第9話 正義のヒーローになるために……

 というわけで、あれから数日。


 一時的に城は元通りになった。結界もちゃんと張られてる。


 一時的にね。


 もう壊れた。


「フォルスト〜。なんか最近、城壊れかけてきてない?」


「ボスが寝ている間に結界を解くからです。その間に奴らが城を落とさんとやってくるのです」


 最近の僕は正義のヒーローしてる。


 敵がいないから、てか暇だから、結界をわざと解き、敵を招いているのだ。


 フォルストはそれに気づいていない。


 僕は攻めてきた敵をかっこよく葬った。


 正義のヒーローのように。


 僕は、じゃなくてヨセフ君はかなり強いらしい。


 その代償として城が壊れる。


 だから、遠回しに治しといてって言ってみたんだ僕は。


 でもやっぱり、フォルストの機嫌は悪いな。


 しかしながら、正義のヒーローはそんな私欲で動かないのだ。


 今日それを証明するため、僕はこの国の治安を調査しに行ってこよう。


 毎日のように敵が攻めてくるとなると、治安はとても悪いはず。


 そしたら、ぼくが正義のヒーローっぽく活躍するのも夢ではない。



 ーーーーーーー




 というわけで、知らない街到着。


「ボス。こんなところになんの用があるというのですか?」


 一人で行くって言ったのに、彼女は着いてきた。


 この街もボロいな。


 近くの街は、全部ボロい。というか、今のところ見える範囲では、綺麗な街がない。


 僕の城だけなぜか光り輝いている。


 だからこの前、街で見かけたお姉さんに、僕の城で一緒に住みますか? って聞いたら、悲鳴を上げて逃げてった。


 さすがにいきなりすぎたね。


「フォルスト。今から僕は夢を叶えるんだ」


 きっとこの街は、悪によってボロボロにされたのだろう。より一層正義のヒーローしがいがある。


「なるほど。あの夢ですね。私も協力します」


 と、言ってフォルストはいきなり魔法をぶちまけた。


 ボロボロな民家がさらにボロついた。


「なにしてんの?」


「ボスの夢を叶えるためです?」


 あー、なるほどね。


 フォルスト自ら悪役になろうというわけか、しかし、それはなんか違う。


 そんな創った悪を退治したいんじゃない。


「違う。本物がいいんだ」


「本物? ということは、例の」


「ああ」


 知らんけど。


「彼なら、北の街に居ると情報が入りました」


「なるほど。では行こうか」


 悪党がそこにいるらしい。意図を言わずとも、察してくれるフォルストにはいつも感謝してる。

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