あの日 雪化粧

佐倉明人

第1話

ひらひらと舞い落ちる雪。まるで桜の花びらのよう。ふわふわと落ちては地面へと吸い込まれ、はかなくも消えてゆく。窓から見えるは降りゆく雪。僕は部屋の中から窓の外の景色を眺めていた。

 ただただぼんやりと降りゆく雪を眺めていた。そう、ただただぼんやりと。


 ひらひら ゆらゆら


 雪が窓の外で舞い遊ぶ。舞い踊る。

 僕はその雪にしばし見惚れていた。

 美しい。

 その一言につきる。

 まるで花びらのように落ちてくる雪。永遠に落ちてくるような無限感。大きな花びら雪の舞い。咲き誇る。まるで花咲き誇るよう。

 空を見上げながら落ちてくる雪を眺める。一つ一つの雪が大きい。


 咲き誇り

 誇り

 ほこり

 埃


 僕としたことが。おかしな変換ミスのような脳内変換が僕の脳内で起きた。埃と言われれば、埃のようだ。なんだかいつもと、どこかが違う。

 一つ一つの雪が大きく感じる。雪ってこんなものだったか。見慣れている雪であっても、まじまじと見ると何かがおかしいように感じる。

 なんだか違う。どこかが違う。気のせいだろうか。いや、気のせいではない気がする。なんだろう。この違和感。


 何かが違う。

 本能がそう告げている。ただ何が違うか分からない。


 一体何が違うのだろう。何かがおかしい。何かが違う。何かが違うと僕の心が告げている。何かが違うと僕の脳内が告げている。今の僕には分からない。なんだろう。この違和感は。

 気にしだすと気になってくる。気になってくると気になりだす。気になりだすと、余計に気になる。

 なんだか追求したくなる。

 この違和感の原因を。

 窓の外には雪が降る。牡丹雪のような雪が。ゆらゆらとひらひらと落ちている。埃のように。


 この時の僕は、まだ気づかなかった。気づけなかった。その雪が通常の雪ではないことに。その雪が通常の雪ではなかったことに。その雪の本当のおかしさに。僕はまだ気づけなかった。


 窓の外は雪化粧。

 降り積もった雪に僕は心躍らせ外へ出た。いつの間にやら降り積もっていた雪が、僕の足元から前を見ると幻想的な世界が広がっている。辺り一面、雪景色。辺り一面、雪化粧。

 木々は、まるで咲き誇った桜のように雪が積もっている。この違和感はなんなのだろう。幻想的で美しいにもかかわらず、この雪の積もり方に少しの違和感を覚えた。

 足元の雪か。

 僕はおもむろに足元の雪に手で触れてた。そして、その雪のおかしさに気づく。いつもと雪の質が違う。なんだ。この粘り気のある雪は。なんだ。この溶けにくい雪は。通常の雪とは違う。

 通常の雪とは違う。と、いうことは。考えられるのは、これしかない。


 人工雪。


 ふと脳裏によぎった言葉がそれだった。そんな言葉を聞いたことがない人には全くもって聞き慣れない言葉であろう。

 一見はた迷惑な話だが、気象操作は闇の者が普通に行っている悪行である。まさかと思うかもしれないが知らないということは恐ろしい。しかし、知る者には更に悲劇だ。今の世界にこんな事が蔓延しているなど辛すぎる事実である。知る者は知っている。

