三つの“少し不可思議な”物語
わたくし
お題その1 砂の王国の砂
「緊急事態! こちら、宇宙船ノストロモ号! 機関部の故障により後3日で航行不能になります!」
「至急、救助を要請します!」
「畜生、まだ行程の半分なのに」
「これだから、中古の宇宙船はイヤだったのだ!」
オレは舌打ちをすると、無線機で銀河パトロール宛てに遭難信号を送信した。
「銀河パトロールより宇宙船ノストロモ号へ、遭難信号を受信した」
「遭難地域に救助隊が到着するまでに約5日かかる」
「現在地点から航行1日以内の距離に銀河連邦加盟国の『砂の王国』の星がある」
「その星へ緊急着陸をされたし」
「銀河連邦を通じて『砂の王国』政府に遭難者保護の依頼をしておく」
「救助隊が来るまでその星で待機せよ」
「なお、『砂の王国』では・・・・に注意せよ」
「健闘を祈る」
肝心な所が雑音で聞き取れなかったが、まぁ良いか……
「こちら宇宙船ノストロモ号、『砂の王国』の星へ向かい救助を待つ、以上」
宇宙船は『砂の王国』の星に近付く。衛星軌道に乗り、地表を観察して着陸に相応しい場所を探し着陸した。
恒星間運行船だから水・食料の備蓄は十分にある、エネルギーも宇宙航行をしなければ長期間生活可能だ。
救助隊が来るまでここで待つ事にしよう。
しばらくすると、砂漠の向こうから動く物が近づいて来る。監視カメラで拡大すると、馬のような四つ足の動物に曳かれた岩船に人間が乗っている。
オレはエアロックを開けて出迎える。
「銀河連邦の依頼で遭難者保護の為に来ました、『砂の王国』の副大臣ゴーレムです」
「お体や宇宙船のご加減は如何ですか?」
「わざわざのご訪問、ありがとうございます」
「
「幸い宇宙船も機関部以外は無事ですし、私も怪我などは負っていません」
「救助隊が来るまで、このまま宇宙船で待つ事にします」
「それで……」
オレは大きな箱を出す。
「これは救助と連絡のお礼の印です」
「どうか受け取ってください」
箱をゴーレムに渡す。彼は興味津々で箱を開ける。
「これは、我が宇宙船が運んでいた積荷の『海の星』で産出する『星の砂』です」
「『砂の王国』ではありふれた物かもしれませんが、渡せる物がこれしか無いのでどうかご笑納ください」
「ありがとうございます、明日から毎日一回様子を伺いに参ります」
ゴーレムは箱を受け取り去っていった。
それから毎日ゴーレムはやって来て、救助隊と銀河パトロールの報告をオレに伝えてくれた。
「あの……」
「エイハブさん、例の『星の砂』をもう少し貰えませんか?」
「ええ、いいですよ売るほど有りますから!」
オレは毎日『星の砂』を渡していた。
五日後、ゴーレムは言った。
「銀河パトロールの救助隊は明日の朝に到着する予定です」
「そこで、お別れの宴席を催すので、街までご同行願いますか?」
「わかりました、行きましょう」
オレは岩船に乗り、『砂の国』の街へ行く。
街の中心には立派な城が建っていて、岩船はその城へ入っていった。
城の中の大広間には宴席の準備を終えて沢山の料理が並べてあった。
上座に座る国王がオレ呼び、宴席の出席者に向けてこう言った。
「皆の者、このお方が我国に素敵な贈り物をもたらした者である」
「今日は皆一同でこの贈り物を楽しもうではないか!」
満場割れんばかりの拍手が響く。
「はて? 贈り物って『星の砂』事だろ?」
オレは首を傾げながら指定された席に座る。
目の前には、様々な色の氷砂糖ような粒が皿の上に乗っていた。
「どれ、一口……」
オレは皿の上の透明な粒を口に入れる。
ガキッ!
あまりの硬さに粒を口から手に出す。手の上には粒と折れた歯があった。
オレはベルトに付いている簡易分析器で調べる。
――分析結果 C 炭素の同素体――
ダイヤモンドではないか!
その他の色の粒も調べる、殆どが宝石類であった。
この国の人達は宝石を食べて生きているのか!
オレが食事を躊躇っていると、隣の席のゴーレムが言った。
「エイハブさん、料理の味が合いませんか?」
「それなら、これを使うと良いですよ」
金色の砂粒の入った容器を渡す。
――分析結果 Au 金の粒子――
こ、これはっ!
まだ躊躇するオレを見たゴーレムは続けて、
「この味も駄目でしたら、彼方からの贈り物を使いましょう」
そう言って『星の砂』を宝石の粒の上にかけて、美味しそうに宝石を食べ始めた。
「今までこの国には
「本当に素晴らしい調味料をありがとう!」
そう言ってゴーレムは
三日後……
オレは救助隊の資材と助力で宇宙船を修理し、帰還の途についていた。
貨物室には『星の砂』と交換した『砂の国』の
「今回の輸送契約の違約金を払っても、沢山の資金が残る」
「これで最新型の宇宙船も買えるな!」
「でも、その前に……」
「
END
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