第5話 属性てんこ盛り魔法使いがいると聞いて

「ぁっ、ん、…ゃだぁっ、」


揺さぶられ過ぎて抜けてしまいそうな腰。支えられている分、幾ばくか楽なはずの体勢も、もはや力が入らずにシンジョウはされるがままとなっていた。


「も、むりっ、はぁっ、しんじゃう…ッ」


上下に揺れる度に痛みに耐える息は荒く、瞳には涙が溜まり今にも零れ落ちそうで。背後から腕を回しシンジョウを支えるロックスは、赤面する顔を押さえ大きく息を吸い込むと、


「…ッ妙な言い方を、するな!」


「あうち!」


ゼロさんに後頭部をはたかれたでごさる。我ながらぺしーん!っていい音が鳴った。前世が打楽器だった可能性が微レ存。…だってぇえ!冗談でも言わないとやってられないんだよ!


「腹と腰と内ももの筋肉はご臨終です…次回の活躍にご期待ください…ッ!」


乗馬、恐ろしい子…!普段使わない筋肉フル活用だよ。一ヵ月毎日乗ったら絶対痩せる。ロデオマシンが流行ったのも頷けるぜ。


早朝、ブラックキング号みたいな馬君をゼロさんが連れてきた。わーいお馬さん可愛い…うぉう、異世界の馬凄いでっかい。いやでもカッコいい!輓馬かよ!ってはしゃぎまわった後、一人で何とか乗り込むまでは良かったんだけれど。(これで5分ぐらい頑張ったからね。)


いざゼロさんと相乗りタンデムで出発したら、一時間もたたずにお腹が痛くなりはじめるわ、内ももが擦れて痛いわで戦慄したよね。…え、これ、夕方までかかるって言ってたよね?ってさ。


「これ絶対三日は歩けないよ…、筋肉痛その他で。」


背後のゼロさんにぐったりもたれ掛かって、嘆く。ナイス安定感!まぁね、今までデスクワークばかりでウォーキング程度の運動しかしてないからね。くそぅ、股関節馬鹿になりそう。


「…はぁ、だから横を向いて座れと言っただろう。」


ゼロさんの呆れた溜息が耳元で凄く重く聞こえるぜ!左耳がくすぐったくて肩が竦む。この状態で落ちないの、ゼロさんが私を抱え込んで座ってくれてるお陰ですからね。圧倒的感謝。


「跨がった方がカッコイイじゃん!などと、軽率に思いまして。」


不甲斐なさで申し訳ないと思いつつ、つい言い訳をしてしまう。折角だから前に乗ってみるか。と乗って、折角ついでに跨がった。いや、こんな機会なかなか無いと思って。でも、凄い開脚して乗るんだよね。股関節外れるかと思った。


大きなこの馬…ジジ君は、二人用の鞍もつけられて、大人二人でも余裕で乗れる、と紹介された。サイズ感にテンション上がりすぎて、調子にのりもうした。申し訳なし。


「ごめんなさい。」


うむ。これは反省案件ですよ。楽しかったのは最初だけで、保護者の言うことを聞かなかった罰が当たったようだ。…罰あててくるの、アルたんかな?痛みに耐えつつ謝罪すると、歩いてたジジ君が止まった。


「うん?…わっ、」


降りたゼロさんが何か鞍に取り付けると、ひょい、と馬上で持ち上げられて、後ろの鞍へ横向きに座り直させられた。び、吃驚した!ただでさえ高いのに、更に上がるから。


「右脚は上に乗せて、左脚は凹みにあてろ。…どうだ?」


「おぉお、確かに内股擦れなくて楽。」


なんだこの支え。感動していたら、ゼロさんにぽんぽん頭を撫でられた。…撫でぽは効かぬぞ?軽く前の鞍に乗り込んで、ゆるゆる歩き出したジジ君。体勢が変わったけど、脚で支えを挟み込んでる分安定感が増した。や、さっきの方が安定するけど、痛すぎて姿勢崩れていたしね。


「走らせても平気か?」


「大丈夫です隊長!ちゃんと掴まった!」


よい子のお返事!前方はゼロさんが大きすぎて何も見えないけど、がっちりした腰に手を回してしっかり掴む。ゼロさんの厚み凄くて回りきってないけどね!でもやらかしたばっかりだし言い付けまもるよ!


「んん゛っ…、走らせるから口を閉じていろ。」


「了解しました!」


返事をするや、颯爽と走り出したジジ君からご機嫌な雰囲気が感じ取れる。おぉ、ごめんよ。私の所為で走れなくてフラストレーション溜まってたのかな。


凄く揺れるけれどまだ…まだいける…ッ。たまに跳ねる様に駆けるから、腰が悲鳴を上げるけどゼロさんにしがみついてなんとか我慢した。


「ゼロしゃん…降りられない…たす、…たすけて…。」


太陽が真上に来る頃、休憩予定地にたどり着いたは良いけれど満身創痍で今度はジジ君から降りられなくなった。もはや半泣きである。すまぬ…すまぬ…。


「…ふ、」


「ヒュ~憐れまれてるぅ~。」


両手をゼロさんに伸ばして、抱っこアピールをしたらなんだか可哀想な者を見る目で笑われたなう。こんにゃろ、とか思ってないよ?自業自得だからね。でも開き直るのは自由だよね!


