金魚譚

さとうきいろ

十首連歌 金魚譚

にんげんが金魚に姿を変えられて泳がされているアートアクアリウム


美しく残酷に生きたにんげんを前世に持つのか尾びれ靡かせ


琉金と目を合わせれば湧き上がる知らない誰かの盛夏の記憶


光越し 屈折で見るランチュウと睨めっこする幼いあなた


まんまるの金魚鉢まるで地球みたい世界の広さはこれくらいがいい


「きれいね」と声をかければ「きれいね」と水槽越しにあなたが返す


暗闇に浮かぶ水槽 恋人の繋いでいた手が尾びれに変わる


夏祭り、金魚のランタン、雑踏で落としてしまったピンクのヨーヨー


お土産の赤いゼリーを発泡の日本酒に漬けてつるりと飲んだ


養殖のあなたをプールに放ったらほんとのあなたもすくえる気がして

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金魚譚 さとうきいろ @kiiro_iro_m

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