第53話 湖畔村の躍進 野草茶の増産

「村長さん、野草茶、順調そうでなによりですね」


「お陰様で。現金収入が小麦よりも多くてみんな大喜びなんですよ」


「僕はラグとも相談したんですが、さらなる村の発展を手助けできないか、と思うんです」


「ほ?それは大変嬉しいお申し出ですが」


「まずは、野草茶の増産。これは進めてますよね」


「ええ。野草茶の栽培面積を増やしてます。それとメイプルの繁殖」


 野草茶を栽培している荒れ地は

 様々な野草が生えている。

 それらを抜いて魔ヨモギの種を撒くだけ。

 

 作付け面積が不足する場合に備えて、

 車で周囲の森を伐採、地面の腐葉土を取り除いて

 わざと荒れ地を作り出している。


 メイプルもずっと繁殖を進めている。

 メイプル繁殖地の周りに挿し木をするだけ。

 これを1年かけて行ってきた。

 初期の頃の挿し木はすでに十分な成長をしている。


「もうすぐ、メイプルの収穫期になります。すでに現地では第一陣の作業員がスタンバイしてます」


「人手は足りてますか」


「そこなんですよ、問題は。この村は少し魔素濃度が高いので、気楽に人を呼べないんですが、孤児たちがどんどんと村の環境に馴染んできました」


「かなりいい結果を出してますね。そこで、一般の大人にも同じような訓練を施したらどうかと」


「うむ、それはやってみる価値がありますね」


「ええ。街でいると周囲から人が集まってきます。職を求めて。ですが、なかなか難しいのが現状です」


「なるほど。出稼ぎ希望者を呼ぶ、というわけですね」


「ですね。或いは移民希望者とか」


「当面は村に関係のある人から呼びたいですね」


「確かに。全くの他人は呼びにくいですものね」


「では、街に向かった元村人とかその親戚からですな。余裕があれば、ツテをたどって募集をかけてもいいですね」


 こうして、少しずつ人手を増やしていった。

 いきなり人を増やすと軋轢が必ず生まれる。

 特に湖畔村のような閉鎖社会では。


 スパイが紛れ込むかもしれない。

 野草茶の秘密を探るために。


 そういうのは、車のレーダーである程度

 判別している。

 スパイは赤色表示されるのだ。

 でも、100%とはいえないだろう。

 しばらくは、試行錯誤で人員を増やしていく。



 なお、魔ヨモギ用の農地開拓にあたって出た土。

 魔素をたっぷり含んだ腐葉土だ。

 これと小麦わらを混ぜてバイオ魔法で肥料化した。


 これが小麦畑にばらまかれ、

 小麦増産の主役となっている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る