神殺しのミストルティン

秋ノ風紅葉

1.悪魔が教区で市を開いている

二十歳までで人生の半分終わっている

「...おい、聞いてた話と違うぞ?」


「まぁ、そう怒らないでくれたまえよ。言っただろう?どこまで信憑性がある話か分からないと。というかその程度の数、君たちなら問題ではないだろう?」


「...クソが」


無線機越しの飄々とした声に苛立ち雑に暴言を吐く。こいつは元々こういう奴だと分かってはいるがそれでもムカつくものはムカつくのである。


「...はぁ、アンタもいい加減学びなさいよ。そいつに何言ったって無駄だってわかっているでしょ?」


呆れた...なんて言いたげに無線の向こうからため息と雑なお説教が飛んでくる。


「そうだそうだ!いい加減学べ―」


「...で、ロータス敵の数は?」


めんどくさい外野は無視して私は仕事に戻る。


「...さぁ?ざっくり数えて十三...ってとこじゃない?」


「じゃ、だいたい十八くらいか」


「はぁ?なんで増えるのよ」


「だってお前が数数えて合ってたためしがない」


「...たまたまよ」


「毎回そうなんだが?」


「...行くわよ」


「逃げやがったな」


そう言って無線を切った瞬間、壁の向こうから派手な爆発音と有象無象の慌てふためいた声が聞こえてきた。その声を聴いたと同時に私も扉をゆっくり開け一切の音を出さずに部屋に入る。


「俺たちのアジトに襲撃とはいい度胸じゃなえか!」


部屋に入るといかにもガラの悪そうな男たちが向かいの扉に向かって銃を乱射している。煙でよく見えないが間違いなく銃口に曝されている人物は先ほどまで無線のやり取りをしていた人物...ロータスで間違いないだろう。ということは...


「どう数えても十七じゃねぇか!」


そう叫びながら私は両手に持ったスーパーブラックホークリボルバー銃で.44マグナム弾を乱射する。すると...


「はぁ!?ちょっと数え間違えただけでしょ...てかアンタまたその銃使ってんの?いい加減命中率低いんだからやめなさいよ!」


白煙の中からこの場に似つかわしくない罵声が飛んでくる。...確かに十二発撃って五発しか当たってないことは認めるしかない。...いや、実践でこれなら結構当ててると思うのだが...まぁ、クレームがきてしまったのなら仕方がない。いつものやり方に戻すとしよう。


「後ろだ!」


今までロータスを狙っていた奴らが私の存在に気づきこちらに銃口を向ける!だが、しかし...


「いないぞ!」


そう、私はもうそこにはいない。何故なら...


「お前の後ろにいるからな...」


私はそう呟いて目の前の獲物の首をへし折る。


「なっ!」


その光景に驚いた隣の奴は慌てて銃を構えるが...残念、一手遅い。そいつは銃を撃つことなく地面に倒れ伏す。理由は簡単、既にその首に刺さったスローイングナイフは彼の命をいとも容易く絶っていた。


「相変わらず極悪非道な殺し方ね...」


「殺してる時点で極悪非道だろ」


「...確かにそうね」


そんな軽口を叩きあいながら徹底的に目の前の敵を殲滅していく。ある者は燃やされ、ある者は首を圧し折られ、ある者は急所を一突き。そんな残虐な光景が繰り返され数分も経たないうちに賑やかだったマフィアのアジトは血に塗れた殺人現場と化していた。


「終わったぞ」


「流石、ロータスくんとガランサスくんだね。仕事が早くて助かるよ。後はこっちで処理をしておくから戻ってくれて構わないよ」


「了解」


淡々と無線のやり取りを行い今日の仕事が終了する。後は戻って報告書を書くだけなのだが...気づけばロータスがいなくなっている。


「...あいつまた報告書書きたくなくて逃げやがった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る