悪徳商人のレッテルを貼られ破滅するが、狐人族の奴隷少女と逆襲をはかる。偶然手に入れた魔力全振りチートで王国へ逆襲するぞ(そして俺を破滅させた国税局の美人調査官をヒイヒイ言わせてやる)
魚飼えびす
第1話 俺は破滅する
「ぐっは!」
女から思い切り
肥え太った俺は、ぶざまにゴロゴロと後方に転がる。
ブラウングレーの髪(髪型はロングのストレートヘア)、碧い瞳の女が俺を見降ろしている。
王都国税庁・視察官エレノア。
ゾクゾクしそうなイイ女だが、今はそんなこと考えている時ではない。
「悪徳商人ケルアック! 領主ブラウンと裏で手を組み極悪非道の数々……。この私エレノアがしっかりと調べさせていただきました」
「ぐぬぬ、何を証拠に! 俺は無実だ! まっとうに商売をしてきたんだ」
たしかに俺は多額の脱税をしてきたが、その金は孤児院や貧乏教会に寄付していた。
悪徳貴族を傭兵を雇って殺したこともある。
おなじく貴族と癒着した悪徳商人からは、様々な手をつかって金を巻き上げた。
領主マサヒコに賄賂を渡し、民衆のために公共事業を最優先させた。
ふうっ、と気だるそうに視察官エレノアはため息をつく。
俺好みの美人なだけに、こういう形で出会いたくはなかったぜ。
「脱税、殺人、詐欺、収賄、王国への叛逆行為……お前の悪行は、この領主マサヒコがすべて白状したわ」
(! ! !)
扉が開くと、ボコボコにされた領主マサヒコがロープで縛られヨロヨロと引っ張られてきた。品の良い顔立ちが悲惨な状態になっている。
(あっ、マサヒコ君を拷問にかけちゃったのね……、なんと卑劣な)
「ご、ごめんケルアック、洗いざらい吐いちゃった」
申し訳なさそうにテヘペロと舌を出す領主マサヒコ。
そのボロボロ具合から見ると、彼にしては相当に頑張ったように思われる。
「くっ! 卑怯だぞ、痛み耐性のないボンボン育ちのマサヒコ君を拷問にかけるなど」
俺の言葉を無視し、視察官エレノアは残酷そうにニヤリと笑うと、一冊の書類を取り出す。
柑橘系の香水をつけているのか、良い匂いがただよう。
やはりイイ女だ、ヒイヒイ言わせてやりたいぜ、……だがヒイヒイ言うのは俺のようだ。
「そっ、その書類は!」
「ええ、貴方の裏帳簿ってやつね」
(まさか、俺の信頼する相棒にあずけている帳簿をなぜこの女が持っている?)
「あらあら『信じられない』って顔をしてるわね。帳簿の持ち主は相当に腕のたつ方でしたが、私の部下と相打ちで果てられましたわ」
「貴様、よくもクライドを!」
相棒のクライドは剣の達人だ、負けるなど考えられない。
しかし、彼が管理していた裏帳簿は、現に視察官エレノアの手にある。
(クライド! 必ず仇は取ってやるからな……)
相棒・剣士クライド。
年齢は23歳。
金髪を整髪剤で立てた、碧い目の細マッチョ。
俺は、エレノアを睨みつけた。
視察官エレノアはブラウングレーの長髪をかきあげると、深々とソファーに腰を下ろした。
(この高飛車な態度が、最高に気に食わねえ)
「それで? 俺をどうする気だ? 死刑にでもするか?」
「そんなことはしません。ですが、貴方には死ぬよりも辛い目に会っていただきますわ」
「ほう、死ぬより辛いか」
すでに相棒クライドを殺されており、死ぬより辛いのだがな。
「まずは、貴方の土地屋敷、店舗、商売道具などの財産はこちらで抑えさせてもらいます」
くっ、相棒のみならず全てを奪うときたか。
「俺の資産を奪うのか? いかにもお前たち悪徳貴族がやりそうなことだ」
「今回、裏帳簿が見つかったからには、貴方の財産は賠償責任として不幸に見舞われた方々への補償金に使います。もしも、残る場合はお返ししますが、この帳簿を見る限りは残らないでしょうね」
