ワールズエンド・ダンスホール

書い人(かいと)@三〇年寝太郎

第1話 僕とWED

 このゲームの開発者が執筆した、二人称小説兼プレイングマニュアルを読んで、予習を終える。とにかく過酷で、とにかく面白いゲーム。それがWEDウェドだ。

 『ワールズエンド・ダンスホール』。英語のイニシャルを取って、すなわちWED。

 指一本で電源ボタンを押し、デスクトップPCを起動。

 モニターにデスクトップ画面が映り、アイコンをクリックする。

 基本プレイ無料。

 楽に進めたいのならば、無論、課金は必須となる。ここまではよくあるMMORPGだけだが、WEDには凄まじい広さを誇るマップがあり、プレイの自由度と難易度は世界最高峰だ。

 ログインボーナスを貰い、まずはリスポーン地点を決める。

 ゲーム開始時点で既にプレイヤーは死人だし、そもそも前回のゲームプレイ終了時に肉体が死ぬので、いつも培養・クローン体からのスタートになる。

 任意のスタート地点にポッドストライク、衛星軌道上から自分のクローン体が乗った培養ポッドが射出され、戦地へとおもむくのだ。

 最近は独立傭兵として、ゲーム内では生計を立てつつある。信頼を得て、様々な兵器で無双してみたい、くらいの夢はあった。

 独立傭兵のプレイスタイルは、十把一絡じっぱひとからげの雑兵ぞうひょうとして信頼を得ていくのが大事になる。

 プレイヤー組織、すなわち『企業』の領土戦への参加や、私怨しえんによる他プレイヤーの暗殺などが仕事で、特に前者は需要が大きい。

 企業の入社履歴の閲覧権限を『自分だけ』に設定しているのは、独立傭兵に非常に多い。無論、自分もそうだった。

 企業側が、スパイを警戒するのは当然で、重要な兵器の管理や会計係などはもってのほかで受けられないが、最低限の武器が買えるだけのGゴールドは提供される。基本的には、自分にとって条件の良い相手に付くだけである。

 クローン体や装備はナナイト(ナノマシン。極微の機械)により成形・生成されており、Gは何をするにも必要な通貨になる。

 ゲーム内の巨大なチャット掲示板で連絡を取り合い、一時的に雇われた僕はその区域に足を踏み入れた。

 ちゅどーん、と培養ポッドが着弾して、地面に穴を開ける。軽い隕石と言っていいだろう。

 さて、殺すか。


 いつもの日常、戦争だ。

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