「ゼロさん、抱っこお願いしますん!」


へいへーい!と手のひらを上に向けて呼んでみる。じっと見つめていたら、仕方ないと言う顔でゼロさんが降ろしてくれた。やったぜ!へっへっへ!


「ようニーチャン、随分隙だらけだな!」


ぷらんと子供みたいに両手で持ち上げられたからそのままイキってみせた。ら、


「…隙だらけなのはお前だ。」


片腕に座らされて、空いた手で膝裏の少し上を掴まれた。


「ぎに゛ゃっ!!」


雷がぶち当たったみたいに全身に衝撃、走る。的確に筋肉痛部分を押されて、悲鳴出た。自分でも吃驚するぐらい、びょんっ!て身体が垂直に跳ねたんだが?


「ゃ゛っん!ぁ゛ッ!ヤダヤダごめんにゃさいしゅみませんでした!」


あ゛ぁあ゛あ゛いけませんお客様ッ、お客様ぁあッ!なにゆえぐりぐり押すんだ貴様ッ!どれくらいヤバいかって、正座で痺れている脚を触られるよりヤバい。めっちゃ痺れる涙でる。


「んぐぅう…ッ!人の負傷箇所に追撃かましてくるとか、ド鬼畜かな?!」


衝撃を逃したくて、縋り付いていたゼロさんにそのまま抗議してみる。意義あり!バシバシと肩を叩いたら、触れてる身体が揺れてる。なに笑てんねん。張り倒したろか。


「いや、シンジョウは放っておくと調子に乗るから教育的指導だ。」


「やってることがサドのそれなんだよぉ。」


良い笑顔ですねゼロさん。目の前の綺麗な顔に、頭突きしてやりたい。ワンチャンいけるんじゃね?と思っていたのが通じたかは知らないが、ジト目で見てたらゼロさんの目が泳いで手近な岩場に降ろされて、出掛けに買ったお昼ご飯を渡された。うむ、許す。肉串美味しい。お肉に罪はない。


「あと半分頑張っても、これが地獄の入り口なんだから目の前が真っ暗になりそうだぜ…。」


お肉を食べ終わり、今後の自分を考えると絶望しか見えない。んおお、考えたくないでござる…。マッサージした方が良いだろうけど、絶対痛い奴だコレ。


「向こうに着いたらすぐ治療されるだろう。」


「治療?」


何を言っているんだお前はフェイスでゼロさんを凝視したら、ああ、と何かに納得した顔で説明してくれた。


「魔法使いにも得手不得手はあるが、これから会う奴は回復魔法が使える。シンジョウは恐らくアレの興味をひけるだろうから、頼めば聞いてくれるだろう。」


「ヤダ不穏ふおーん。」


なんだ興味をひくって。珍獣かな?…言い得て妙な存在だったな私。伝説の生き物だからなぁ聖女。オマケに『大』ってつくし。小を兼ねちゃう。


「捕まって解剖されるかな?」


「大丈夫だとは思うが…、」


悩むレベルなんだね。しかもこの反応具合だとその変な友人と結構親しいな?古き良きオタ活知識により、回復魔法=拷問の方程式なんだが。恐ろしや。


「あ、ゼロさんに大事な質問があるんじゃよ。」


「なんだ?」


キリッと姿勢を正して真剣な顔を作ると、心なしかゼロさんも真剣な雰囲気を纏っている。


「魔法使いはですか!ですかっ!」


「…女だ。」


鬼気迫る勢いでたずねれば、拍子抜けしたような顔の後溜息と共にはきだされた。


「ィイイイヤッホォオオオウ!あぁあっ、いったぁ忘れてたっ…!」


おもわず立ち上がって拳を掲げた所為で、脚に鈍痛が走り崩れ落ちる。すかさず向かいに座っていたゼロさんが受け止めてくれたお陰で、膝が土に還ろうとしているのをなんとか阻止できた。お膝くん、あなたのお家はそこじゃ無いのよ?


「ふ…、お前は本当に世話が焼けるな。」


「む、ちゃんとしようと思えば出来る!疲れるからしないだけです!」


我、三十路いい歳ぞ?三十路いい大人ぞ?と訴えると、鼻で笑われた。抱えられて説得力皆無だからね。仕方ないね。くっそぉ…、自立、はじめなければ。決意と共にむくれている間にジジ君に乗せられ、休憩タイムは終わった。


「突撃☆となりの魔法使い宅!うーん、字余り。」


夕方、痛すぎて足腰の感覚が無くなってきた頃に魔法使いさんのお家に到着した。と言っても、街からすっごく離れたギリギリの森の中に、『魔法使い、住んでます。』みたいな家が建ってた。青い屋根に白い壁、木製の柱。が、物凄い大きな樹に飲み込まれてた。


「シンジョウ、歩けないだろう。こっちに、」


「あ、自分で歩くよ。」


馬上から神秘的ともいえる家を眺めていたら、いつの間にかゼロさんがジジ君から降りて両手を差し出してくれていた。一瞬下ろして貰おうと手をだしかけて止まる。いやいや。自立、始めるんだろわたし。…ううん。降りるのだけ手伝ってもらおう。高いし。


「ばっ、大丈夫か?!」


「っ…、へいき…。」


片手を借りて、軽い気持ちで飛び降りたら重力を実感する羽目になった。着地は10点満点だったけど、筋肉痛がね…ッ。いやいや、大丈夫ですとも。いい大人ですからね。痛み位素知らぬ顔で我慢できますとも。


「シンジョウ、」


「大丈夫!ありがとう。」


掴んでいた手を離して、ひらひら振って笑っておく。へーきへーき。ゼロさんが何か言いたげだけれど、きっと世話が焼けるとかヤムチャしやがってとか思われてるんだろうなぁ。むぐぐ。話題変えとこ。


「お友達、こんな時間から訪ねていいの?連絡もなしに。」


「…ああ、問題ない。ヴォイス、見ているだろう。」


《見てるよぉ~、ははは、ロックスってそんな顔するんだねぇ~》


どこからか、反響するように声が響いてくる。なんだなんだ。ゼロさんもどこに向かって話しかけてるんだい?ゴーストでも囁いてるんか。


《おいでおいで、不思議な光のお坊ちゃん。ロックスは帰っていいよぉ~。》


「シンジョウ、こっちだ。」


お坊ちゃんって私か。反響する機械音声を、ゼロさんは苦虫を嚙み潰したような顔で露骨に無視している。…お友達なんだよね?ゼロさんが進む方角は、樹にのみ込まれた家の隣。


「メールポスト?」


こんな所に立てても、使い辛いんじゃないかな。という距離に古びたメールポストがあった。全力で足腰の痛みを食いしばり、ゼロさんの後について歩く。


私が隣に来たのを確認すると、ゼロさんがメールポストを掴んで倒した。ガコンッ!と重々しい音を出したのは、何もなかったはずの空間で。


「おお?!」


どうなってるんだろうこれ。空間が切り取られてるみたいに、空中にドアが現れている。どこ〇もドアみたいに、ドアだけ。周りに触れても何もない。ドアノブを回すと、何の抵抗もなく開いた。


「わぁあ!すごい!すごい!」


その中には、二階建てほどの高さの本棚に囲まれた部屋があった。ど真ん中に陣取りますは大きなベッド。わずかなスペースを残して本に埋もれている。床にも本のタワーがいくつも建築されてて、あ、あの小山はデスクかな?お、あの辺はきっとソファだね。天井にはランプがいくつも浮いている。なるほど、外で見た家はフェイクか!凄すぎて語彙力死んでしまう…今までで一番『異世界』だ。


「邪魔する。」


「いらっしゃぁ~い。」


「お邪魔しまっす!」


入り口でわぁわぁはしゃいでいたら、ゼロさんが勝手知ったる感じで中に入って行った。やっぱり仲良しじゃないか。猫鼠の次はなんだね?


「はじめましてぇ~うんうん、随分面白い子と一緒に居るねぇ?」


「はじめ、まして…。」


空気に寝そべるように、長身のお姉さんが浮いていらっしゃる。桜色の長い髪は緩やかなウェーブを描いて、緋色のグラデーションが綺麗。タレ目と泣き黒子で装飾された真っ赤な瞳は、マッチ棒5本くらい乗りそうなまつ毛に縁取られている。ぽってりセクシーな唇に艶々な褐色の肌。悩まし気なボディラインを拾うドレスが、豊満な身体ではちきれそう。