不幸に見舞われた方々だと? そいつら悪徳貴族や悪徳商人がどれだけ民衆を不幸にしたと思っているんだ。
裏帳簿のことは頭に入っている。賠償という名のもとに悪徳なやつらに俺の財産が分配されるのだろう。
「その上で、商工会ギルドから永久追放を命じます」
「なっ!」
「同時に、傭兵ギルド、魔導技術ギルド、賭博師ギルドなど各種ギルドからの永久追放もです。
ただ再就職先がなくなりますので、冒険者ギルドの加入は許可しましょう」
「くっ、そんなことをされては冒険者ギルドの最底辺しか仕事ができぬではないか!」
この王国をはじめ、この世界では様々な仕事が、ギルドの管理下で行われている。
ギルドから追放されては何もできない。
(それに俺は商人としてのスキルしか持っていない、冒険者としての薬草摘みの仕事でさえ命がけだろう)
「はい。ですから、死ぬよりも辛いことになるのです。悪徳商人ケルアック、さんざんに働いた悪事を牢獄のなかで悔い改めなさい」
そう言って王都国税庁の視察官エレノアは、美脚を解くと立ち上がり、また偉そうに俺を見降ろす。
さらに、もう一度俺を足蹴にして部屋を出ていく。
無様にゴロゴロと転がり、壁にぶち当たる。
くっ、エレノアめ、俺から全ての物を奪って立ち去っていきやがった。
俺に下されたの刑罰は
・財産の没収
・一年間の投獄
・商工会ギルドを始めとした各種ギルドからの永久追放(ただし、冒険者ギルドへの登録は可能とされた)
だった。
部屋に残ったのは俺と、領主マサヒコとマサヒコを縛っている兵士。
この兵士もよく見るとマサヒコ君の召し抱えていた兵士じゃないか。
「ごめん、ケルアック。視察官の命令で、君を一年のあいだ牢獄に閉じ込めないといけない」
申し訳なさそうにマサヒコ君はそういうと、こっそりと兵士を通して宝石を俺に渡してきた。
(これは?)
「我がフジマウント家に伝わる宝石だ、僕からのせめてものお詫びだ」
顔中を腫らしたマサヒコ・フジマウント君は、少しキザな感じをだしつつも、申し訳なさそうにそう言った。
(注・マサヒコ=名前 フジマウント=家名 彼の領地は正式には『フジマウント領』なのだが、作品中では『マサヒコ領』と表記している)
= = = =
そうして俺は身ぐるみ剥がされ、マサヒコ領の地下深い、暗く冷たい一番最奥の牢獄へと落とされ、一年の投獄生活をおくる。
マサヒコ君のはからいで、他の囚人よりは良い食事をもらったが、それでも俺の蓄えられていた脂肪はきれいさっぱり落ちていった。
牢から出て、太陽の光の眩しさにクラクラしながら、マサヒコ領を追放された。
「本当はケルアックをかくまいたいんだが、王都の奴らにみつかったら大変な事になる、すまない」
こっそりとマサヒコ君がひとり見送りに来てくれてそう言うと、俺に金貨五枚と銀貨を数枚、さらに布の服をくれた。
できれば何らかの武器防具も欲しかったところだが、彼の好意はありがたい。
日が暮れる前に、どこかの町か村へとたどり着かねばならない。俺の職業は商人だから魔物や盗賊襲われたらひとたまりもない。
しかし。
対魔障壁(魔物よけの結界)の張られたマサヒコ領を抜け出して、十歩あるいたところで空から巨大な翼を広げたオウムの魔物が急降下してきた。
空から飛来する巨大な魔物は、直滑降しながらクチバシを開くと、炎を吐いてきやがった。
■
最後まで読んでいただきありがとうございます。
主人公ケルアックいきなりのピンチです。
手探り状態で書いていますので★や♥をもらえると本当に嬉しく思います。
本日は3話まで投稿します。
フォローして追って頂くと嬉しいです。
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