親から一軒家を貰ったので婚活を始めようとしたら幼馴染が立候補したので結婚して人生勝ち組!

砂乃一希

プロローグ

「ほら起きて、拓哉。せっかく作った朝ごはんが冷めちゃうよ?」


「うぅん……?美優……?」


平日の朝、俺の人生において両親の次に多く聞いてきた声に起こされる。

今までは起きるのが死ぬほど嫌だったのに最近はあっさりと起きることができる。

その理由は単純、起こしてくれるのが気の知れた妻だからだ。


「はいはい、美優ですよ。ほら、朝ごはんできてるから早く起きて」


「分かった。今日も起こしてくれてありがとね」


俺の名前は村松むらまつ拓哉たくや

どこにでもいる普通のサラリーマンだ。


そしてエプロン姿で俺の事を起こしてくれたこの女性の名前は村松むらまつ美優みゆ


美優は幼稚園に入る前から仲がよく高校に入るまでずっと同じ学校だった幼馴染で初恋相手でもあり今は俺の妻だ。

整った目鼻と肩辺りまで伸ばしたストレートの黒髪、そして落ち着いた雰囲気が印象的な美人で学生時代はよく男子から告白されていた。


そんな美優が作ってくれた朝ごはんを食べるべく俺は自分の部屋を出て一階に降りダイニングの席につく。


「うわぁ!今日のご飯も美味しそうだね」


温かそうな味噌汁にふっくらした焼き魚、さらには良い色の卵焼きに白米!

見るからに美味しそうで食欲が湧いてくる。


「いただきます!」


まずは味噌汁を一口。

う、美味い……!

やはり美優の料理は本当に上手だ。

箸が次から次へと勝手に動いてしまう。

そして気づいたら全て食べ終わっていた。


「ごちそうさまでした」


「お粗末様です。ふふ、いつも拓哉は美味しそうに食べてくれるね」


「実際に美味いからね。本当にいつもありがとう」


美優と結婚してから心なしか仕事の調子もいい。

毎日が幸せなこと尽くめだ。


「今日は飲み会とかある?」


「いや、今日は何もないから残業とかが入らない限りはいつも通りの時間に帰ってくるよ」


「分かった。今日の夕ご飯は肉じゃがにするから買い食いとかしてこないでね?」


「やった!今日は急いで仕事終わらせてくるよ!」


肉じゃがは幼い頃から俺の大好物なのだ。

本音を言ってしまうと母さんが作ってくれる肉じゃがより美優が作ってくれる肉じゃがの方が美味い。

金を払ってでも食べたいくらいだ。


「そう言ってくれるのは嬉しいけどそれでミスとかしてこないでね」


「分かってるって!」


「あ、もうそろそろ出勤の時間じゃない?」


「え!?やべ!」


時計を見るとそこそこ危うい時間まで来ていた。

俺はスーツに急いで着替える。


ちなみにそんなに慌てていない美優は無職なのではなくイラストレーターなので出勤がないのだ。

基本的には依頼された仕事をしたり動画サイトに漫画をあげたりしている。

漫画はとても好調らしく銀の盾も貰っていた。

玄関で美優が俺の仕事のカバンを手渡してくれる。


「はいこれ。お弁当と水筒も中に入ってるから」


「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」


「行ってらっしゃい。今日も頑張ってね」


美優が頬に行ってらっしゃいのキスをしてくれる。

交際経験が無いまま結婚した俺達は二人して顔を赤くする。

美優は自分がやったことが今更恥ずかしくなってきたのか俺をぐいぐい押し出してきた。


「ほ、ほらお仕事でしょ!頑張ってきて!」


「あ、ああ!行ってくる!肉じゃが楽しみにしてるから!」


半ば強引に見送られ会社に向かう。

……美優の唇柔らかかったなぁ。


俺達が交際せず結婚した理由を話すには少し前に時を遡る必要がある。



────────

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