確かに私が悪いけど
日間田葉(ひまだ よう)
第1話 給食の話
これは私が小学校4年生の時のお話です。
それは新学期が始まり暖かくなった頃でした。
当時、私が通っていた小学校の給食にはタンパク質を増やすためでしょうかゆで卵がかなりの頻度でついてきました。実はこのゆで卵が大変なクセモノなのです。
主食がコッペパンで副菜に少量のお肉類(ほとんど鶏肉)と具沢山の汁物あるいはサラダなどがありそれにプラスゆで卵です。もちろん瓶牛乳もあります。
このゆで卵、いったいどのタイミングで食べたらいいのでしょう。皮を剥く作業もあります。私は毎回最後まで残してしまい、仕方なく味のないゆで卵だけをぼそぼそと食べていました。
その頃は給食暗黒時代でして、食べ残すことを許されず苦手なものでもあれば一人だけ教室に取り残されます。食べられないとお昼休みに遊びに出られません。
その日も例のごとくゆで卵が残りました。しかも牛乳つきで。私はパックの牛乳は飲めるのですが瓶牛乳が苦手です。
苦手なものを同時に食べるのは無理だと判断した私は目立つ牛乳をとにかく飲んでしまえとグイグイやった後、残ったゆで卵を空の花瓶にこそっと捨てました。いえ、ちょっと隠しただけのつもりです。
その大きな花瓶は窓際に飾られていたもので花を生ける事はありません。私は誰もいない帰りに隠したゆで卵を持って帰ったらいいと思っていたのです。
が、すっかり忘れていました。
それから1か月が経ちました。
その日は暑かったので授業中に窓を開け放ちました。
すると窓際から色んな声があがります。
「くっさ、誰か屁ぇこいたでー」
「うわ、ほんま、くっさ」
「誰やー」
みんなはザワザワとし始めてその臭いの源を探そうと窓際に集まりました。
そして「この中になんか入っとる~」と一人の男子が言いました。
私ははっと思い出して、もしかせんでもあのゆで卵ちゃうん? と体に稲妻が走りました。
私は人波を押しのけて花瓶をのぞきました。
すると花瓶の中にはゆで卵が5~6個入っています。
あれっ、卵が増えとる。なんで?
私が驚いて固まっているのをよそに、クラスのやんちゃな男子が長い竹の定規を持ってきて何をするかと思えば花瓶の中をグサグサとつき始めるではありませんか。
まだ形状を保っていた腐った卵はたちまちぐちゃぐちゃになり、これまでにない異臭を放ち始めます。
物凄く臭い、あれからうん十年たちますがあれより臭いものを嗅いだことがありません。
教室は阿鼻叫喚です。
私も今にも吐きそうになって口を押えて……、リバースしてしまいました。
「きったなー」
「うわー」
自業自得です。いや待て、私は一個しか捨ててないで。
そのあと私は花瓶を洗う羽目になりました。学級員をやっている優しい女子が手伝ってくれました。
ゆで卵 花瓶に入れては いけません
自省の句
確かに私が悪いけど 日間田葉(ひまだ よう) @himadayo
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