザード「永遠、なんで神野さんがここに

居ることを知ってるんだ…？」

永遠「…あっ、やべ…」

神野「…。」

…火がこっちまで来る前に私は逃げる…

それが私の流儀…

ブリザード「どこへ行くんだ、神野さんよ…」

神野「…ひゃうっ！？」

ブリザード「まぁ、そんなに怯えることはない…」

ブリザード「ゆっくり、話し合おうじゃないか…」

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ…

神野「あ…えっ…と、あの…」

…そう言いつつ優しく微笑むブリザードの

目は…全く笑っていなかった。

…本気で泣きそう、今日が命日になっても

おかしくないかも…。

ブリザード「…ご飯食べ終わっても神野さんが

居ないと思ったら、こんな所で何を

してるんだ…正直に言え…」

永遠「えーっと、その…あの…」

ブリザード「永遠…？」

永遠「はっ、はいぃぃっ！？神野さんに

お兄ちゃんの写真を渡そうと

してましたぁぁぁっ！？」

ブリザード「…そうか。」

神野「あ、あの永遠が一瞬で屈服した…

なんて圧力だ…」

ブリザード「…んで、隠し撮りしてたって

訳なのか…？」

永遠「あ、は…はい…。」

ブリザード「…そうか。」

ブリザード「…今日の晩ご飯は

豪華になりそうだな…。」

神野「っ…」

…そうブリザードがボソッと言った一言を

私は一生忘れることないと確信した…

永遠「あ、にゃ…ごめんなさ…」

ブリザード「…なぁ、永遠…」

ブリザード「少し前だったか、自分のこと

女体盛りにして食べてほしいって

言ってたか…？」

永遠「あ、あのその…え、えーっと…それは…」

ブリザード「…今なら、叶えてやってもいいぞ…」

永遠「あ、ご、ごめんなさ…」

ブリザード「…ハァ。」

ブリザード「…流石に冗談だ。」

永遠「あ、よ、よかった…」

ブリザード「…もうこんな紛らわしいことは

するんじゃない、分かったな…」

永遠「あ、はい…」

神野「…ふぅ。」

…待って、今の流れだと私の写真のこと

触れなければこのまま逃げ切れるんじゃ…

神野「…ほら、永遠、分かった…？」

永遠「え…？う、うん…」

ブリザード「…なぁ、神野さん…？」

神野「え…？」

ブリザード「…分かるな？」

神野「あ、はい…」

…そんなかんたんにはぐらかせる訳もなく、

返却することになった…

…あれ？と言うか私が渡された写真って…

ブリザード「…おい、永遠…？」ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ

永遠「は…はいっ！？」

ブリザード「…何で俺の風呂の

写真があるんだ…？」

永遠「…え、あーっと、その…」

永遠「あ、そうだ、神野さんの

お風呂の隠し撮り写真もありますよ！！」

ブリザード「…？」

神野「え、ちょ、待って…！！」

神野「ダメ…ブリザード、ダメだから…！！」

ブリザード「…」

ブリザード「…。」

ブリザード「ダメだ。」

永遠「えーっ！？」

神野「ちょ、今少し考えたでしょ、ねぇ…！」

ブリザード「…もう、こんなことはするな…」

ブリザード「…分かったな？」

永遠「…はい。」

…永遠がこれまでにないくらい

悲しそうな顔をしている…。

…こんなこともあるのね。

神野（て言うか、やっぱりブリザードも

そう言うの考えたりするんだ…）

ブリザード「…さて、そろそろ行くぞ…」

永遠「…あ、ちょっと待って、

まだ準備終わって…」

神野「…置いていきましょう。」

ブリザード「…そうだな。」

永遠「ちょ、待ってってー！！」

ブリザード「…。」

ーー

ブリザード「…朝から騒がしかったな。」

神野「…そうね。」

永遠「…じー。」

神野「…ん？」

永遠「フフフ…逃しはしないよ。」

神野（あの娘…何してるのかしら。）

永遠「もぐもぐ…僕はただじゃ

終わらないんだよ…！」

神野（…まだご飯食べてなかったの…。）

永遠「…ん？あ、蝶々！珍しいなー！」

神野「…ブリザード、走るわよ…」

ブリザード「…え？」

神野「いいから、早く…」

ブリザード「ちょ…え…」

ダッ！

永遠「あー、珍しい物を見た、お兄ちゃんにも

報告してお…え？」

永遠「…。」

永遠「コラァァァァ！！逃げんなあああ！！」

ダッ！

神野「…ふぅ、ここまで走れば大丈夫かな…」

ブリザード「…なぁ、永遠相手に逃げる必要

あったか？放置しておけばいいだろ…」

神野「いや…あぁ言うのは放っておくと

エスカレートしていくから、

離した方がいいのよ…。」

ブリザード「…でもさっき神野さん永遠の

ストーカー行為に加担してなかったか…？」

