星屑の快速特急
遠野みやむ
第1話 銀の妖精
星間飛行が当たり前になった現代、西暦50××年。
地球以外の惑星でも人間が普通に生活をしている。
地球に暮らしている人々は大体の人間が他の星との混血であり、逆に純地球人が珍しくなっていた。
そんな中、僕のクラスに1人の転校生がやって来た。
「イクシオンから来たジンくんだ。皆仲良くするように」
真っ白い肌に、キラキラと太陽の光を反射して輝く銀色の髪。
目は吸い込まれるような深い緑色をしている。
「イクシオン…」
聞き覚えのない惑星の名前を僕は呟く。
彼を初めて見た時、僕は雪の妖精がやって来たのかと一瞬思った。
『本日は銀河国際鉄道をご利用いただきましてありがとうございます。お客様にご搭乗のご案内を申し上げます。まもなく、地下12階プラットホームに東京駅始発、特別快速「ギャラクシーエクスプレス」21号、海王星行きが参ります。この鉄道はアジア経路です。途中ソウル、上海、北京、ハノイ、マニラ、ジャカルタ、ニューデリーの順に停車いたします。アムステルダムを経由後にロンドンにてヨーロッパ経路の鉄道の到着を待って、グリニッジ国際天文ブリッジより先は宇宙空間へと移動いたします。各出発時刻は…』
プラットホームに搭乗案内が流れる。
ギャラクシーエクスプレスはワープ機能が搭載された電車だ。
太陽系の惑星、準惑星全てにこの電車で行く事が出来る。
長期休みに入った7月末。
僕は初めて1人でこの電車に乗ろうとしていた。
僕は父が地球人、母が海王星人である。
14歳になった誕生日、両親から近い内に母の故郷である海王星に久しぶりに行こうと話を持ちかけられた。
あちらには祖父母や親戚もたくさんいるようだが、幼少期に行ったきりの僕はあまり記憶になかった。
なので今日は、本当は両親も一緒に行く予定だったのだが2人とも急な仕事が入ってしまい行けなくなってしまった。
母は日を改めようと提案したが、父に「男には時として冒険が必要だ」と、1人で行ってみろと言われたのだ。
「2人揃って外交官ですまない」
東京駅の地下へ向かうエレベーターの中で、僕は父から謎の謝罪を受けた。
「快速だから1日半で着くけど、気をつけてね」
心配そうに母が言った。
『地下12階、ギャラクシーエクスプレス・プラットホームです』
僕は両親と別れてプラットホームに向かう。
クラスメイトは全員他の惑星との混血だが、海王星の血が入っているのは僕だけだった。
辺りを見渡しても誰も知っている人はいない。
到着までの1日半、静かな旅になりそうだなと思っていたら後ろから名前を呼ばれた。
「あれ?カイトくん!」
振り向いた先から銀髪の雪の妖精…もとい、ジンが走って来るのが見えた。
「こんにちは」
僕を見たジンはにっこりと微笑んでいる。
「……、どうも」
僕は照れくさくて、顔を赤くしながらぺこりと頭を下げるくらいしか出来なかった。
転校して来たばかりのジンとはほぼ会話をした事がない。
おまけに僕は人見知りだった。
「僕、次に来る海王星行きに乗るんだ」
そう言った彼は、僕に切符を見せて来た。
僕が持っているものと一緒だ。
「僕も海王星行きだよ」
僕は自分が持っていた切符を見せた。
「そうなの!?うわあ!」
嬉しそうに喜ぶジンを見て、僕は何だかむず痒くなった。
『12番線にギャラクシーエクスプレスが到着いたします』
「あ!来た来た!カイトくん!来たよ!」
アナウンスの後に、僕たちがいるホームにロイヤルブルーの車体の電車が到着した。
側面には流れ星のマークと「Galaxy Express」と名前が書いてあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます