第155話 キューブ山
【紅の薔薇】から情報を貰った翌日。
約束していた城門前に向かうと、既にベロニカとモナの姿があった。
二人しかいないことを考えると、やはり昨日の今日でパーティメンバー全員を集めることはできなかった様子。
「グレアムさん、おはようございます。今日はよろしくお願い致しますね」
「ああ、よろしく頼む。他の人達はやっぱり来られなかったのか?」
「一応、声を掛けてみたけど駄目だった。まぁギルド長と仲違いする感じになるし、私とベロニカだけの方が良かった感もあるからいいんだけどね」
確かに残りのメンバーが参加していない方が、ギルド長とも上手く折り合いをつけれる可能性がある。
最悪の場合、俺が二人を脅して案内させた――とか言えばいいだけだしな。
「他の人とも久しぶり会いたかった気持ちはあるけど、昨日決まって今日出発だし仕方ないね!」
「だな。先導は二人に任せて大丈夫か?」
「もちろんですわ。レッドドラゴンを倒した辺りまで、しっかりと先導させて頂きます」
「なら、案内はベロニカとモナに任せた。道中の戦闘は俺達がやるから任せてくれ」
「ベロニカさん、モナさん。よろしくお願いします」
「任せて。それじゃ出発しようか」
ベロニカとモナに任せて、俺達はクリンガルクの街を出発した。
かなりはっきりと見えている山のため、一、二時間程度で着くと思っていたのだが……予想していたよりも倍以上遠く、キューブ山に着いたのはクリンガルクを出て五時間後。
先頭をベロニカとモナに任せたということもあり、進むペースが若干遅かったというのもあるが、それでも予想以上に遠かったな。
遠くにあったものが近く感じたということは、それだけキューブ山が大きいということ。
一応野宿ができる準備はしてきたが、これは確実に野宿をすることになるだろう。
「やっと着いた! 何かめちゃくちゃ遠く感じたんだけど!」
「俺もだ。意外に遠かったな」
「これ、今日中に登ることは難しいんじゃないでしょうか?」
「えー! 今日中に帰れないのー?」
俺達が初めてのキューブ山に各々の感想を言い合っていると、その話を聞いていたベロニカさんが返答してくれた。
「今日中に帰ることは難しいですわ。中腹に山小屋がありますので、そこで一泊してから山頂を目指すこごになっております。レッドドラゴンの死体が残っていれば明日中には下山できると思いますが、もしグレアムさん達が仰っていたようにドラゴンゾンビとなっており、その捜索を始めるとしたら……きっと明日も山小屋で一晩過ごすことになると思いますわ」
「げげげっ! そんなに泊まることになるとは思ってなかった! ねね、グレアム。ドラゴンゾンビの反応とかは感じないの?」
「到着した時から探ってはいるんだが……今のところ感じないんだよな」
ドラゴンゾンビとなれば、強い生命反応を感じ取れると思っていたのだが、今のところ一切の生命反応を感じ取ることができていない。
アンデッド系の魔物だから生命反応を感じ取れないのか、それともドラゴンゾンビ自体いないのか。
グアンザの情報が嘘ということであれば、それが一番良いまであるが……既にキューブ山から移動していたとかなら非常に厄介。
とにかく山頂を目指して進み、【紅の薔薇】達が討伐したというドラゴンの死体をこの目で確認しないと始まらない。
「じゃあ、この山にはいないってことにならない?」
「ならない。単純に生命反応がない可能性だってあるし、別の場所に行った可能性もある。とにかく死体の確認は急務だ」
「アンデッド系の魔物ですもんね。ベインさんは強い生命反応を持っていますが、他のアンデッド系の魔物は、目の前にいても存在自体がない気がします」
「ベインは完全に特別だからな。他のアンデッド系の魔物はジーニアの言った通り、生命反応を感じることができない」
まぁその分魔力反応を感じることができるのだが、ドラゴンゾンビは魔法を使うとは思えないからその線で探るのも厳しい。
とにかく足で探るしかないということ。
「じゃあ諦めて山での野宿をするしかないってことか……!」
「山小屋はちゃんとしてましたので、そこまで不安がらなくて大丈夫ですわ」
「でも、トイレも風呂もないけどね」
「うわーん! 全然ちゃんとしてない!」
「アオイは求めすぎだ。気にしなくていいから進もう」
「分かりましたわ。ここからは更に険しい道になりますので、はぐれないように注意をしてください」
「分かりました。ベロニカさん、モナさん。引き続きよろしくお願いします」
ぶーぶー文句を垂れているアオイは放っておき、俺達は再び山頂に向かって歩を進めることとなった。
まぁ俺も野宿はできる限り避けたいと思っていたため、俺一人で一気に登頂することも提案しようと思ったが……それではジーニアとアオイを連れてきた意味がないからな。
二人の成長のためにも野宿を受け入れ、ドラゴンゾンビ捜索に集中するとしよう。
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