ラウラは悪の道を行きたい〜凄女に好かれてるので駄目です〜
御剣ぼののーの
プロローグ
ヴァルスガム帝国。
かつて魔王を討伐した勇者ヴァンが興した国家とされている。国名は勇者パーティメンバーの名前から取っていた。
そして、帝国の辺境はそれぞれ勇者パーティの血統継いでいる。
北ヴァルスガムは、狂戦士ガンバードの子孫。
東ヴァルスガムは、炎の料理人スクルトの子孫。
西ヴァルスガムは、大賢者ルプスの子孫。
南ヴァルスガムは、魔法騎士ムーンの子孫。
中央に力を集めなかった結果、領土はみるみる内に広がりながら安定していた。
今では、魔法を使用するのに杖ではなく銃を使い撃ち出すようになる程度には魔法科学が進み、首都から田舎町までの格差も比較的少なくなっていた。
一方で、近年になっても魔王軍残党による被害は少なからず存在はしていた。
そんな帝国の辺境にある街でラウラ・南ヴァルスガムは燻ぶっていた。
ラウラは腰まで伸びた蒼銀のストレートヘア。少しきつめに見えるツリ目。年相応のスタイルで領民にも人気のある14歳の少女南ヴァルスガムの三女であり、家を継ぐことはほぼないし、優秀な兄達のお陰で特に仕事もない。政治的な理由で婚姻を結ぶ先も特にない。要するに暇なのである。
「ふぁ〜〜……平和で暇。何かない?」
「それじゃ今日こそ
「あー……そうね。そうしましょう」
ラウラは、配下の一人に適当な返事をした。
隠れ家というのは、ラウラのカリスマに惹かれた面々を集めた拠点である。
と言ってもただ空き家を使っているだけなので、人はそんなに入らないし、思い思いに集まっているので人がいるかもわからない。
「ラウラ様〜〜〜!!!」
「げっ!?」
遠くからラウラを呼ぶ声が聞こえた。
マリアは、ラウラの幼馴染であり戦闘狂である。
深紅の髪をなびかせ、シスターの格好をしているからこそわかる同世代より少し大人びたスタイル、常ににへらとふにゃふにゃの笑顔。それでいて、血染めの鎖付き棘鉄球を軽々しく持ち歩いている。
凄女とは、ヴァルスガム無差別武術大会における無敗のチャンピオンに送られる称号である。
ありとあらゆる武器・魔法・アイテムの使用が可能。最後まで正々堂々戦い抜き膝をつかなかったものに与えられる称号だ。
彼女は10歳からディフェンディングチャンピオンをしているのである。
「何やってもいいから、時間稼いで!」
「一人じゃ無理ですよ〜〜」
ラウラが一目散に逃げ出す中、配下は銃を構え得意の炎魔法を行使しようとする。
「ぐえっ!?」
しかし、構え終えた頃には、視界がマリアの
他の取り巻きは、鎖付き棘鉄球でふっとばされているのでマシな方なのだろう。
「役に立たないんだから!! もうっ!」
ラウラは多少距離を稼げたことを念頭において、迎撃することにした。
「……んっ」
少しの恥じらいを感じながら、ラウラは自身のスカートに一瞬手を突っ込み、ホカホカの卵を取り出す。
これはラウラの特殊能力だ。
ラウラは怪人の卵を生み出すことができる。これは一人でも可能ではあるが、誰かの粘膜と接触することでさらに協力な怪人を生み出せるらしい。らしいというのは、もちろん経験がないからだ。
「いけーっ! ……ハサミメェン」
怪人は名前をつけられることで孵化する。
ラウラはマリアの方に卵を投げる。
しかし、怪人が孵化する前にマリアによって卵が粉砕される。
「人でなしー! せめて、せめて産まれさせてあげてよー!! うわーん!!」
「怪人さんは産まれたら面倒なので!」
この会話の間にマリアはラウラとの距離を縮める。
「ラウラ様、今日こそ告白を受けてくださいませ!」
「やだよ! 死にたくないよ〜〜うぇーん」
ラウラはただただ泣くしかなかった。
彼女はただただ、能力を活かしてテロったり、イタズラに革命ごっこがしたいだけなのだ。
「うーん、ラウラ様はやっぱり不様でポンコツ可愛いですわ」
「それがこわいんだってば!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます