第77話 Sランク冒険者


 王都に滞在してから約四日が経過した。

 ギルド長の案内で王都を満喫しており、正直まだまだ巡るところがあるらしいのだが……先日の晩にサリースからの呼び出しがあった。


 どうやら他の街のギルド長達が全員揃ったようで、早速冒険者ギルドにて集まるらしい。

 他の街の一流冒険者達が揃っているとのことで、どんな人物がいるのか楽しみにしつつ、俺達は冒険者ギルドへと向かった。


「一体どんな冒険者さん達がいるんでしょうかね? 場違いじゃないかちょっと怖いです」

「場違いではあると思う。他の冒険者は恐らく全員Sランク冒険者だからな」

「Sランク冒険者とか……私、会ったことすらないんだけど!」

「俺もないな。ビオダスダールにはいないもんな?」

「ああ。そのことで散々馬鹿にされるんだが……今回はグレアムさんがいるからな」


 随分と期待されているみたいだが、Sランク冒険者の方が普通に強いと思うんだが。

 ギルド長には世話になりっぱなしだし、一度でいいからサリースよりも上の景色を見せてあげたいという気持ちがあるため、何かあった際は頑張るつもりではあるけども。


「グレアムさんって実際どれくらい強いんですか? 私はずっと一緒にいるので、凄く強いことは分かるんですけど……いまいちピンとは来ていないんですよね」

「めっちゃめちゃに強いよ! 確実にAランク以上はあると思う!」

「や、やっぱりそんなにお強いんですね!!」

「いや、Aランクはグレアムさんを下に見過ぎだ。俺は長いことAランク冒険者として活動していたが、確実にSランク以上はある。ギルド長としても数えきれないほどの冒険者と接してきたから間違いない」

「あまりハードルを上げないでくれ。俺はそんな大したものじゃない」


 ギルド長は確実に買いかぶり過ぎている。

 村を出てからある程度過ごし、自分がそこそこ強いことは分かったが、それでも上には上にいるだろうからな。

 年齢的にもギリギリだろうし、無駄に期待されるのは非常に困る。


「グレアムさんは自己評価が低すぎる。……まぁ今回の集まりでどれだけ強いか分かると思うからいいんだが」

「ギルド長がそこまで推すってことはやっぱり強いんですよ!」

「そもそも動きがおかしいし! それでいて無茶苦茶な魔法も使うし、私はグレアムよりも強い人とか想像できない!」


 三人から凄い期待されているが、本当にそんなんじゃないんだけどな。

 頭をぽりぽりと掻きながら冒険者ギルドの裏へと進み、今回は二階の第一会議室へと向かった。


 かなり大きい部屋だということが扉の大きさから分かる。

 そして中からはかなり強い気配があり、ギルド長の言っていたSランク冒険者達が既に中にいるようだ。


「ギルド長連中からは馬鹿にされるだろうが、最初に言った通り堪えてくれ」

「それはこっちの台詞だ。ギルド長が暴れたからこんなことになっているんだしな。いくら馬鹿にされても堪えてくれ」

「ああ、今回は絶対に手出ししない。それじゃ入るぞ」


 ギルド長が扉を開け、俺達も続いて部屋の中に入る。

 中にいたのは三人のギルド長らしき人物と、その横にSランク冒険者パーティが座っていた。


 大柄でガサツそうな男。

 これがギルド長が言っていたグアンザって人物だろう。

 そのグアンザの横には五人の女性がおり、どの人物もそこそこの強さを誇っているが……真ん中に座っている金髪ロングの女性以外は、アオイやジーニアの方が戦えそうな感じがある。

 

 そんなグアンザ隣の位置にいるのが、かなり年配のお爺さん。

 見た目は優しそうだが、ギルド長が言っていたシロ爺とやらなら性格が悪いとされている人物。

 

 その横には武闘派集団って感じの四人組が座っており、こっちは黒髪のトゲトゲ頭とスキンヘッドの大男が中々の圧を発している。

 四人共に俺を睨むように見ており、態度はThe冒険者って感じで好きではない。


 そして向かい側に座っているのが、眼鏡をかけた聡明そうな男性。

 この人物はギルド長が挙げていなかったし、二人と比べたら性格はマシなのかもしれない。


 そんな眼鏡の男の横にいるのは、ローブを被った男の子とその後ろに立っている女性コンビ。

 見た感じの雰囲気は男の子に仕える二人の女性って感じだが、実際がどういう立ち位置なのかは分からない。


 ただ、この部屋で一番強い気配を放っているのはローブの男の子であり、その後ろの女性二人もかなりのもの。

 俺達と同じく三人パーティだけど、このパーティが他とは頭抜けて強いな。


「パッと見の印象はどうだ?」

「この中じゃ……あの男の子が一番強そうだ。後ろの二人も中々の気配を放っている」

「ふっ、流石はグレアムさんだな。あの少年は最年少で五十階層に到達した逸材。出も貴族で、後ろの二人は使用人らしい」

「へー。雰囲気的にそうだろうと思ったが、本当に少年に仕える二人って構図だったのか」


 ギルド長とひそひそ話をしながら情報を教えてもらっていると、その様子を見ていたグアンザが大声を上げた。


「おい、何ひそひそ話してんだよ! とにかく座れや!」


 がなり立てるような非常に不快な声。

 ギルド長がプチンときた理由が一瞬で分かったが、グアンザの言葉を無視して俺達は空いている席に着いた。


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