第121話 サメ映画とクズ共
「いや、意味が分かんないね。ピザは炭水化物じゃん、ポテトも炭水化物じゃん。なんで炭水化物に炭水化物を乗せてんの?日本人、どんだけ炭水化物好きなんだい?」
「いやぁ、シカゴピザとかいうデブの塊みたいなもんを食ってるアメ公に言われたかねぇよ」
「あれはシカゴのデブが悪いよ。僕はテキサス民なんで」
「む、ポテトのピザも、美味いな……」
「ドイツ人は芋しか食えないんでしょ、舌が麻痺してるんだ」
「そんなことはないが……」
「カレーのピザ?フランス人に殺されそうね」
「正直俺もカレーのピザはイカれてると思う」
「まあ、アメリカ人のように、ピザにパイナップルを乗せるような真似をしないだけマシね。カレーのピザも食えない味じゃないわ」
「そもそもシーマは味なんて分かるのかい?酒で味蕾が死んでるでしょ」
「殺されたいのかしら、アーニー」
「おー怖、事実は人を傷つけるね」
「実際お前ら全員味なんて分かってないだろ。昼食に生にんじんをそのまま齧るような連中に煽られたくない」
「まあそれはそう。でも、食事なんてあるもの食べれば良いじゃん?毎食違うもの食べるのって疲れない?」
「いや、逆に俺は聞きたいんだけど、毎食同じもの食って飽きない?」
「む……、飽きないな。子供の頃から、それが当然だった」
「そんなんだからすぐ禿げるんだよドイツ人は」
「関係ないだろう、禿げる奴は何をやっても禿げる」
「ヴォルフさんの熱いマジレスぅ〜!まあ、僕もそう思うけどね。不健康になる奴はなるべくしてなるんだよ。事実僕は、こんなに好き勝手しているのに、嫌になるくらい健康だ」
「いやぁ、それは人間やめた恩恵だから。お前明らかに塩分取り過ぎだもん、人間だったら高血圧で今頃心臓爆発してたよ」
「それを言ったらシーマなんてどうなるんだい?」
「私は死なないわ、アルコールは身体の悪い部分を浄化してくれるのよ」
「じゃあ悪い奴のお前は存在ごと消えるんじゃねえの?」
「殺すわ」
「アアーッ!!!」
チームクズでピザ食いながらクソ映画を観て駄弁っている。
「しっかし、日本人はこんな映画のどこを面白がるんだい?」
「テメェの国が作った映画だろがい!」
「サメ映画なんてクソみたいなコンテンツにハマる暇人は八割日本人なんだよ!」
「うーん参ったな、暇人筆頭の俺にそれを言われると何も言い返せねぇ」
「安心して良いよ、ここにいる僕達全員、暇人筆頭だから」
「む、暇ではないのだが……」
「ああ、そういやそうだね。ヴォルフだけ、今でも馬鹿みたいに労働してるよね」
「労働は大事だぞ」
「いやぁ、しないに越したことはないと思うけどねぇ」
あーピザうめー。
映画はドン引きするほどにつまらないが、ピザは美味い。
「おっ、金髪美女が出てきたよ」
「こんなんすぐ死ぬぞ」
「あ、死んだ」
「製作費が少ないから、出演料削る為に美女はすぐ死ぬんだと」
「クソだねぇ……」
「というより、大して美人でもないわね。私の方が美しいわ」
「自己評価が高過ぎねぇか?」
「そうかしら?私は美しいでしょう?」
「外面の美人さを無にするくらい性格が捻じ曲がってるからなあ」
「それはまあ、認めるわ。けど、私の方が美しい」
「こいつ、意外とナルシストだよな」
「まあ、チームクズの唯一の弱点は『人間性』くらいのもんだしね!」
ああ、サメが!
サメが陸を!
