第106話 一般通過冒険者のお話 その四
俺の名前は伊藤和雄!
レベル二十五の冒険者だ!
司祭の水樹、魔法使いの恵、騎士の暗子とパーティを組んで、仕事に励んでいるぜ!
それより聞いてくれよ!
最近、天海街……、いや、天海王国にある学院の食堂に行ったんだよ!
俺はやっぱり、中卒ニートなのが割とコンプレックスでさー。
何かこう、キラキラでリア充な学生生活に憧れるんだよなー。
だから、パーティメンバーの恵が、学院に魔法の講義を受けに行った時にさ、俺もついて行ってみたんだ。
あ、恵は学院生じゃないぜ。一時金を払って、学院の魔導師に教えてもらってるんだってさ。なんかそういうシステムがあるらしいぜ。
そんでな、最近は、チーム廃棄物がコストトの建物を占拠して開業した『トラッシュ』ってスーパーができたの、知ってるか?
このトラッシュのお陰で、食品が手に入りやすくなったんだってさ。
なんでも、今までは、農家やら何やらに、店側が直接人夫を出して買い付けしてたんだとさ。
人夫さんはあっちこっちに行ったり来たり。そりゃ確かに大変だよなあ。
でも今は、農家さんからトラッシュが直接食品を買い取って、それをトラッシュに並べておく訳だから、買い出しは楽々ってことらしい。
だから、学院の学食も、外部の人が来ても大丈夫なくらい安定してるんだってよ。
ほんの数ヶ月前までは、学院の生徒すらまともに食べられないくらい、食料の調達が上手くいかなかったらしいが、今は、トラッシュの力でどうにかなったらしいぜ。
あー、あと、因みにだ。
スーパー『トラッシュ』と運送会社『ガーベージ』は、両方ともチーム廃棄物の支配下だ。
だから、業務提携と称して、ガーベージが最近始めたケンタウロス馬車に、トラッシュの移動店舗をくっつけて移動販売なんかをやっているらしい。
要するに、チーム廃棄物は、この世界の人間のネットワーク、マスメディア、流通だけではなく、更に食までもを牛耳った訳だな。
まあ、うん。
いつものチーム廃棄物だ。
あいつらは本当になんなんだろうな……。
ま、まあ、うん。それは良いとして、だ。
要するに、食堂が開かれたんだよ。
だから、俺もそこに行って学生気分を味わおうかなー?なーんてな!
じゃあ、早速食っていくか!
まず、食券を買うかな。
えーと……、うわ、なんだこれ?
黒地に白文字の「肉食メニュー」と、白地に黒文字の「草食メニュー」か。
人間用のメニューは黄色地に赤の「雑食メニュー」だそうだ。
あー?
えっと、そうか。
亜人は食えないものが多いからな。
種類によって、肉食、草食……、メカノイドに至ってはオイルしか飲まない、なんてのもあるらしいぜ。
俺は迷わず、人間用のメニューだな!
にしても、人間用のメニューだけでも、十種類くらいあるな。
普通、今の世界では、食材を手に入れるのが大変だから、どんな店でもメニューは基本は一つだけだ。
例えばすぎの屋では、牛丼のみ。まあ、それと、トッピングにチーズとネギと卵くらいか?
ラーメン屋では、醤油ラーメンのみ……、もしくは、チャーハンと餃子くらい?
居酒屋も、多彩な料理は作れないから、焼き鳥屋とか漬物屋とかになって、単一の物のみを売るようになった。
この辺で一番うまいものとなると、温泉旅館しろがね屋の料理だな。とは言え、しろがね屋も、メニューはほぼ選べなくて、季節のお任せ料理一択なんだが。
え?喫茶店ディメンション?
いや……、あそこは例外だろ。あれは俺は行ったことないけど、一流冒険者のサロンだしまあ、凄いんじゃねーの?知らんけど。
とにかく、今の世の中じゃ、一つの店でそんなに多彩なもんは食えねーってこった。
この天海王国では、天海ポータルゲートのおかげで、世界中の食いもんが集まるから、それなりには食えるけど……、やっぱり、基本的には、食いもんのメニューは選べない。
そんな中で、この学院の学食では、人間用のメニューが十、肉食が四、草食が四、その他が六と、多彩なメニューが選べる。
これはすげーってことだ。
さあ、メニューを見ていこう。
まず、その他。
ガソリン:1000円
魔石:1000円
血液:1000円
サソリシチュー:500円
蜂の子ご飯:500円
蜂蜜:500円
ガソリンは機人種が、魔石と血液は色んな種族が食べる。蜂蜜は虫人、虫料理は爬虫人が好むそうだ。
肉食メニュー。
日替わり:500円
ユッケ:500円
タルタルステーキ:500円
牛骨スープ:500円
草食メニュー。
日替わり:500円
野菜粥:500円
大麦パン:500円
豆腐ステーキ:500円
そして、人間用のメニュー。
日替わり:500円
カレーライス:500円
鶏肉の唐揚げ定食:500円
月見うどん:500円
醤油ラーメン:500円
豚の生姜焼き定食:500円
サバの味噌煮定食:500円
煮込みハンバーグ定食:500円
牛丼:500円
カツ丼:500円
どれもうまそうだ。
プラス300円で冒険者サイズにしてもらえるらしいから、それを頼もう。
メニューは、サバの味噌煮かな?
サバの味噌煮を注文。
「はい、サバ冒険者盛りお待ちー!」
「はーい」
早いなー。
一、二分で出てきたぞ。
席について、いただきます、と。
まず、サバの味噌煮。大きめのが三つ。
味は甘めかな?
それとご飯!
ご飯はどんぶりに山盛り!量は二合くらいだそうだ。
味噌汁もデカめ。流石冒険者盛り!
それにミニサラダとお新香も添えてバランスもいい。
因みに、頼めば海苔とか生卵とかも貰えるらしい。
味は……、まあ、突き抜けて激ウマ!とかではないんだが、毎日食べても飽きないようなご家庭の味っぽい感じだな。
500円+300円でこのクオリティと量なら、毎日通っても良いくらいだ。
ん?壁に掲示が……。
メニュー追加について?
どうやら、メニューは今後も増やすらしい。また来た時が楽しみだな!
……あと、「バッタの佃煮は購買部へ」って何?買う奴いるの?……いや、いるのか。リザードマンとか。
さて、ごちそうさま、と。
「おーい、恵ー。授業終わったかー?」
「和雄ーって、先にご飯食べちゃったんですか?!待っててくれるとかそういう優しさないんですかね?!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます