【転生】チート能力は1つで十分だと思い知る
@_てぃら
エピソードⅠ 『万能者』
#1 『万能者』
目が覚めると憂鬱な日々が始まる……。
体が反射的に、目を覚ますことを拒否する。
防衛本能か、それともただの現実逃避とでもいうか。
でも、何故か今だけは違う。
社会の中に巣食う邪悪が感じられない。
まるで、……なにか別の場所にいるような気分だった。
「マジでここどこだよ。」
この物語の主人公、
……よし、いったん状況を整理しよう。
えーと、周りには誰もいなくて、森の中。
うん、もうすでに心細い。
そして時折聞こえる、何かの物音や鳴き声のようなもの。ほんと怖い。
まだ焦るときじゃないし、こんな時こそ冷静に………
………いや落ち着いてられるか!!
予測できることは一つ、転生したのか……?俺!?
でも、そうとしか考えられない!
夢かと思い、頬をつねるが痛みが心地良い。
現実だそうだ。
まぁ、こんな解像度の高い夢があるなら見てみたいね。
しかし、こんな状況でも何故か喜んでいる自分がいる。
でも、転生したということは、前世では何かしらの原因で死んだということ。
それなら、せっかくチャンスが来たんだから、第二の人生は楽しまなきゃ損だな。
……でもなぜか、なんで死んだかは思い出せねぇんだよな。
「うん。でもよく考えたら急に転生って、十分絶望的だな。」
何も持ってないし俺。
あ!スマホもなくなってる……。
こんな丸腰じゃ何かあっても対応できねぇ‥‥‥
シュパッッッッ
すると突然、目の前に薄い光の板のようなものが出現した。
「……っ!なんだこれ?」
恐る恐る見てみると、そこにはこう記されていた。
『万能者』の所有者 《天海奏向》 のアクセスを確認
〜再構築を開始します〜
「……『万能者』?なんだそれ。
あと、再構築を開始?
なにか変わってんのかな。」
少なくとも今、自分の周りで何かが起きていることは確認できない。
この光る板が出現したこと以外は、特にこれといった異常はない。
「やべぇ。ほんとに何もわからん………。俺このまま、なにかに襲われて死ぬ感じ?」
急にバケモンが襲ってくる可能性もあるしな。
早速第二の人生に幕を閉じてしまうのか……いや、いくらなんでも早すぎる!
……でも、本当にいつ何が起こるかわからない。
再構築だが何だが知らないが、これすらも良いことじゃない可能性も大いにある。
すると、板に移っていた表示が切り替わった。
確認すると、【ステータス】と記された下に何やらそれっぽい数値が。
【ステータス】
《天海奏向》
HP 1
【スキル】 なし
「ちょっと雑魚すぎません?」
驚きすぎて、突っ込んじゃった。
板に。
いやいや、流石に全部1はないだろ?
HP1って何食らっても死ぬ感じじゃん、俺。
まだ詳しいことは分からないが、やはり、この世界は前世でいた世界とは違うようだ。
少なくとも、【ステータス】などの、どこかゲームの設定を思い出させる現象が起きている。
前の世界ではそんなことはなかった。
「ん?」
そこで1つの違和感に気がついた。
「さっき、『万能者』ってやつの所有者って出てたよな?あれ【スキル】じゃないの?」
スキルの定義がわからないため断定はできないが、名前や文脈からして、ゲームでいう【スキル】っぽいものだと思うんだが。
「まあ、いっか。今はもう少し周りの状況を知る方が大切だしな。」
俺は、この意味不明な現象を解明するより先に、もう少し探索することのほうが大切だと考えた。
こんな森の奥地って感じの場所だけど、他にも人がいたり、近くに集落的なものがあるかもしんないからな。
このとき俺はまだ、『万能者』の底力を知らないままでいる。
いずれ、世界の常識にあがらう唯一の手段となるのを知るのは、まだ先の話。
ー★ー
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追記、7話ぐらいから面白くなっていくと思います。ぜひ、その辺りまで読んでいただけると嬉しいです!!
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