「へえ、サメって陸を泳ぐんだ、初めて知ったなあ」
「む……、このCGで泳いでいると主張するのは……、難しくはないだろうか?」
「言ったもん勝ちみたいなとこあるからなあ。登場人物がシリアスな面で『陸を泳いでいる!』とか言えばつまりそういうことになるんだよ」
「ならないんだよなあ」
「なっとるやろがい!」
そう言いながらも、ドン引きするほどつまらない映画を見る俺達……。
「このレベルでよく映画にしようと思ったわね。監督の恥じゃないかしら?」
「いやぁ、ここまで突き抜ければ逆に楽しいんじゃねえの?」
「低予算が悪いよ、低予算がー」
「そんなん言ったらロッキーも低予算映画だぞ」
「じゃあロッキーくらい面白い映画を見せてくれるぅー?」
「ロッキーはもう五回くらい観たしなあ……」
「あー……。名作は何度も観ちゃうよね、分かるよ。これみたいなクソ映画は一生に一度しか見ないもん」
「……ナポレオンダイナマイトも低予算映画だったな」
「いっやあ、アレは陰キャ過ぎて共感できなかったよ僕は」
「えぇ?お前陰キャじゃん」
「いやいや、僕は陽キャのパリピだよ。陰キャなのはヴォルフでしょ」
「この図体で陰キャは無理でしょ」
「む……、子供の頃は……、周りの学友には怖がられていた」
「だろうね」「せやろなあ」
「だが、大学では、お前達のような良い友人……?が出来たから、助かった」
「良い友人ってところでちょっと言い淀むのやめてくんない????」
「そこは断言しろやカス」
「良い……、友人……?友人……?」
「おいヤバいぞアーニー、ヴォルフの中で俺達は友人ですらなくなろうとしている!記憶が抹消されかかっている!」
「ほらぁ〜、君がクズ発言するからぁ〜」
「お前もな」
サイドメニューを食う。
「あー、やっぱりハニーマスタードなんだよなあ」
「チキンウィングにランチドレッシングつけてもウメェぞ」
「あ、分かるそれ。辛いチキンウィングに甘酸っぱいランチドレッシングは最高に合うんだよねえ」
「大味ね。大学で嫌になるほど食べたアメリカ料理の味だわ」
「ロシア料理は貧乏臭くてみみっちいじゃん」
「殺すわよアーニー。せめて、素朴と言いなさい、素朴と」
「まあでも、まだ春先でちょっと寒いし、煮込みであったまりたくはあるね」
「む……、そうか?もう、暑いくらいではないか?」
「ヴォルフ……、君みたいな末端神経が筋肉で押し潰されて寒さを感じない筋肉ダルマは分からないかもしれないけどね、僕みたいな正常な人間はまだ肌寒いんだよ」
「でも、天気予報ではそろそろ暑くなるってよ」
「はぁ?天気予報?人工衛星なんてまともに動いてないのに?」
「ああ、日本は占い系のスキル持ちが多いからな」
「あー、神道系ジョブか……。ん?じゃあさあ、それもインターネットに載せるのはどう?」
「おっ、良いねぇ。既にインターネットは俺達の支配下にあるからな」
「インターネットと言えばさあ、全体の進捗どれくらいかな?」
「七割五分ってところだな。とりあえず、ポケットサイズの魔石を電力に変換する装置は完成して、スマートフォンも作って、実質的に魔石で動くスマホができて、それがインターネットに接続できるってのは前も話したよな?」
「うん、したねえ」
「で、今はヴォルフが……」
「うむ、各国の財務関係者と打ち合わせの末に、来月から試験的に電子マネーの導入を許可されたぞ」
「って訳らしい。今の世の中は、キャッシュカードはもう使えないからな。いっそのこと、電子マネーに切り替えてもらおうか?って話にしてたんだよ」
「それで、ウチが作っている携帯端末を世界のデファクトスタンダードにしようってこと?」
「それもあるがね、ネットサービスなどもそろそろ始めたい。通販サイトとかな」
「良いねぇ!物流も僕らが握ってるんだから、手間はそう多くない」
「更に運搬用のワイバーンが増えて、運転手と、事務員とで雇用も増える。社会貢献だぁ、国にも止められる謂れはないよなあ?」
「そうだそうだー!」
「「ぎゃはははは!!!!」」
「……稼ぐのは良いが、恨みは買わないようにな?」
「ふん、ヴォルフ、馬鹿ねあんたは。稼いでいる奴は、何をやっても恨まれるのよ。なら、こいつらのように、気にせず笑い飛ばした方が良いわ。あんたもそうしなさい、その方が精神衛生上良いわよ」
「う、うむ……」
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