「魔法使いちゃんではなく、美の女神さまでは?」


おもわず真顔でゼロさんに聞いちゃうよね。え、めっちゃ嫌そうな顔するじゃないですか。どうしたの。これこれ、なぜ女神様と私の間に割り込むのだね。


「余り近寄るな。噛みつかれるぞ。」


「あはははっ!がお~!」


ゼロさんの失礼な発言に、笑いながらポーズをとってくれた女神様…、てぇてぇーッ!ありがとうございますッ。


「ふふ、僕の名前はヴォイス。お坊ちゃんのお名前は何かな?」


はぁー…、さらに僕っ子だと?ありがとうございます神様…。あ、アルたんか。おもわず手を組んで祈る。ありがとう、そしてありがとう…。


「えへへ、新庄 凛です。リンが名前です。」


小さい子に聞く様に、優しくされて思わずでれでれ頬が緩む。無理だよぉ、こんな美人に微笑まれたら骨抜きになるよ。


「わぁ、可愛い~。この子僕にくれるのぉ?」


「え、貰ってくれるんですか。」


何そのご褒美。至近距離に来たヴォイスさんに、頬を撫でられて指先で顎を掬い上げられた。そのまま綺麗なお顔が近づいて、


「やめんか。」


「いたっ!」


ぱぁん!といい音が鳴って、ヴォイスさんが視界から消えた。斜め下で蹲るヴォイスさんはどうやらゼロさんに頭をはたかれたようで。え、いや、ええ?


「ゼロさんなんてことするんですか!美人の側頭部を叩くなんて!」


女性に手を上げるとは何事か!憤慨する私に、ゼロさんがちょっとオコな雰囲気でヴォイスさんを睨んでる。私の話を聞いているのかね?


「ヴォイスは身体が一部女なだけだ。」


「なんて?」


「僕、自認は男でも男だから、ロックスは君が僕にぱっくんされないか、警戒してるんだよぉ~。で?ロックスはいつから少年趣味になったのぉ?」


こんな可愛い子捕まえてぇ。と、からかわれているゼロさんを思わず凝視する。ヴォイスさん、属性森杉では?いや、いやいやそんなことより!


「天然ハニートラップじゃないですかぁッ!最高か?!」


「わぁ、その反応ははじめてだなぁ~。」


あざとい!だがそれが良い!その美貌で好みの男性を誑し込んで、ムシャムシャするんですよねわかります。女郎蜘蛛じゃないですか最の高。大興奮でヴォイスさんを讃頌していたら、微笑まれた。


「えっ、ときめきで死にそう。」


「じゃあ、僕と今晩楽しんじゃう?」


トゥンク…なんて口で言いつつ、胸を押さえて見つめてみたら、ヴォイスさんもノリノリだった。面白いなこの人。


「なんて魅力的…でもゴメンナサイ、私女なんですよね。あと30歳です。」


ショタコンの方だったら申し訳ないし、この世界の成人16歳らしいから年齢も言っておこう。すまんな。


「えっ?うそでしょ?」


「…シンジョウは女だ。」


「すみません。」


呆然とする美人なんて、珍しいもの見たわ。私を指さしながらゼロさんに確認している辺り、私ってそんなに男の子に見えるのか…?なぜに私は女であることを謝罪しているのかね。と思わんでもないけどね!ヴォイスさんの反応につい、罪悪感が…。


「…ッそんなぁああ!ひどいよロックスッ!こんな僕好みの子連れてきておいてッ!!」


「お前の好みなんて知るか。…知っていたら、連れてこなかった。」


ゼロさんめっちゃ嫌そうな顔するね。保護者、お疲れ様です。おもわず頭下げそうになったら、ぽよん。と顔に弾力が。なん…?う、うわあああっ!たわわ!至福の果実が両頬に!ぎゅむっと抱き着かれて双丘に顔が埋まってます、なう。んあああ、


「ゼロしゃんたいへんだ…、あったかくてやわわかくていいにおいしゅる…。」


ぽうんぽうんのふやんふやんだぁ…。ダメだ…抗えない…。乙πの暴力に脳みそ溶ける…。


「お前はしっかりしろ。ヴォイスはシンジョウに触るな。」


「ああ、そんなッ!殺生なッ!」


ヴォイスさんの柔らかメロンにメロメロになっていたら、べり、とゼロさんに引き離された。なんてことをするのかね君は!裏山けしからんからって、私からべリーメロンを奪うとは!ぷんすこしながらゼロさんに抗議しようと思ったら、


「いや、逆に考えればいいんだよ。女の子なら、僕と子作りできるじゃない。」


「うん?」


ヴォイスさんからとんでもない提案が飛んできた。おや?身体は女性って言ってなかっ


「死にたいらしいな。」


「おおッ?!どうしたのゼロさん落ち着きたまえよ!」


ヴォイスさんとの間に立ち塞がっていたゼロさんから、ビリビリと静電気みたいのが飛んできてる。殺気かこれ。私からはゼロさんの背中しか見えないけど、激おこぷんぷん丸通り越してるなこれは。冗談だろうに、何をそんなに怒ってるんだい。


「容姿は僕好みで美少年、年齢的にも問題なくて、しかも女の子なんでしょ?完璧だよぉ。」


「ヴォイスさん、身体は女性って言ってなかったかい?」


「ああ、僕はんだぁ。でも僕入れる側だから、そこんとこは譲れなくてぇ。」


「お、おにショタ…ッ!ヴォイスさんサービス精神の権化じゃん!」


薄い本が厚くなっちゃう!おもわずゼロさんを挟んでキャッキャウフフしていたら、ゼロさんが怒り心頭なお顔で振り返ってきた。え、こわ。


「お前はッ、」


「はいはい、ロックスは落ち着きなよぉ。八つ当たり良くないよぉ?」


何事か言い掛けたゼロさんに、ヴォイスさんが待ったをかけた。八つ当たりってなんぞや。秒でヴォイスさんに向き直ったゼロさんから私にも殺気がバシバシ飛んできてて、肌がビリビリするんですがっ!ひぇえッ!


「誰のせいだッ!」


「えぇ~?みたところ、関係性を明確にしてない君の所為じゃない?」


ヴォイスさんの物言いにぐっ、と言い淀んで、ヴォイスさんを睨んでるゼロさんの背後から黒い気が立ち上ってる。こ、こわっ!なんか見えちゃいけないもの見えてる気がする!激おこどころかファッキンストリームまでいってないかこれ。なんでや。


「親しい間柄、理解ある友人、新たなる障害、明確にならない関係性…はっ!まさかっ!」


「その可能性は絶対ないから安心してねぇ~。ロックスなんて好みに擦りもしてないからぁ。」


僕にも選ぶ権利はあるからねぇ。と笑って脚を組み替えるヴォイスさんに、それはそうだと思い直す。ちっ、流石にそこまでフラグは立たないか。じっちゃんの歯牙にもかけられなかったわ。


「それに、選ぶなら女の子でもリンちゃんが良いなぁ。」


「わぉ!光栄ですな!」


美女(♂)に選んで貰えるとは。しかも色男ゼロさんを差し置いて。ふっふっふ。ついに私の時代か?これがモテ期ってやつか?


「ねぇ、本当に僕はどうかなぁ?これでも腕利きの魔法使いだし、生活に困らないくらい稼ぎはあるよぉ?ちょっと他の子味見しちゃうけど、リンちゃんのことも大事にするからさぁ~。」


本格的に売り込まれてるけど、冗談か測り辛いなぁ。顔は笑ってるけど、目の奥が笑ってない感じするし。この世界の人こんなんばっかだな。…いや、ゼロさんだけは、そんなことなかったけれど。うーん、ヴォイスさんは子供だけ必要なのかな?用済みになったら人知れず消されたりして。ハハッ。


「ごめんなさい、私は私を好きな人が好きなので、それは無理ですね。」


ヴォイスさん、私の事好きじゃないでしょう。そう言って笑い返すと、きょとんとした後に愉しそうに笑われた。おお、眼福。花を背負ってらっしゃる。


「そっかぁ、それはしょうがないねぇ。でも、お友達くらいなら良いよねぇ?」


ぱちん、とヴォイスさんが指を鳴らしたと思ったら、


「お?おおおおっ?!ありがとうございます!」


身体の痛みが無くなっていた。えぇ、どういう原理?!


「あははっ、良い反応だねぇ。」


ずっと我慢していたでしょぉ。と笑われ、知ってて放置してたんかい。と心の中で突っ込んでしまう。さては貴様、サディストだな?


それにしても不思議だ。全く痛みの無くなった自分の身体とヴォイスさんを交互に見てたら、する、と頬を撫でられて、柔らかい手がピアスに触れた。


「んー、妖精の印付きなんて、最高の素材だと思ったんだけどなぁ。」


「ああ、やっぱり。」


解剖フラグだったかぁ。予想通りで笑っていたら、面白いものでも見る様に目を細められた。んん、外観妖艶系美女・内観肉食系男子ですな。


「がっかりした?」


「腑に落ちた。って感じですね。」


囁く美女に肩をすくめれば、なんだぁつまらないな。と、とてもそうは見えない顔で微笑まれた。今度はちゃんと笑顔な辺り、性格に難ありとみた。


「で、ロックスはまだ怒ってるのぉ?」


「あ、そうだ。なんで怒ってるんですか?」


ヴォイスさんの美しさに夢中すぎて、途中からゼロさんのことすっかり忘れてた。


「…はぁあ、…もういい。今日は泊めろ。」


「別に良いよぉ?代わりに、何か面白い話してよねぇ。」


疲れ切ったような顔のゼロさんに、ヴォイスさんが心底愉しそうにニヤニヤしている。なるほど、猿殴の方でしたか。それにしても、ネタを提供せねば野宿か。それは辛い。


「面白い…あ、ピアス。とか。」


「この妖精の印のことぉ?」


「…いや、もう一つある。これについてお前の見解を聞きに来たんだ。」


「印が二つ?…へぇ。面白そうだね。」


今までとはうって変わって真剣な顔で笑うヴォイスさんの雰囲気は、こう、仕事のできる人。って感じだ。切り替え大事。


ひとまずプーカの印(多分)と、もう一つを手に入れた状況をゼロさんが掻い摘まんで説明しつつ、あの小箱を取り出した。相変わらず私にはただの箱とピアスにしか見えない。


でも、ヴォイスさんには魅力的なモノに見えてるようで目がキラッキラに輝いていた。うぉっ、美人の無垢な笑顔凄い。かんばせが輝いていらっしゃる。


「凄い…!妖精王の印だ…っ!」


「…やはりか。」


小箱ごと掲げて、うっとりとピアスを見つめるヴォイスさんの色気がっ…!眩しい…っ!逆にゼロさんは眉間に皺を寄せている。というかこれ、私蚊帳の外だな。大人しくしておこう。


「オパールは『神の石』だからね。そもそも、妖精王からしか手に入らないんだよ!他の妖精の印のように、同名の宝石として鉱山から出土したりしないんだ。」


「え、印って宝石じゃ無いんですか?」


「正確には妖精の魔力結晶だね。通称、妖精石。鉱山から出土する宝石に似ているから、宝石に間違われやすい。むしろ宝石は妖精が作ってる、なんて言われてるくらい似てるんだ。本物の印は契約者の血に反応して、呼べば妖精が現れる。契約した妖精の能力によって、履行される力の幅は広いよ。」


万病を快癒したり、巨万の富を与えたり。なんて噂されてるけれど、そもそも契約してる人間ってなかなか遭遇できないんだよね!と、今までのアンニュイな雰囲気は何処へやら。好奇心でキラキラな目が可愛い。


「それに、妖精の印はその特性から二つ得るなんてあり得ないんだ。まぁ今回みたいに最上位の妖精から受け取ることは可能みたいだけれどね。」


妖精は基本横一列。タイプが違うから優劣なんて関係ない。ただし、妖精王を除いて。と話をしめたヴォイスさんと目が合う。おやおや、イヤな予感がするぞ?


「リンちゃぁん♡お願いがあるんだけど♡」


「わぁ、断りたい。」


小首を傾げて上目遣いを炸裂させてくるヴォイスさんに、背筋が寒くなる。いや、とっても可愛くて魅力的なんですがね?…わかるだろぉお?!


「これ、つけるところ、見たいなぁ。」


「あわよくば妖精王に会えるかも。って?」


「ピンポーン!」


おおん、やめるんだ。距離を詰めてくるんじゃあ、ない。もともとつける気でいたけどさ。断ると魔法で何かされそうなんだぜ。警戒しちゃうぜ。


「…こら、それは明日にしろ。今日はもう遅い。」


「え、あっ!本当だ。」


「ええ~そんなぁ~。」


間に割って入ってきてくれたゼロさんが、ヴォイスさんの顔面をアイアンクローして止めた。お、おう。ゼロさんの中で、ヴォイスさんは『男』あつかいなんですね。…私に『女』と紹介したのは、ヴォイスさん本人の名乗り次第だからかな。


天井がドーム状のガラス張りで外が真っ暗なのがよくわかる。気温から言うとずっと初夏くらい…日差しが温かく風が冷たいような気候らしいから、今は20時をまわったくらいだろうか。泊めて貰えるのはありがたいけれど、ご飯とか考えたら確かに遅いね。


「晩ご飯どうします?」


「僕はねぇ、魔法以外は全部ダメだから期待しないでぇ。あ、トマトとかマメとかが好きだよぉ。」


「すまん、シンジョウ…。」


「あ、私が作るんですね了解した。」


作るのは良いんだがな。このホールの様なワンルーム、キッチンはどこなんだ。きょろきょろ辺りを見回していると、気がついたヴォイスさんが案内してくれた。おおん、まさか壁が通り抜けられるとは思わなかった。ちょっと楽しくなって三回くらい行き来したよね。


キッチンも無駄に広かったけれど、設備はばっちりだった。なんでも、ここを建てた時に業者のおススメをそのまま買ったんだとか。…お金持ちがおる。さっきも腕利きって自分で言っていたし、裕福だなさては。


「僕が生きてるかどうか、確認しに来る奴等しか使わないんだけどねぇ~。」


「ゼロさんとか?あ、これいいですか。」


「そうそう、お節介で世話焼きだよねぇ。何使ってもいいよぉ。」


合間に世間話を挟みつつ、晩御飯を作ることにした。なにが楽しいのかわからないけれど、ヴォイスさんはずっとふよふよ浮きながら、私とお喋りして出来上がるのを見ていた。


「すみません、お待たせしました。」


「いや、任せきりで悪いな。」


キッチンのダイニングスペースに食事を並べる。夜はそんなに食べないそうだから、今回はグヤーシュにバケット。あとブルブとかいう牛?の肉をシンプルに焼いて、タコとひよこ豆でサラダを付け合わせにした。そう、なんとタコがあったんじゃよ。


