もしも自分以外が別言語を話す世界になったら

@harunonightdanc

第1話

海外ドラマに出会ってからというもの、私の世界は変わった。

元々ドラマを見るのは好きだった。私にとってのドラマとは日本のドラマのことだ。

知っている俳優が出てくる、放送前の宣伝で知らされる設定や軽いあらすじを頭に入れた上で見る、ある程度事前に面白いと保証されているドラマのことだ。

最初はただの興味本位だった。たまたま見つけた普段は見ない深夜枠のドラマで、どんなもんだろうと冷やかし程度に録画してみただけだった。前情報は何もない。

何となく毎週録画にしておいて、かなり録画がたまったタイミングで開いてみた。

1話だけ消化してみようと思った。はじめはありがちな設定だと思って見ていた。少々無理がある展開にひとりツッコミを入れながら見ていた。

ところが話の内容が意外な展開を迎えたこともあり、見続けることになった。

次にこうなるだろうと予想しながら見るけれど、展開はいつも予想を上回る。

日本のドラマならこうなるだろう、という想像は役に立たない。

最初の設定と方向性が違ってきているのではと不安になりながら何となく見るのを止められない。ならばどこへ着地するのだろうと気になる。

無理があると侮っていた展開は、こんなの見たことない、という新鮮な驚きに変わった。

本筋とは関係のない短いイメージ映像や、日本のドラマにはおよそ見られない謎の間。なぜスローで見せたかったのか分からない場面すらおもしろいと思えた。

加えて初めて見る俳優、初めて聞く言葉、初めて見る習慣がどれも新鮮に映った。

とりわけ登場人物たちの一際目を引く目の美しさに魅せられた。

決して好人物を演じている俳優への贔屓目ではなく、誰もかれも目が美しいのだ。

一体何を食べたらそんなに目が美しくなるのだろうと真剣に考えたことすらある。

私は総じて思った。今までこんなおもしろいものを知らずに生きていたなんて。

私は一体どこに閉じ籠って生きていたのだろうと。

決して片田舎に住んでいるわけでもないのに、自分が山奥でひっそりと生きている人みたいに感じた。

それくらい、私にとっては大きな衝撃だった。

世界が変わる、というのはこういう体験を言うのかもしれないと真面目に思った。

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