第153話 再会


 先ほど来た時よりも賑わいを見せている中、先ほど対応してくれた店主が俺達を見るなり凄い勢いで向かってきた。

 即刻追い出されることも覚悟していたのだが……。


「あっ、あなたたち! ……本当に【紅の薔薇】さんと知り合いだったんですね」

「何度もそう言っていただろ。知り合いと気づいてくれたということは、俺達のことを伝えてくれたのか?」

「半信半疑でしたが必死に訴えられましたので、一応耳には届けようと思いまして……。伝えたところ知っている人達だと言われました。奥で待っていますので案内致します」

「それは助かる。案内してほしい」


 ドラゴンゾンビについては何の情報も得られていなかったため、ここで【紅の薔薇】のところに通して貰えたのは良かった。

 【紅の薔薇】も討伐に参加していたと言っていたし、きっと何かしらの情報を持っているはず。


「おー、やったね! 絶対に無理だと思ってたよ!」

「正直、俺も無理だと思っていた。やっぱり何でも話してみるもんだな」


 そんな会話をしながら店主の後についていくと、従業員しか入れない場所に入り、その奥にある部屋へとやってきた。

 【紅の薔薇】は完全にVIP扱いのようで、ここまで厳重に守られていたら同じ店に通っていたとしても一生会えることがなかっただろう。


「失礼致します。先ほどお話した方が来られましたので、こちらまでご案内致しました。それでは私はこれで失礼致します」

「いつもありがとうございます。……お久しぶりです。王都ではお世話になりました」


 二人しかいないようだけど、中にいたのは紛れもない【紅の薔薇】。

 そして一番特徴的だった、お嬢様のような雰囲気のある縦巻きロールの人が声を掛けてくれた。


「この部屋まで通してくれてありがとう。【紅の薔薇】には色々と聞きたいことがあって、訪ねさせてもらった」

「お噂は届いておりますわ。グアンザの刺客としてやってきたとかで、ギルド長から関わることのないようにと言いつけられましたから」

「そんな忠告をされていたのか。それなのに招き入れて大丈夫なのか?」

「もちろんです。王都では色々な意味でお世話になりましたし、あなた方がグアンザの刺客なんかではないことを私達が一番よく理解しておりますわ」


 ギルド長からお触れが出されていると聞いた時はヒヤッとしたが、分かってくれているみたいで良かった。

 これなら情報を教えてもらうことができそうだ。


「分かってくれて良かったぁー! あんな扱いされていたのに、私達グアンザの仲間って言われたんだよ!?」

「お気の毒と言わざるを得ませんが、仕方のないことでもあります。ギルド長は何としてでもグアンザをギルドに戻さないようにしようとしておりますので」

「態度から分かっていましたけど、グアンザはそんなに嫌われているんですね」

「そりゃあもちろん。あんたたちなら分かると思うけど、この街の中ではもっと酷かったからね。ギルド内ではセクハラにパワハラは当たり前。現ギルド長が上手くやってくれていたから崩壊はしなかったけど、グアンザのせいで辞めた職員の数は五十を超えるから」

「まぁ私達はそのグアンザに目をかけられ、こうしてSランク冒険者にまでなれたので複雑な心境ですが」


 【紅の薔薇】にとっては恩人でもあるため、中々に複雑な心境のようだ。

 嫌な奴という事実に変わりはないことから、戻ってきてほしいとかではなさそうだけど。


「目をかけられたっていうか、出世の道具として使われただけでしょ。私はグアンザのこと大嫌い」

「私も大嫌い! 【紅の薔薇】がグアンザのこと好きだったらどうしようと思ってたけど、嫌いみたいで良かった!」

「……ということは、本当にグアンザの刺客として来たわけではないんですね」

「当たり前じゃん! あいつの言うことなんて絶対に聞かないっての!」


 アオイはこの場にいないグアンザに対して、舌を出して馬鹿にした仕草をしている。

 俺はアオイほど嫌ってはいないのだが、アオイが過剰に嫌ってくれているおかけで、俺達が信じてもらえそうで良かった。


「色々と気になる点がありますが……まずは改めて自己紹介からさせて頂きます。こちらがモナで、私はベロニカと申します。グレアムさん達はここへ何をしにやってきたのですか? 疫病の原因を突き止めるためというのは事実なのでしょうか?」

「そのことも聞いているんだな。……その通りだ。俺達は疫病の原因を討伐するためにやってきた。その情報が欲しくて、【紅の薔薇】を訪ねてきたんだ」


 ようやく本題に入ることができそうだな。

 情報を持っていないということはなさそうだし、情報を聞くことができればドラゴンゾンビ討伐の準備に入ることができそうだ。





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ここまでお読み頂きありがとうございます。

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加筆も加わっており、web版を読んでくださっている方でも面白く読めると思いますので、是非お手に取って頂けたら作者は泣いて喜びます!


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