第77話 更なる人口増加

新世界インターネット計画はまだ始まったばかりでどうなるかはわからん。


とりあえず、俺達、チームクズの掲げる目標は二つ。


まず、新世界インターネット計画などでデータを集めて、この崩壊後の新世界の謎を解き明かすこと。


そして、永遠の命を持つものとして、永遠に遊んで暮らせるようなビジネスをすること。


この二つの目標をゆるく追求することが当面のやることだ。


そう言えば、アーニーのアカシックレコード的なものを検索する権能だが、話を聞けば「鑑定」やそれ系統のスキルと出てくる情報は同じらしい。


何が凄いのか?と言えば、「鑑定」のスキルより詳しく知ることができるし、目の前に現物がなくとも、インターネット検索のようにキーワードなどで事物を検索できることが凄いということのようだ。


つまり、理論上はアーニーをwikiに情報を書き込む装置にすれば色々と解決なのだが……、残念ながら、仕方のできる存在にそんな程度のマックジョブをやらせている暇はないので……。


それはさておき。


なんか知らんが、天海街の人口が倍増している。


……なんか知らんがってのは流石に厳しい嘘か?


まあ、やっぱり、世界最大級冒険者用品店『屑籠屋』と、外国に繋がる『天海ポータル』、そして何より、『冒険者の聖地』天海街って謳い文句がヤベーんだな、これが。


貿易の要所ってだけで馬鹿みたいに儲かるのに、冒険者向けの安宿、飲食店、そして道具屋の屑籠屋に温泉まである。


貿易の要所だから、色んな国の食い物が集まって飯が美味いし、娯楽もある。


そして、天海街周辺の関東圏はダンジョンまみれだ。


まあ、そりゃ、人も集まるわな。




しかし……、どうするんだこれは。


既に天海街のキャパをオーバーしてるぞ。


人が多過ぎる。


天海街の城塞は、天海ポータルといくつかの宿を囲うようにできていて、全長は3km程。


だがもう、街は城壁の外まで広がり続け……。


今、天海街の治安は悪化していた。


困るんだよなー、治安悪い街に住みたくないじゃん。


街の運営をしている、天海街運営委員会に苦情を伝える。


すると、おっさん達が土下座してくるが、中年の髪の薄い頭頂部を眺める趣味はないのでスルー。とにかく早く解決しろと、解決策はあるのかと問い詰めてきた。


で、今は、更に宿を増やすって方向になってるっぽいな。


老人ホームを大型宿にしてるらしい。


マンションも全室オープンして、民家も解放しているようだ。


まあ、幸い、天海街に来ているのは、殆どが冒険者だ。


日本の冒険者は信用商売なところがあって、冒険者の人間性は割と大丈夫っぽいけど。


んー、でもさ、人口比的に、冒険者ばかりが増えても困るんだよなあ。


農民とかその他諸々の技師とかが欲しいな。


とりあえず、食うものがなけりゃ生きていけないから、農民は最優先で集めなきゃなー、とか言ってたら、天海街運営委員会が、第二次遠征を始めた。


千葉県と隣の茨城県、いや、関東一帯から移民を募り、人を集める。


人々は、噂の天海街に住めるってことで、恐ろしい程の人数が集まった。


その数、およそ百万人。


圧倒的な人数だ。


今回は天海街の冒険者も総出で、二ヶ月かけて何回かに分けて遠征していたからな、恐ろしい程の人数が集まったものだ。


これで、天海街から周囲百五十キロメートル圏内のコミュニティは全て吸収合併したことになる。


これにより、天海街のある銚子市全域と、利根川を挟んだお隣の茨城県を吸収合併して、天海街は巨大化した。


因みに、この二ヶ月は、俺達はネットワークに『図鑑』をある程度作って、『掲示板』を作った。それと検索エンジンも。


そして、五月を迎えた……。




巨大化した天海街……。


規模が膨れ上がり、百万人ほどの人口が溢れている。


そして、天海街管理委員会はパンクした。


こりゃヤバイね、ってことで、天海街管理委員会のメンバーを増やすことに。


管理委員会のメンバーは、最初に、旅館しろがね屋の店長である、揚羽の親父と、警察署の署長と、大学の学長の三人だった。


これに追加して、地元農協の組合長、漁業組合の組合長、総合病院の院長の三人を、天海街管理委員会幹部に勧誘したらしい。


そして、元役所の職員を集めて、管理委員会で働かせているとのこと。


ここで活きてくるのは、シーマが開発した『魔石発電カートリッジ』だ。


ゴブリンの魔石一つで、デスクトップPC一台を一日稼働させるくらいのエネルギーが得られるシステム。


初級クラスの錬金術なら誰でも作れる程度の複雑さ、ゴブリンの魔石一つでパソコンが一日動かせる高効率。


もっと上等な魔石なら一週間くらいは平気で動くレベルのエネルギー効率の良さは、恐ろしい程に今の崩壊した世界では有効だ。


開発者であるシーマが言うには、魔石発電カートリッジは、工業的な手法でも作れる可能性が高いらしい。そしたらそれも独占事業にするか。まあ、いずれやろう。


とにかく、電力が確保され、PCが稼働し、天海街管理委員会が街の役所的な機能をしっかりと持つようになった訳だ。


建物は役所だか公民館だかを再利用しているらしい。


戸籍も管理され、予算配分も管理委員会で決定されて、いよいよもって国になってきたな。


巷の噂じゃ、天海街管理委員会のことを『元老院』などと呼んでいる人もいるらしい。


ローマかな?


因みに日本にも明治ごろは元老院いたぞ。


ってか、上院=元老院と訳されるとすれば、今も色々な国にあるぞ。


そんなローマ帝国的なノリで運営される天海街……。


これからどうなるのか楽しみだ。


なにせ、俺は傍観者だからな。責任を取らなくて良い。


皇帝ネロみたいなのがポップしたら、まあ流石に止めなきゃダメかね。俺の商売に差し障りが出るだろうし。


だが、基本的には商人だ。


圧倒的な資本の力。


かつてのヴェネチアの高利貸し、徳川家康の御用商人三井や住友。あるいはメディチ家、フッガー家。


権力者になることじゃない。権力者に言うことを聞かせられる資本と力!これが重要だな。それに……。


こういうのは外側から眺めてるのが一番気楽で楽しい。

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