第75話 高級ビュッフェ
冒険者ギルドを後にした俺達は、サリースに言われた通り王都を満喫すべく、ギルド長オススメの飯屋にやってきた。
ビュッフェ形式というものらしく、なんでも全ての料理が食べ放題らしい。
どれだけ食べてもいいというのは少々信じられず、食べ放題だったとしても大したものではないと高を括っていたのだが……。
ワンフロア全てに見たこともない様々な高級そうなな料理が並べられており、これ全てが食べ放題だというのだから開いた口が塞がらない。
「ぎ、ギルド長さん……。これが本当に全て食べ放題なんですか!?」
「ああ。どれだけ食べても値段は同じだから、遠慮せずに食べまくってくれ。まぁ金を出しているのはサリースだから、無理に食う必要もないんだけどな」
「いやいや、絶対に爆食いする! 全部の料理を食べていいんだもんね?」
「ああ。好きな料理を好きなだけ食べて大丈夫だ」
「……騙されているとかはないのか? これだけの料理を食べ放題とは聞いたことがない」
「ふっ、グレアムさんも意外と庶民的なところがあるんだな。一切騙されていないから大丈夫だ」
三人で本当に好きなだけ食べていいのかを確認してから、頷き合って料理を取りに行くことにした。
近くで見ても、一つの料理だけで銀貨数枚はするであろう質の高さ。
肉料理、海鮮料理、野菜料理、スープ、デザートまであり、本当に全てが美味しそう。
王都に来て、一番驚いたのはこの光景かもしれない。
「デザートも美味しそうですねぇ……! どれも凄くて迷っちゃいます!」
「どれだけ食べてもいいんだし、全部食べようよ! グレアム、どっちが多く食べられるか競争ね!」
「おい、おっさんはあまりにも不利だろ。脂っこいものは食えないんだぞ」
俺の言い分を完全に無視し、アオイは手当たり次第料理を皿の上に乗せていった。
俺も勝てないとは分かっていながらも、アオイに対抗して美味しそうな料理を皿の上に乗せていく。
各々が料理を取り終え、席に戻ったのだが……面白いように好みが出るな。
俺は海鮮料理を中心に少しの肉料理。
アオイは何も考えていないようで、適当に色々な種類の料理を盛り付けている。
ジーニアは見栄え重視でデザート多めに取っていて――ギルド長はというとカニだけを盛れるだけ皿に盛っている。
「ふふ、お皿に個性が出ますね!」
「だな。ただ……ギルド長は酷いな。流石にカニ一色すぎる」
「グレアムさんはまだ分かっていないからな、
この店で一番美味しいのはカニだ。そして一番高いのもカニ。そうなれば、必然的にカニだけになるんだ」
「絶対にそんなことないと思うけど! ……変なうんちくより、早く食べよう! お腹が空いて仕方ない!」
「だな。それじゃ頂きます」
「「いただきまーす!」」
食前の挨拶を行ってから、自分で盛り付けた料理を口に運ぶ。
――美味い! 文句なしで美味しいな。
食べ放題だからといって料理の味が落ちるとかは一切なく、一つ一つの料理が本当に美味しい。
このクオリティで食べ放題だというのだから、王都という場所の凄さを感じる。
「うんまぁー! 本当にいくらでも食べられるんだけど!」
「デザートも美味しいですよ!! これ一流のパティシエが作っている料理なんじゃないですか!?」
「全ての料理を一流のシェフが作っているぞ。だからどれも質は高いが……やっぱり一番はカニだな。圧倒的質の高さには料理の腕なんていらない」
そう言って、茹でられただけのカニを貪り食っているギルド長。
実際に美味そうだし、これだけプレゼンされると食べたくなってくる。
俺は皿の料理を一気に平らげ、次の料理を取りに行くことにした。
基本的にカニを中心に、気になった料理をいくつかチョイス。
ジーニアは相変わらずデザート中心で、アオイは統一感の一切ない皿。
ギルド長と横並びで大量のカニを食うのは少し恥ずかしいが、美味いもののためなら多少の恥ずかしさなんてどうでもいい。
見様見真似でカニの身を外し、口の中に入れたのだが――美味すぎる! 本気で美味しいな。
甘さと美味しさが絶妙であり、暴力的な旨味の詰まった蟹味噌も最高。
……ギルド長がカニだけを食べる理由が分かった。
ただ他にも色々な料理が食べたいため、俺はカニ一色ではなく気になった料理を手に取り、満足いくまで高級ビュッフェを堪能した。
「ふぃー。もうなーんにも入らない!」
「俺もだ。ここまで満腹になるまで食べたのは久しぶりだな」
「私もです。……デザートばかり食べてしまったので、太っていないか心配です」
「王都までは歩いてきたし大丈夫だろう。さて満足したみたいだし、宿に行くとしようか。宿も最高級だから期待してくれていいぞ」
「本当に至れり尽くせりだな。依頼もこなさずにこんな豪華な生活していいのか不安になる」
「俺が無理やり連れ出したんだし、何も気にしないで楽しんでくれ。金も大金持ちのサリースが全て払う訳だしな」
「次に会った時はお礼を言わないとですね!」
「だね! サリースさんのお陰だ!」
最高の料理を食べられて非常に満足した状態で、今日から宿泊する宿に向かうことになった。
料理だけでも驚きの連続だった訳で、宿屋も最高級となると逆に怖くなってくる。
庶民的な生活を忘れないように心に決め、俺達はギルド長の案内で最高級宿屋へと向かった。
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