ターン1-5:結城一馬
*
話が落ち着き。俺とあずさは北条孝に連れられ、秋葉原では地元民でしか知られていない裏路地に場所を移し替えた。
華やかな街の裏は肥だめのように悪臭が漂うゴミが道ばたに散乱している。
「不衛生な所に連れてきて何がしたいんだよ?」
「この秋葉原で許可の無いマジシャンズバトルは御法度だ。だが、それは表沙汰での話だ。国の偉い奴らや聖人面している奴らが勝手に決めたルールだろ? 俺達のような裏の人間はこの秋葉原においてこれで優劣を決め合い。終わりのない凌ぎを削り。己の存在価値を見いだして頂点に君臨する事を夢見てるのさ」
「自己承認欲求の塊ってかんじだねー」
「はん。俺様はこの街で腕の立つ名の知れたマジシャンだ。お前もこの手にあるモノをよく知っているだろ? こうして対面している限り分かるはずだ。マジシャン同士が出会えばどうなるかをな」
「…………」
――分からない相手に何を話しても意味ないか。
「あずさ。あいつの言いたいことはそれだけみたいだし。立ち去ろうか」
「そうだねー。本当にこういう男って。力尽くで判らせようとしてくるんだから意味不明よ」
「じゃあ、俺達はこれで失礼するよ」
軽く手を振ってこの場から立ち去ることにしたが。
「おい、今からマジシャンズバトルすんぞ! 俺のターン、俺は手札のファストアタックシュートを使い。相手マジシャンに攻撃を仕掛ける!」
「あずさ避けろ!」
「きゃっ!?」
俺はとっさに彼女を道端に突き飛ばす。そして……
「カウンターマジックの発動を宣言する! 俺はこの手にあるイージスの盾を起動し、発動した相手の魔術を無力化にしてカードを破棄する!」
……間一髪の出来事だった。
俺達の間を切り裂くように迸り来る、北条孝が放った赤い閃光まとった雷閃の一撃を念の為にと思い、あらかじめ隠し持っていたカウンターマジックカード『イージスの盾』で無力化にした後に、カードを破棄させる事に成功した。
「おい……今、自分が何をしたか分かってんのか……?」
戦う意思のない人間に対し、魔力の込められたカードを使う。
これは明らかな犯罪行為だ。
そして同じマジシャンとして許せない行為でもあった。
「あいてて……ダーリン、大丈夫そー?」
「ああ、無事だ。まあ、服が少し汚れたが気にはしないさ」
「うん。また後で私がお洋服買ってあげるから大丈夫だよ。てかあいつ、私達が平然としてる事に驚いてるのウケるんですけどぉー」
――まぁ、普通はそうだよな。
「さて、どうしたもんだろう……。なあ、北条……?」
両手を胸の前で組んで関節をコキコキとならして威嚇する。
「て、てめぇ……何者なんだ……?」
「俺か? 俺は……そうだな……」
そう聞かれても返答に困る。
「俺はカードゲームが好きな只のオタクだ」
……という事で返しのターンだ。
「北条孝。この勝負、受けて立つぞ」
大学で使っているリュックから、構築済みのデッキが入ったマジシャンズバトルに使う専用のデッキホルスターを取り出して腰元に装着する。
中に入れておいたデッキを手に取り出してファローシャッフルをしつつ再びホルスターに差し込む。
そしてデッキの上から5枚のカードをめくり取って中を確認すると。
――初手は手堅い。これなら柔軟に対応できそうだな。
既に先ほどの一撃で先手はとられており、ミッドレンジあたりで勝てるだろうと踏んでいる。
「とりあえずマジシャンズバトル開始の宣言をしてもいい?」
あずさがバトルの開始宣言をしてくれるようだ。
「ああいいぜ」「たのむ」
あずさはニコッとした作り笑いを浮かべてポーズをとる。
「マジシャンズバトル。レディ、マジックスタート!」
彼女の宣言と共にマジシャンズバトルが始まった。
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