涼風雫

第1話

 私は木の下に立っている。そこへ一人歩いてきた。


「大きな傘ですね」


 その人と視線が合う。それから、私は見上げる。


「そうですね」


 その人は手の平を上に向けていた。


「でも、この傘破けているみたいですね」


 よく見るとその手の平には水溜まりが出来ている。それがあふれ、雫となりこぼれる落ちる。思いがけないことに、私は口元が緩む。


「そのようですね」


「長年にわたり、大勢の人が利用してきたのでしょう」


「そうでしょうね」


 しばらくすると私たちの時間は終わりを迎えた。私は日常へと戻っていく。

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涼風雫 @suzukazeseifu

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