「…リンちゃん、結婚しよう。」


「おっとぉ?」


静かにご飯を食べてたヴォイスさんがあまりにも真剣な顔で言うから、なにごとかと身構えてしまった。


「実験用に買った海の悪魔を捌き出したときは正気を疑ったけど…、焼きたてのパンふわふわで美味しい…。このスープも美味しい…。」


「ふふふ、たんとお食べ。」


そんなに食べない(食べないとは言ってない)だと困るから、お腹に溜まるお肉と具沢山グヤーシュにしたんだけれど正解だったな。ナイス先見の明。ヴォイスさんはそのクビレのどこに入って行ってるんだい?めっちゃ食べるね。


「朝ご飯楽しみだなぁ~。この際僕のものにならなくてもいいから、ここで働かない?食事係として。お給金弾むからさぁ。」


食事中は流石に席についているヴォイスさんが可愛い猫なで声で甘えてきて…こう、グッとくるよね。でもなぁ。アルたんに頼まれてるし、一所にいるとまずいんだヨ。適当に断るか。


「ゼロさんが拗ねちゃうからダメですねー。」


「ごっふ、ゴホッ!…っは?!なにを、」


「なるほど、それは難しいねぇ。」


おお、大丈夫かゼロさん。布巾を差し上げよう。テーブルの上が吐血したみたいになってるよ。先に水飲む?咽すぎて顔が真っ赤になってるよ。


「まぁ、リンちゃんは見たことのない色で光ってるし、騎士団長なはずのロックスが一緒についているし。何かあったんでしょぉ?」


グヤーシュに千切ったパンを浸しては食べるヴォイスさんに、ちら、とゼロさんをみる。別に、話してしまってもいい。私には彼の危険度がわからないからね。それに、いまここで襲われても私は死なないだろうから。


探るように私を見ているヴォイスさんに、にっこり笑い返す。猫みたいに目を細める彼は、私が何に見えているんだか。光ってるってなんぞ。太陽拳かな。


「あとは保護者に聞いてください。私から聞いても、信憑性がないでしょう?」


「あは、そうだねぇ。リンちゃんのそういう所、すきだなぁ。さて、ごはんのお礼はしなきゃねぇ。何がいいかな?」


品定めのように見つめられて考える。ふむ、『何』を丸投げしてくるのか。私の欲深さでもはかりたいのかい?好きじゃないなぁ。しかし、お礼か。お金持ちに一宿する際に集るお礼なんて、決まってるじゃないか。


「お風呂ありますか!!」


「あるよぉ?…え、そんなのでいいの?」


「あああ、最高ですありがとうございます女神様!!」


高ぶりまくる私に、わけわかんねぇな。って顔を取り繕いもせずに向けてるけど。お風呂はね!大事なんだよ!思わずヴォイスさんを拝むくらいにね。


「あははっ!本当に変な子だなぁ。赤色の扉の部屋にお風呂が付いてるから、使うといいよぉ。」


ぱちんと乾いた破裂音の後、キッチンの横の壁に階段が現れた。…二階も、あるんかい。でもそんなことは些末些末!ゆっくり一人風呂ができるなんて、最高の餌ですよ。やったぜ!


「じゃあ、私はお先に失礼しますね!おやすみなさい!」


良い笑顔で敬礼をかまして、颯爽と階段を駆け上がった。後は二人で積もる話でもして旧交を温めてくれたまえ!


駆けこんだ部屋のベットもお風呂も最高で、私は結局一時間かけてピカピカに身体を磨き上げて、さらに一時間かけて、今まで簡単にしか済ませられていなかったボディメイクに精を出した。


「…はっ!脹脛とかが引き締まってる…!ああっでも肌荒れが…っ!」


ぐぅう、ほんと、早くなんとかせねば。三十路の肌は揺らぎやすいんだぞ!半泣きで誰に言うわけでもなく、化粧水を叩き込んだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「でぇ?騎士団長様はこんなところでなにしてるのさぁ。」


よほど気に入ったのかシンジョウが鍋一杯に作ったスープが宙を舞い、ヴォイスの皿へ注がれていく。それとは別にワイングラスと赤ワインが浮かび上がりひとりでにテーブルへ並べられた。


「もう騎士団長ではない。」


「先代死んじゃったもんねぇ。もう用はないかぁ。」


「…いや、ベイルート様にクビをきられた。」


傾けた空のワイングラスに注がれた赤ワインは、スパイスが効いていて肉に合う。黒苺の風味が鼻に抜けるが度数が高いな。愉快そうに嗤うヴォイスに告げれば、眉間にシワを寄せている。