 ここぞというタイミングの時に何故か降る大雪がある。例えば、選挙の時に何故か降る大雪。何故か降る大雨。何故このタイミングに。

 この世界の住人は疑問に思わないのだろうか。毎度毎度タイミングが合うという恐ろしさ。まさかのマジックが起きている。

 これらは気象操作されている可能性が高い。高いと言わざるを得ない。例えば選挙の日の大雨、大雪。これらは気象操作をして投票率を下げているのだ。

 何故、投票率を下げるのか。それは不正選挙を行うためである。不正選挙など聞き慣れない言葉の者も多いだろう。それが、この世界の住人意識の低下である。

 意識低下の脳内では、そこまで分析できないのだ。僕はそう思ってしまう。まずは、おかしいと思わない限り気づく者は少ないだろう。それが住人意識の低下である。

 何故、不正選挙を行うのか。その理由は僕にも分からない。僕にだって分からないことはある。

 不正選挙を行うのだ。おそらく政治家の皆様は、現状維持をしたいのであろう。僕なりに推測してみた。

 20時に開票される投票箱。20時に当確が決まるテレビ放送。何故、同時に発表されるのか。おかしいと思わないのか。

 大雨によって投票箱が運べなかった地域があると、新聞にはちらりと書かれている。事実がちらりと載っている。

 テレビを見て、おかしいと思っている住人は、この世界にどれだけいるのだろうか。

 そんな卑劣な手段を使うはずがないと思ったら大間違い。見えている。見せられているにも関わらず気づけない、気づかないというおかしさ。

 そう事実は見せられているというのに解析できない住人の脳内。一体この者たちを目覚めさせるには、どうすればよいのか。

 この世界の闇は深いのだ。知らない者は知らないだろうが、その悪行の数々は目に余るものがある。そう気象操作だけではない。

 事実を知った時の住人は一体どんな風に反応するのだろうか。気象操作だって、人工地震だって、なんだって行うのが闇世界での一般常識。

 もうすでに、事実を知る者には一般常識なのだ。それが事実を知る者たちである。

 その事実を知った時、知らざる者はどうなるのだろうか。僕は事実を知らざる者たちが事実を目の当たりにした時、心穏やかに目覚めてほしいと思ってしまう。願ってしまう。

 そんな事は不可能かもしれない。不可能かもしれないが、それでも僕は。それでも僕は、心穏やかに目覚めてほしいと願ってやまない。

 人工地震は戦時中からあった。そう戦時中からあったのだ。そんな昔からあったのだが、いつしか事実は隠されるようになった。

 戦時中は人工地震を行うという予告のビラを空からまいていたという。本当かどうか定かではないが、そんな噂も聞いたことがある。

 地震に見せかけ軍事工場を潰していた。

 それが現実というものだ。闇の世界は恐ろしい。

 本当に恐ろしいのだ。ありとあらゆる手段をなんでも使い手段を選ばない。本当の闇の世界は極道どころの話ではない。

 誰も逆らうわけにはいかない。この大雪の裏にはきっと何かある。何かあるに違いない。今の僕には分からない。その目的が。なんのために降らせているのか。


 だが、しかし。僕は、この雪を逆転の発想で面白味を持たせる決心をした。不謹慎かもしれないが僕なりに面白く。この粘着性のある雪を逆手にとり、立派に芸術的センスを爆発させてみせようと。


 これはいける。


 僕はそう確信した。こんな時に、こんな事を考えているなんて不謹慎者だ。不謹慎者だと自分でも思う。きっと世間の皆様も思っているはずだ。不謹慎者だと。

 だが、しかし。だが、しかしだ。僕の好奇心がうずいてしまう。うずいて、うずいて仕方がない。芸術を爆発させたい、この気持ち。抑えられない、この感情。

 世間から見れば不謹慎だ。


 だったら、この雪を止ませてからが本当の勝負だ。ここは人肌脱いでやるぜ。やってやれないことはない。やませてみせよう、この雪を。


 これぞ僕の腕の見せどころ。

 ここぞ僕の腕の見せどころ。


 人工雪なんて迷惑行為だが、早く雪よ止んでくれと願いつつ、僕は空を仰いだ。青空よ広がれと僕は心の中でイメージし、宇宙へとメッセージを届ける。さぁ、ここから僕vs人工雪勝負だ。人工雪を止ませるべく、人工雪消滅作戦を行うことにした。

 人工雪消滅作戦とは、そう瞑想だ。瞑想だけで雪がやむわけがないと、お思いの方々もいらっしゃると思われるが。瞑想パワーをバカにしてはいけない。やるのと、やらないのでは雲泥の差だ。と、僕は思う。


 さぁ、真剣勝負の始まりだ。人工雪消滅瞑想。やってやろうではないか。


 一体いつから僕も電波少年になったのやら。彼女からの影響が半端ない。彼女からの影響が半端ないが、これで空が晴れるなら、それはそれでいいじゃないのと自分で自分を納得させる。


 さぁ、人工雪消滅瞑想の開始だ。


 さっそく瞑想を始めるべく、僕は家の中へ。一旦、自分の部屋へと戻った。

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