第3話 暗雲





 ポメガバース。

 ポメガは疲れがピークに達したり体調が悪かったりストレスが溜まるとポメラニアン化する。

 ポメ化したポメガは周りがチヤホヤすると人間に戻る(戻らない時もある)。

 周りの人がいくらチヤホヤしても人間に戻らない時は、パートナーがチヤホヤすると即戻る。

 ポメガはパートナーの香りが大好きだから、たくさんパートナーの香りで包んであげるととてもリラックスして人間に戻る。


 「オメガバース」の世界観を踏まえて作られた「バース系創作」のひとつである。






「ぎぃえええええええ!!!」


 黒龍がポメラニアンの姿に変化したとの報告を受けた先代の黒龍と白龍が、断末魔の叫びを上げていた頃。

 何故、ポメラニアンの姿に変化したのか。

 仙人、道士、霊獣を連ねる大仙人は、叫びながら図書室で調べて、そして、答えが書かれた巻物を発見したわけだが、叫びが治まる事はなかった。


「落ち着いてください。大仙人」

「落ち着けないわい!」


 大仙人は人に化けた白龍を、次に、白龍が抱えるポメラニアン化した黒龍を、さめざめとした顔で見つめては。


「仙界の守り手である黒龍が、こんな、変わり果てた姿になるなんて。前代未聞!わしの時代に、これからの仙界に暗雲が立ち込める予兆じゃ!ああああああ!落ち着けるものか!?」


 悲痛の叫びを上げながら、走り去った。


「あっ」


 図書室から飛び出ていった大仙人を引き留めようとした手を下ろした白龍は、視線をポメラニアン化した黒龍へと下げた。

 まっくろで、もふもふで、片腕に乗せられるくらい小さく、愛らしい姿。

 言葉は通じないのか。話しかけても、反応はない。


 ストレスを感じると、この姿になる。

 それはつまり。


(もしかして、義兄弟に、なりたくなかったの、か?)


 白龍は、そっとポメラニアン化した黒龍の頭を撫でながら、早く戻ってくれと願った。











(2024.2.16)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る