「はぁ?なにそれ。あのゴミ、お前がいなきゃなにも出来ないって自覚してたじゃん。ついに宰相のオモチャに成り下がったわけ?」


「もう少し言い方はないのか…」


どう言ったって同じでしょお。と肉を指したフォークを頬張るヴォイスにため息が出た。


「もうウォンカ様から連絡が来ているだろう。禁止されている聖女召喚を行ったライハは、いずれ教会や他国から切り捨てられる。」


「だろうね。あーあ、先代が話のわかるジジイだったからお前が騎士になるのだって許したのに。どうしたらあんなのが生まれんの?隔世遺伝?」


ヴォイスは俺からの返事はもとより望んでいないのか、ただ好き放題に罵倒している。そのままグッとワインを煽ると赤い目を細めて意地悪く嗤いだした。


「まぁいいや。そんなことよりぃ、面白いことしてんじゃぁん?自由になったついでにリンちゃんゲットしたの?お前欲とかあったんだな。」


「五月蝿い。」


「リンちゃんが聖女サマでしょ?見たこと無いよあんなに綺麗な光。そりゃあ欲しくなるよなぁ。僕もリンちゃんと目があった瞬間、泣きそうだったもん。」


俺へのからかいから一転、シンジョウを思い出しているのか優しい眼差しでグラスを弄ぶヴォイスに、腹の底からムカムカと胸焼けのようなものが上がってくる。


「はははっ、ヤバァ。お前のそんな顔はじめて見たんだけど!そんなに大事なら首輪でもつけてしまっとけよ。」


どんな顔かは知らんが、俺はそんなに顔に出ているのだろうか。大笑いするヴォイスになんとも言えずワインを煽る。しかし…首輪か。確かにシンジョウは犬っぽいしな…。似合うんじゃないか。いや、絶対に似合う。


「アッハ、声に出てるしだいぶヤバくて面白いんだけどぉ。もう拗らせてるとか変態じゃん。」


「…お前と一緒にするな。」


「僕は趣味と実益を兼ねてるから問題ないもぉん。」


地下にある惨状を思い出し口にすれば飄々と返してくる辺り、本当に自覚がないのだから質が悪い。


「聖女なんて伝説の生き物だよぉ?僕の容姿見た目好きみたいだし、1日好きにしていいよ♡っていったら血とかくれないかなぁ。」


「ヴォイス。」


「冗談だってぇ。そんなに威圧出してるとリンちゃん起きるよ?」


こいつの言葉が本気ではないとわかっているのに、まるで条件反射のように威圧してしまい自分でも少し驚いた。困惑している俺を見て、また楽しそうにするヴォイスの視線が鬱陶しい。


「ふふ、安心しなよ。僕はお前ほどリンちゃんに執着心とかないからさ。」


「執着…、」


「またはヤキモチ?まぁ応援してるからさぁ、頑張ってよ。お前滅茶苦茶警戒されてるじゃん。」


「ッわかっている!」


一番気にしているところを抉られ思わず語気が荒む。できる限り優しくあろうと努めているが、シンジョウから見えない壁を作られているのは自覚していた。一般的な人間関係よりは距離感が近いのに、そこから先へは絶対に進ませないと線引きされている。


それでも、シンジョウは俺以外に頼るものがない。そんなシンジョウにとって最低なこの状況が、唯一俺に有利な時間だった。…自分のクズさに、頭痛がする。それを見透かしているかのようにヴォイスからため息が聞こえ、見れば呆れとも憐みともとれる表情で


「狡いとか最低なんてバカみたいなこと気にしてる余裕なんてすぐに無くなるからさぁ、チャンスだと思って急ぎなよ。聖女サマには、直ぐに次が来るから。」


「次…?」


「僕がリンちゃんを見て泣きそうになったように、『魔眼持ち』からすれば彼女の持つアルヘイラの力はどんな宝石より美しく輝いて見える。それを傍で見ていられるなら、彼女本体を護るくらいするしどんな願いも叶えてあげたくなる。まぁつまりさ、お前以外にもリンちゃん聖女サマの隣に立ちたい奴はいるってことぉ。」


茶化すような物言いとは裏腹に真面目な顔でいい放つヴォイスの赤い瞳が、銀の砂をばら蒔いたように光り輝いている。


「安心してよ。僕はお前が捕まえてくれていれば、僕の隣にリンちゃんがいなくてもいいからさ。頑張ってねぇ?」


俺がシンジョウの隣に立たないのなら、自分が立つ。そう、発破をかけられている己が腹立たしい。シンジョウは最初からわかっていたんだろうか。ヴォイスから向けられる感情が自身に対する好意ではなく、聖女への好奇心だと。


「死んでも渡すか。」


女神アルヘイラから授けられた力に引き寄せられる羽虫のようなお前達魔眼持ちに、シンジョウは勿体ない。ただそれだけの話だ。


「ちょっとぉ。普通幼馴染みを羽虫呼ばわりするぅ?」


「一般的な幼馴染みを名乗りたいなら、来る度に俺の身体で魔法実験するのをやめろ。」


呷り飲み干したグラスに注がれたのは、甘く酸味のある白ワインだった。

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