第1話「5歳児の初冒険」

 西暦2034年4月1日。


《サーガ・オン》


《――あなたは死にました》

 

(ふぁ!?)

 

《前世の記憶はありません――しかし、輪廻転生して。赤ん坊の頃からやり直す事ができます。チュートリアルをスキップしますか?》


(あぁ、何だ。これはゲームの中だったな……。そういえば『アークギア・サーガ』を初めて始めたばかりだった、一応説明書で世界観は概ね理解している、何でも輪廻転生がある世界観らしい……そういうの、流行ってるよな。やったこと無いけど、……たぶん)


《チュートリアルをスキップしますか? イエス/ノウ》


「あぁ~、そういやVRゲームは何度かやってるが。転生モノのゲームは始めてだな~……しゃーない。やるか!」


 そう言って、信条戦空しんじょうせんくうはチュートリアルボタンのイエスを押した。

 

《アークギア・サーガの世界へようこそ――!》


 サーガ歴1年4月1日

 

「オギャー! オギャー! オギャー! ケホケホ!」

(あれ? 俺、もしかして赤ん坊じゃね……?)


 チュートリアルを始めます。

 始めに前置き。

 

 ◇

 

 仮想世界『アークギア・サーガ』の特徴2つ。

・1つ目が〈サーガシステム〉。

 現実世界の1時間がアークギア・サーガでは1週間で計算。

 現実世界の1分間でアークギア・サーガでは10分間で計算。

 アークギア・サーガでは常に【168倍速】で時間が進む。

 アークギア・サーガは現実世界と同じで、1日を24時間の365日で1年間として計算されている。

 そしてこれはオンラインゲーム故にリアルタイムで進む。

・2つ目が〈転生システム〉。

 このアークギア・サーガはプレイヤー自身が完全死亡した場合、アカウントは新生児・つまり赤ん坊からやり直しという【デスペナルティ】が与えられる。

 そして村では、10年間、キャラクターが10歳になるまで街の外に出ることを禁じられているので。

 実質、一度死んだら現実世界で【22日間】、アークギア・サーガの村の外の世界に冒険に出れません。が、10歳になるまで村の中を冒険することは出来ます。


 ◇

 

(なるほど、赤ん坊……目は見え、無いな……息吸って吐くだけだ……何も出来ない、言葉も使えてない、てか何語だ? 日本語で良いのか? この仮想世界の異世界はなんて名前? 両親の名前は? 何も解らない、何も出来ない、ちょっと腹減ってきた……、転生って……こんな感じなの……?)


 だめだ、何も解らない……、寝よ――。

 

《時間をスキップします》

 ――5年後。

 サーガ歴5年4月1日。

 プレイヤー、センクウ5歳。


(さ、流石に目は開けられた)

 服を着替えたり、トイレに行ったり、食事を一人で食べたり、親のサポート無しで生活できるようになってきた。

 

「なぁ~~~~」

 

(あ、ステータスが開けた……、え、今何時ですか?)


《解答、現在。西暦2034年4月1日13時00分、サーガ歴5年4月1日……。プレイ時間1時間です》


(まじか!? あの一瞬寝ただけで現実1時間と仮想5年経ったのか!? え、てゆーか、ログアウトした場合どうなるの? 時間経過は?)


《落ち着いて下さい、今回は特別にチュートリアルなので、5歳までスキップしただけです》


(そうか、5歳児ってことはク○ヨンしんちゃんレベルか……)


《ですが、現実世界と『アークギア・オンライン』の時間経過は等しく平等に進行します》


(え? じゃあ現実世界は昼だけど、もし現実8時間寝たらどうなっちゃうの? サーガ歴の成長スピードは止められない?)


《はい、これはルールです。全プレイヤーは等しく平等に【168倍の時間経過】で進みます……》


《ちなみに、現実世界で8時間睡眠をした場合、サーガ歴は2ヶ月経過します。》


(……マジっすか……)

 寝て起きたら2ヶ月自動経過していて、学校へ行って帰ってきて、更に2ヶ月。合計で4ヶ月経過してしまうことになる、これは痛い……。


《上手く時間経過をコントロールするのもこのゲームの醍醐味です》


「だいごみー」


 ろれつが回らない、これでもちょっとキツイな……とセンクウは思う。

(とりあえず、……あと3時間だけ遊んでみようと思った。現実世界の3時間だから……仮想世界、サーガ歴で3週間か……長いな……ま、良い。やってみよう)


 これより、5歳児の冒険が幕を開ける。

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