第63話 VSシルバーゴーレム


 見た目はこの間戦ったゴーレムとほぼ同じ。

 体が銀色で、体の中に覆い隠されている核が大きいぐらいだろうか。


 前に四体、そして後ろに六体。

 ゆっくりと近づいてきており、この間にどう倒すかを三人で決める。


「ジーニア、アオイ。どうやって戦う? 一対一の状況がいいなら、その状況を作り出すが」

「私はこのままで大丈夫!」

「私もこのままで大丈夫です! 私とアオイちゃんで二体ずつ引き受けて、一気に倒します!」 

「……分かった。なら、俺は後方からサポートに回る」


 少し心配ではあるが二人がいけると進言してきたため、ここはやらせてみよう。

 俺はサポートに回り、アオイには即時回復魔法をかけられるようにし、ジーニアに至ってはすぐ手助けできるよう準備をする。


「まずは私から行かせてもらいます」


 剣を引き抜き、構えたジーニア。

 ここまでは今までの剣を使っていたのだが、今引き抜いたのは宿探しの時に俺が選んだ剣。


 細身だが刀身自体は長い剣であり、カウンタースタイルのジーニアには相性のいいと思って選んだ。

 ここで初めて使うことに少しだけ怖さを感じているが――当のジーニアは笑っている。


 笑顔を見せるのは調子の良い時のジーニアであり、バーサークベア相手に手こずって以降は一度も戦闘中に笑顔になっていなかった。

 決して動きが悪かった訳ではないんだが、笑っている時はジーニア自身も楽しんでいる証拠であり、その分動きにも軽さが出る。


「【魔力武装】」


 ジーニアが小さくそう呟いた瞬間、抜いた剣に魔力を纏わせ始めた。

 俺がベインと初めて出会った際、ゴーストウィザードをぶった斬った際に用いた技。


 俺は単純に技術で魔力を刀に纏わせたのだが、ジーニアはスキルで行っているようだ。

 今更だが、アオイやジーニアの所持スキルを知らない。


 【制限解除】もさっき初めて知ったし、ゴーレムを倒し終えて街に戻ってから聞いてもいいかもしれ……。

 いや、スキルを知られたくない人も多いと聞いたことがあるし、今や【制限解除】を見た時のように初見の方が驚けるし、聞かないのが粋ってものか。


 ジーニアの【魔力武装】を見てそんなことを考えている間に、ジーニアとシルバーゴーレムの距離が縮まった。

 軽くステップを踏みながら笑っているジーニアに対し、真正面から突っ込んで行く二匹のシルバーゴーレム。


 先に間合いとなったのは巨体のシルバーゴーレム。

 岩のような拳を大きく振りかぶると、ジーニアに向かって振り下ろした。


 すぐに助けられるように魔法の準備は行っていたのだが、ジーニアは向かってくる拳を楽々と躱し――腕を斬り裂いた。

 脆いであろう繋ぎ目の部分を狙っての攻撃ではあったが、岩のような腕を完璧にぶった斬った。


 それも相手の力を利用したカウンターでの一撃ではなく、伸びきった腕を真上から振り下ろして斬り裂いて見せたのだ。

 ジーニアはそんな芸当ができる筋力を持ち合わせていないし、魔力を剣に纏わせたからといって、ここまで劇的に変わることはない。


 不思議に思いながらも、俺はジーニアの動きを注視する。

 片腕を落とされたシルバーゴーレムだが、痛覚はないためか動揺する様子は見せていない。


 残った腕や足を使って、果敢に攻撃しようとしているが……ジーニアはシルバーゴーレムの攻撃を楽々避けてから、動きが止まったところを突きで核をぶっ壊して見せた。


 ゴーレムよりも数段動きが速く、パワーを桁違いなはずなのに余裕で倒してみせたな。

 魔力が尽きたら使えないという明確なデメリットはあるものの、【魔力武装】を会得したジーニアは強い。


「ジーニア凄い! もうBランク冒険者と遜色ない動きしてる! ……私も負けていられないな。グレアム、回復でのサポートよろしく!」

「ああ。ぶっ放していいぞ」


 ジーニアに感化されて気合いを入れたアオイは頬を叩いてから、迫ってきているシルバーゴーレムに狙いを定め――拳をぶっ放した。

 一発で胴体ごと核を粉砕してみせたものの、素手で殴るということもあり、ジーニアの拳もエグいことになっている。

 すぐに回復魔法をかけて回復させたが、少し心配だな。

 

「ジーニア、大丈夫か? 短剣があるなら短剣で攻撃しろ」

「死ぬほど痛いけど、グレアムが回復してくれるから大丈夫! さっきも言った通り、細かなコントロールが効かないから拳じゃないと駄目なんだよ! あと四体……全力でぶっ壊す!」


 後先考えていない脳筋スタイル。

 メリケンサックのようなものを買えただろうし、本当に事前に相談してくれていればと思ってしまう。


 ジーニアの手を地属性魔法でコーティングすることも考えたが、拳がぶつかった瞬間に回復魔法をかける方が手っ取り早い。

 ジーニアを注視していたのをアオイに変え、俺も集中して魔法を唱える準備を行う。


 素早い動きでシルバーゴーレムを翻弄するアオイに常に標準を合わせ、止まって構えた瞬間にアオイが移動する先に回復魔法を飛ばす。

 そしてシルバーゴーレムに拳が触れると同時に、回復魔法をかけることに成功。

 かなりの集中力がいるが、難易度が高くて結構面白いかもしれない。




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お読み頂きありがとうございます!

一つご報告がございまして、本作の書籍化が決定致しました!

まだ詳しい情報は発表できないのですが、決まり次第ご報告させて頂きます。

更新ペースは遅くなりますが更新を続けていきますので、web版も書籍版もどうか何卒よろしくお願い致します!

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