神野「…。」

神野「とにかく、放っておいちゃダメなのよ。」

ブリザード「…そうか。」

ブリザード（明確に話を逸らされた気がする…。）

永遠「ハァ、ハァ…ようやく追いついた…」

ブリザード「あ、永遠…。」

永遠「もー、酷いよー！なんで僕から

逃げちゃうのさー！」

神野「だって、放っておいたら永遠に

ストーカーしちゃうじゃない…永遠だけに。」

ブリザード「…何言ってるんだ？」

神野「…ごめん、今のは忘れて。」

ブリザード「…分かった。」

永遠「どの口が言ってるのさー、

神野さんだってストーカーの素質

あるじゃーん！！」

ブリザード「…それは認める。」

神野「…え、嘘でしょ？」

ブリザード「…神野さんもどっちかと言えば

永遠寄りな気がすると思うぞ…？」

神野「え、そうなの…？」

ブリザード「…俺の部屋をずっと探し回ったり

俺の裸の写真をもらっている時点で

似たような物だと思うぞ…？」

永遠「…残念ながら僕と神野さんは

性質が似通っているようだよ…。」

神野「…私、もうそう言う路線で

突っ切ろうかしら…。」

永遠「いいじゃん、僕と一緒にお兄ちゃんを

盗撮しようよ…」

ブリザード「…おい。」

神野「…考えておくわ。」

永遠「よし、前向きな返答を

楽しみにしているよ…」

ブリザード「…勘弁してくれ。」

神野「…私はブリザードのストーカーに

なるわ、理由は…特にない。」

ブリザード「せめて理由はあって欲しかったよ。」

永遠「フフフ…ストーカーになるのに

理由なんていらないんだよ…」

永遠「そこにお兄ちゃんが居ればストーカーは

できるんだよ…」

ブリザード「…どう言うことだ。」

永遠「…さぁ？」

ブリザード「分からないのかよ…」

永遠「うーん、何なんだろ…僕が

ストーカーしてた理由なんて

考えたことないや…。」

ブリザード「…おい。」

永遠「でもなー、気がついてたらストーカー

してたからさ、理由とか分かんないんだ。」

ブリザード「理由もなくストーカーされる

身にもなってくれよ…。」

永遠「えへへ…」

ブリザード「…何がしたいんだ。」

永遠「うーん、考えとくよ！」

ブリザード「…怖い。」

神野「…ほんとに理由ないの…？」

永遠「うーん、でも…楽しいからかな！」

ブリザード「…楽しいだけで人を

ストーカーするんじゃない。」

永遠「うーん、ダメか、次までに

正当性のある口実を考えておくよ！」

ブリザード「…はぁ。」

神野「…この娘、どうしてそこまでして

ストーカーしたがるのよ…」

永遠「フフフ…さぁ、どうでしょう…。」

永遠「…。」

永遠「でも、よかったよ…神野さんが

戻ってきてくれて。」

神野「え…？」

永遠「神野さんは真冬の会に必要な

人材だよ、それに、みんな神野さんの

ことを大切に思ってたんだよ…。」

神野「え、でも…」

永遠「華途葉だって神野さんのことを

信じたかったからこそ、

あんな態度になったんだと思う…。」

神野「…そうかな。」

永遠「…僕は、一刻も早くまたここの

仲間として神野さんに戻ってきて

欲しかったんだ…」

神野「…だからこんなことを？」

永遠「…そんな所かな。」

神野「…すまないわね、そんなことまで

させちゃって…。」

永遠「いいの、僕がやりたくて

やったことだし…。」

永遠「一人でいる神野さんを助けるのは

僕の役目だから！」

神野「…ありがとうね、永遠…」

永遠「…いえいえ。」

永遠（でも…結局、僕がお兄ちゃんを

ストーカーしてる理由ってなんなんだろ…）

永遠（…僕は、確かにお兄ちゃんのことが

大好きで…大好きで…ん？）

永遠（あれ…そう言えば僕って

お兄ちゃんのことをどう思ってたんだっけ…）

永遠（分かんない…何でだろう、

どうして思い出せないんだ…？）

永遠「…。」

ブリザード「…どうした、永遠？」

永遠「…え？」

ブリザード「浮かない顔をしているが…

何かあったのか？」

永遠「え、いや…何も…」

ブリザード「…何かあったらすぐに

言ってくれて構わないからな。」

永遠「う、うん…」

神野「…永遠も大変なのかしら…」

神野「…それに、永遠の言ってたことが

本当だとしたらこんなの、永遠らしくもない…」

神野「永遠は優しいけど…こんなに責任感を

持って行動したがるタイプじゃなかった…

どうしたのかしら。」

永遠「…。」

僕は…ずっと、このもやもやとした感情を

持ち続けていた…その正体もろくに

分からないまま。

蓋をし続けて…ずっと、奥にしまい続けてた。

…この正体が途方もなく分からない…

それが、何故だか不安で仕方がない…。

僕は、本当にこのままでいいのかな…。

next…